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アカシアの記14:幽閉のギラ

ギラは髪を切った。

金髪に特徴的な一部の赤毛を残したまま、短髪にした。

両親が死に(復活しているが...)脅威ではなくなったことで、長い髪で身を隠す必要もなくなったからだ。


アラベンダ王国の建国準備は続々と進んでいた。

神座の侍たちは城や街の建物の建設作業、聖騎士団は数百の聖剣による結界を張っていた。

(聖剣の結界を使うことでザナ・ヴェートから見つからないようにするためである)

建国に向けて、神座の侍たちは日々忙しく働いていた。

巨大な石を運ぶ者、木材を削る者……誰もが真剣な表情で汗を流している。


「おいおい、邪魔だぞ!」


突然、声が響いた。

聖騎士団の一員が、結界を張る場所へ案内するために神座の侍の作業現場を横切ろうとしていたのだ。


「何だと?」


神座の侍の一人が反論する。


「こちらこそ忙しいんだ。邪魔するのはそっちだろう」

「なんだと? 俺たちは国を守るために結界を張っているんだぞ。お前らのわがままは通らない」

「ふっ、偉そうに。侍のほうが歴史は深く、根強いんだよ。」

「その分、古い考えから抜け出せないってことだな。」

「経験値が豊富なんだよ!」


聖騎士団と神座の侍の間に険悪な空気が漂う。

互いに睨み合い、今にも口論になりそうな雰囲気だった。


その時—


「やめろ、君たち」


凛とした声が響き渡った。

ルイが間に割って入った。


「喧嘩なんてしている場合じゃないだろう。私たちはアラベンダ王国の創設者になるんだ。共に手を取り合うべきだろ。」


聖騎士団も神座の侍たちも静まり返る。

だが、


「俺たちはアーサー様に付いてきただけだ。お前なんかに指図される覚えはない。」

「そうだ、ルイだか手品師だか何だか知らんが、お殿様の代わりをやろったってそうはいかない。どっかいっちまえ!」


ルイは神座の侍たちに服を掴まれる。


「...やるってのか...」


次の瞬間、


「ガッシャーーーーーン」


ルイが侍に投げ飛ばされてしまった。


「調子乗んなよペテン師が!」

「おう、良いこと言ったな。ペテン師だ、ペテン師。」


倒れたルイを横目に、聖騎士団も神座の侍たちは笑いながら去っていった。

彼らが立ち去ってから、ギラがやってきた。


「...え?、おい、どういうことだよ。大丈夫かルイ?」


ギラがルイの肩から手をまわし持ち上げた。


「大丈夫か?ルイ」


ルイは考え事をしているみたいにボーっとしていた。

(私の力が...確実に衰えている...)

ルイは精神的ショックでギラの言ってることに気づくことができなかった。


「ルイ?...とりあえず、ルミn......おっと...アーサーのところに連れてくからな。」


ギラはルイを連れて行った。




『アーサー・ギルドレイド』

アラベンダ王国の王として確約されている初老の男だ。

その正体は、顔を魔術で変えたルミナスであった。

アラベンダ王国建国にあたり、誰かが王様にならなくてはいけないということで買って出たのがルミナスだった。

ルミナスことアーサーはアラベンダ王国がザナの子供育成だけのためとはいえ、本格的な国づくりを行おうと考えていた。

それはルイとも考えあった本物に似た王国の生活を作り上げるための重要なポイントであるからだ。

だが、それとは別にルミナス自身が王様という立場でのんびりとした生活を送りたいという思いもあったというのは、ルイには気づかれていないようだった。


無論、ルイについてもまた役割があった。

それは生まれてくる自分の子を育てる先生としての役回りだ。

魔法使いの先生だという。

だが、先の通り、ルイは不安に落ちていた。

魔法の力が以前より急激に劣ってきていたからだ。

これでは魔法使いとして成り立たないと考えたルイはアーサーにある考えを提示した。


「...魔力を強めてほしい...か」

「ああ...こんなお願いは初めてなんだが、」


アーサーは少し困った表情で玉座に座っていた。


「頼む!一生のお願いってやつだ。俺に魔力を分けてくれ!」


ルイはギラやアーサーのいる前で堂々と土下座をしてみせた。


「そう言われてもなぁ...」

「頼む!何か都合が悪いのか?何なんだ?」


ルイはしつこく聞く。

アーサーは落ち着けと言わんばかりに口を開く。


「私は魔力を誰かにあげたことはないんだ。すまないが、私からあげることは不可能だ。...ただ」

「ただ?ただ何だ!」

「ギラならそれが可能かもしれん。」

「ん......え!?」


ギラは驚いた表情を見せる。

ルイとアーサーはじっくりとギラを見つめる。


「お、俺は無理だよ。散々、両親に体いじくられて、またそんなことするなら、お前らだってトーマスやリリアと同じじゃねえか!」


ギラは声を荒げる。


「そういえば、トーマスとリリアどこやったんだ?心配なんだよ。どこやった?元通りになる前にもう一回ぶっ殺してやるからよぉ!!」


ギラはアーサーとルイに言い寄った。

ルイは立ち上がりギラに近づいた。


「そうか、ギラ、君の血はかなり興味深いね。不死身と魔力を分け与えたあのクレア・フェニックスの血を受け継いでいるんだ。...とても興味深く、研究のし甲斐がありそうだ...」

「研究だぁ?二度とそんな言葉、口にすんなよ!!研究とかなぁ、両親思い出すんだよ!...俺は絶対お前に魔力なんかやらねぇからな。じゃあな。頭冷やしとけ」


ギラはそう言って、天井の無い王室を出ていった。

ルイはゆっくりとアーサーのほうに顔を向けた。


「やれやれですね。全く、私たちの計画を理解していないのかなぁ。」

「いや無理もない、親に残虐な研究をされたんだ。彼を追い詰めるのは良くないんじゃないか?」

「そうかなぁ、ルミナス。今の僕は完全な無力なんだよ。もしギラが逃走して裏切ったとしたら、僕と君だけで計画を進めることになる。君一人が魔力で対応するのも良いと思うけど、バックアップは必要だと思うんだよね。第一、君は特攻という立場にないし、バックアップは君が最適だとも言える。」


アーサーは腕を組み考える。

そうアーサーには王国での、のんびり生活という夢があったので、ルイが副としての指揮を取ることは重要なものであった。


「確かにな。君の存在が重要だということは私にもわかる。しかし」

「ギラを幽閉してください。」


ルイの言葉にアーサーは驚いた。

だが、ルイはただ真っすぐな眼差しを向けていた。


「幽閉か。ということはクレアと同じことをするのだね。」

「躊躇はないですよ。」


ルイは眼差しを変えない。


「うむ、長々と考えても仕方がなさそうだ。ギラには悪いが、しばらくルイの力になってもらおうか。」

「場所はグランシャリオ山の山頂が良いかと。」

「素晴らしい」


ルイはアーサーに近づき、手を差し伸べ握手をした。



~7年後~

気が付くとギラは幽閉されていた。

立ったまま両手を鎖につながれ、部屋に閉じ込められていた。


「...なんだよこれ.......何なんだよこれぇぇぇ!!!!」


ギラは怒り狂い叫んだ。

その場所はグランシャリオ山の山頂に位置している、なかなか立派なお城であった。

ルイはその城の自分の王室でギラの叫び声に気づいた。


「坊やが起きたか...」


ルイは玉座から席を立ち、牢屋の鍵をクルクル回しながら、口笛も吹きながら、地下牢の方へスキップして行った。


「♪~~」

「......誰だ!誰だ!!貴様!!」


ギラが顔を前のめりにして叫んでいた。


「...あ...くっ.....だと思ったけど....だと思ったけど、どうやって!!!」


ギラはルイを睨みつけながら聞く。


「ルミn...じゃなくて、アーサー王が手助けしてくれたんだよ。」

「くっそ....ふざけやがって....」

「このお城もアーサーがちょちょいのちょいで魔法で作ってくれたんだ。」

(アラベンダ王国の建国でアーサーが魔力を使わないのは圧倒的な魔力に人々がアーサーを恐れてしまうというリスクがあると考え、建国については地道に歩むことにした)


「まぁ、あとの装飾は、俺の魔術で色彩させてもらったけどね。」

「お前....魔力戻ったのか....」


ルイはクスッと笑い、


「あぁ...」


ルイは後ろにある何かに被さった布をめくりあげた。


「な、ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!」


ギラの目の前には大量のギラたちの頭部の無い死体のホルマリン漬けがそこにあった。

(ギラは不死身であるため、頭部があれば再生する)


「いやぁ、結構時間かかったよぉ、アーサーのアカシアを使ってなんとか僕に適合することができたんだ。」


ギラは声が出せないほどショックを受けていた。


「......そう、君のおかげで......魔力が戻ったし、僕、不死身になったんだよ~」

「....お前も..ルミナスも.....トーマスとリリアと同じだ.....」

「結構お寝坊さんなんだね。ギラくん♥」

「うがあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


ギラは白目を剥いて叫びあげた。

ルイは頬杖をつき言う。


「これからは僕のシモベとして、よろしくね」

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