表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

アカシアの記1:炎のジャック

遠い昔、ジャックという少年が赤ん坊の弟を連れ、旅をしていた。

そこは吹雪の雪山で、子供が旅をするには厳しい環境であった。

少年と赤ん坊が旅を始めて三日が立っていた。食料も明日には無くなってしまう。

赤ん坊が泣きだした。


「ごめんよ。寒いだろう。」


少年と赤ん坊は三日前までサルベジンという国で生活していた。両親とともに。

しかしその国はその日、炎の勢力といわれる者たちによって攻撃を受けてしまった。

国で住むことが困難になったと考えた両親は少年と赤ん坊を国から逃がしたのであった。

やがて両親は国の者たちとともに惨殺されてしまった。

残酷なことに、少年と赤ん坊はそのことを知らずただひたすら遠いどこかへと旅をしているのであった。

いつか両親が来ることを信じて。


四日目が来た朝。雪山の洞窟で少年は火をおこそうとしていた。


「今兄ちゃんがあったかいミルク作ってやるからな」


(今日で食料が尽きる。もうどこかに着かないとまずいな…)


ジャックは不安を感じながら火おこしをしていた。

するとその時、洞窟の入り口から突如風が吹いてきた。


「ん?」


ジャックが振り向くとそこに厚着のフードコートを被った得体の知れない者が立っていた。

ジャックはすぐに赤ん坊を抱きかかえた。


「何者だ!」


ジャックは警戒しながら叫ぶ。


「ふむ、その子は捨て子か?それとも人攫いか?」


得体の知れない者は質問をした。


「お前に答える必要はない!去れ!」

「まぁ待て。私は怪しい者ではない。私の名前はルミナス。この世界を救う者だ。」


ジャックは呆れた顔でルミナスと名乗る者を見ていた。


「信じられぬといった顔をしているな。ならば私の力を見せてやろう。」


そういうと謎の者は手に持った赤いスカーフを広げ、何か呪文のようなものを唱え始めた。

するとあたりが突然光りだし、目の前が真っ白になった。


(なんだこれは……)


「これで信じてもらえたか?」


気づくとルミナスはもうそこにはいなかった。代わりにルミナスがさっきまで着ていたフードコートがそこに落ちていた。

ジャックは恐る恐るフードコートを手に取る。

するとそのフードコートの中から食べ物やマッチ箱、ナイフ、魔石など旅の必需品といわれるようなものが色々入っていた。


(ルミナス……世界を救う者……か)


腹の減ってたジャックはすぐさま食べ物にかじりついた。


それから一週間の間、ルミナスはジャックと赤ん坊が安全な町に着くまでいつの日も姿を現しまた消え食べ物などを置いて行った。

そしてやっとその安全な町といえるところまでたどり着いた。


「ルミナスーー、お前のおかげで助かったぜーー。どこにいるかわかんねぇし聞こえてるかわかんねぇけど、ありがとよーー」


チュータインという町の門の前でジャックは空を見上げながらルミナスにお礼を言った。

チュータインの人々はジャックと赤ん坊の過酷な現状を聞き快く町に迎え入れた。

ジャックと赤ん坊はチュータインの真ん中にある時計台の屋根裏部屋に住むことになった。

時計台はトレンクというおじいさんが管理していた。

ジャックはトレンクの元で時計の修理屋として働くことにした。


そんな平和な日々を過ごしていたジャックと赤ん坊の前にある者が近づいていた。

ある日の晩、ジャックが日記を書いていると時計台の屋根にルミナスがいるのに気が付いた。


(あ!ルミナスだ。何だろう。もう食べ物はいいのに)


ジャックは屋根裏の窓を開けた。


「やあ、ルミナス」

「少年、調子はどうだ。」

「絶好調!弟も元気だし、食べ物にももう困ってないんだぜ!助かったよルミナス」

「そうか。それはよかった。」


ルミナスは少し緊迫した表情になった。


「まだなんかあるか?ルミナス」

「実はな、助けがいるんだ」

「え?何があったんだよ」

「話せば長くなるのだが…手短に話そう。君の弟を渡してくれ。」

「はぁ!?」


ジャックは驚いて叫んでしまった。


「何言ってんだよルミナス。絶対無理に決まってんだろ。」

「なぜだ。君にはあれだけ力を貸したというのに」

「そりゃあ助かったけど…弟をどうする気だよ…何企んでる」

「私はもうすぐこの世を去る。だからその前にハーン様に私の跡継ぎを渡さなければならないんだ。だから頼む。私には家族がいる。」

「だからって、なんで弟なんだよ!そこらへんの子供でもいいじゃねぇかよ」

「君の家系は特別だ。知っているんだ。魔法を使えるのだろう。魔法の強い子を選んでいる。それが弟だ。君も魔法が使えるはずだ。雪山で、火をおこすのになぜ魔法を使わなかった。一番の得意…」

「うるせぇ!魔法なんか知るか。大体なんで一週間も俺らを助けた。どういうつもりだ」

「無理には連れて行きたくなかった…今はもう手遅れかもしれんが」

「…」

「今日決めなくてはならないんだ。」

「…ふざけんな」

「すまない。ジャック…」


ルミナスが弟に近づく。

するとジャックが弟の前に飛び出した。


「俺を…連れていけ」

「ジャック」

「俺は兄貴だ。弟に劣ったとしても力にはなるはずだ。」

「すまないジャック…我々は魔血石の色を見て判断する。君が実力を見せてくれないかぎり私は納得できない。」

「わかったよ。何をすればいい。」

「私が納得することを確実に行うことだ。それができるか?」

「やれるさ。なんだって。」

「なら、チュータインを燃やせ。」

「!」

「滅ぼせ」


するとジャックはうつむきながら屋根裏の窓から飛び降りた。


「…ジャック」


次の瞬間、チュータインのあちらこちらから炎の爆発音がそこら中に響きあがった。

チュータインは炎に包まれ時計台が真っ逆さまに落ちていった。

チュータインが見下ろせる山でルミナスはジャックの弟を抱えていた。


「ハッハッハハァ、ジャック素晴らしい!お前にしよう。お前が次の跡継ぎだ!ハハハ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ