レストレイント
あの時から、3年が経過していた。
ヴァンはどこかもわからぬ城の牢屋に入れられていた。
食事はもらっていたが、出てくるのは得体のしれぬものの血肉の盛り付け。
ろくに食事をしなかったヴァンはやせ細り、髪は白髪交じりになっていた。まるで老人だった。
そんなある日、ヴァンは城の広間に来るよう呼び出された。
ジョニーが牢屋まで迎えに来て、ヴァンは手錠鎖をしながら広間へと導かれた。
(一体何なんだ……)
ヴァンはまぶしそうにしながら目を開く。
そこにはエンペラー・ルイ 魔王が玉座に座っていた。
「うがああ!!」
ヴァンは魔王を見た瞬間、奇声を上げながら魔王に飛びかかろうとした。
だがジョニーの鎖ですぐに捕まってしまった。
ヴァンは自然と悔し涙を地面にこぼした。
「……ごめんよ…トーマス…リリア」
ヴァンの様子を見た魔王は立ち上がり、ヴァンの元へと近づいてきた。魔王は自らの剣を地面に投げ捨て歩いてくる。
すると魔王がこちらへ歩くたびに魔王の装備が次々と溶けるように消えていった。
そして魔王の顔の装備も消え、中の正体があらわとなった。
ヴァンはその正体を見てただただ茫然とするしかなかった。
その姿は紛れもなくウィザードその人だった。
トーマスの師匠にして最強の宮廷魔術師のあのウィザードであった。
「久しいな。ヴァン君。元気だったかい?」
ヴァンは驚きを隠せなかった。
「どうしてお前がここにいるんだ……」
ウィザードもとい、ルイはヴァンに近づく。
「ヴァン、君に見てほしいものがある。」
「なんで俺を生かした!!俺も殺せばいい!!」
「君を生かしたのには理由があるんだよ、ヴァン。ジョニーが案内してくれるから、さあ。」
「うっ!!」
ジョニーに鎖を引っ張られ、ヴァンは仕方なく移動した。
広間の横の下へと続く階段へ行くようだった。
ヴァンはジョニーに鎖で引っ張られながら階段を下りていく。
長い階段の先には広大な地下室があった。
その中央には、幹の部分が巨大な水晶のような材質でできた奇妙な大樹がそびえ立っていた。
「これは『アカシアの記』だ。ある魔法使いが記録した生命の記憶を蓄積する聖なる木だ」
ルイが厳かな声で説明した。
「これからヴァン、君に見せるものをよく見てほしい。真実を知る時だ」
ルイはアカシアの記の幹に手を触れる。
すると幹が淡く光り始め、その表面に映像が浮かび上がった。
最初に映し出されたのは10年前の戦場だった。
若きウィザードと異国の王が激論を交わしている。
「ラルテル陛下!無意味な侵略は止めましょう!民を苦しめるだけです!」
「黙れウィザード!王家の威光を示すのだ!」
次に映ったのは15年前のアラベンダ王国のある場所。
ウィザードが仮面を付けた侍たちを訓練している場面だ。
「ふむ、こんな場面を急に見せてもわからんだろう。私の始まりから見せるのがいい。」
ルイはアカシアの記を真っ赤に光らせ、歴史の記録を大きく遡らせた。
そしてヴァンに始まりの記録を見せ始めた。