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アカシアの記12:再興のギラ

あれからどのくらい時が経ったのだろう。

ギラは立ったまま両手を鎖につながれ、部屋に閉じ込められていた。

ギラの髪は地面に付くほど長く伸びていた。



「キャハハハハハ・・・・」


部屋の外から笑い声が聞こえてくる。

トーマスとリリアが実験をしているのであろう。


「・・・楽しいか?お前ら・・・」


ギラは独り言を言い、顔を俯かせた。

絶望......などと考えてる時はもう過ぎた。

どうにかして脱出しなければならない。

ギラは拘束された赤い右手に一切の力を込めた。


「...クッ...俺は...俺は...全部ぶっ壊す!!!」


その瞬間、拘束にヒビが入り、破壊することに成功した。

ギラは両手の鎖をなんなく破壊し、独房の扉を吹き飛ばした。


トーマスとリリアはすぐに気づいた。


「あら、坊やを起こしちゃったかしら。」

「反抗期だからね。仕方ないね。」


トーマスとリリアは魔法の杖を備えたカスタムの猟銃を取り出し、独房のある廊下に赴いた。


「来るわよ、坊や!」


トーマスとリリアが同時に引き金を引く。猟銃からは青白い光の矢が放たれ、ギラに向かって直進する。ギラは咄嗟に身を翻して回避するが、一発が左肩を掠めた。


「うっ……!」


痛みと共に皮膚が焼けるような感覚が走る。光の矢には対魔物用の聖属性の魔法が込められていた。


「ほぅら見たことか。そんな状態で親に勝てるわけがないだろう?」


トーマスは冷たく笑った。


「その魔法銃は特製だ。聖騎士団の協力を得て作った特殊弾頭がお前を混乱の中に誘ってくれるわ。」


ギラは肩を押さえながら、トーマスとリリアを睨む。


「混乱?上等だよ。混乱した方が俺は暴れられるんでねぇ!!」

「何!!?」


ギラは左右の壁や床を瞬間的に飛び回り、トーマスとリリアに襲い掛かった。


「速い!!」

「ひっ!」


ギラは赤の右手でトーマスとリリアを引き裂いた。

二人の体はドラゴンに引き裂かれたかのようにズタズタに引き裂かれた。

叫ぶ間もなく死んだ。


「...やっと終わったのか...」


ギラは両親の死に関して何の感情もなく、その場を去っていった。

研究所のドアを開け、サンレオンの日の出を目の当たりにした。


「夜明けだ...」


ギラはさっさとその場所を移動した。

サンレオンを去り、なるべく遠くの町へ行こうと考えた。

だが、ギラには生きる計画などを持ち合わせていなかった。

歩きながらギラは考える。


「......これから、どうしよう...」


ギラは歩き続け、歩き続け...

ただ歩き続けた。

十分な栄養を得ていなかったギラは、たった隣町で倒れこんでしまった。

陸橋の下だった。


「どこだ...ここは...」


ギラはただ倒れこんでいた。

眠くもないが、起き上がれない。

ただ倒れこむしかなかった。




ルミナスとルイはトライベルトのある町、ラウディに訪れていた。

ラウディという町は、トライベルトの都心から少し離れた所にある、自然が豊かな町だ。

ルミナスとルイはこのラウディに研究所を作ろうとしていた。

ルミナスとルイは「プロジェクト・アラベンダ」という計画のために研究所が必要だった。

だがトーマスとリリアのことがあった為、トライベルトの人々は当然のごとく研究所建設に協力しなかった。

路頭に迷ってしまったルイはあてもなくラウディの路地を歩いていた。

あたりは暗くなっていた。

ルイは小さな陸橋の下に入っていった。

陸橋の下を月光が照らした。

そこに誰かが横たわっていた。

長髪だが、男のようだ。

ホームレスだろうか。

足音を立てながらその者に近づいた。


「大丈夫?」


声をかけるが動かない。

心配になったルイはその人物の体をゆすってみた。

よく見るとその人物の右手は真っ赤な異形の姿をしていた。

ルイはすこし驚いた様子だった。


「・・・ん?」


その人物が起き上がった。


「なんだ・・・あんた」


その人物は起き上がった。

彼の右のまぶたには傷がついていて、歯はギザギザしていた。

ルイは彼に興味を抱いた。


「私はルイ。・・・君の・・・名前は?」

「・・・俺の名は・・・・・・・・・・・・・・ギラ」


ここで二人は出会った。


ルイはギラを宿に招待し、クリームコーヒーをごちそうした。

ギラはすぐに飲み干した。

ホームレスだったギラはひどく傷ついている様子だった。

それは外傷ではなく、心の傷だとルイは感じた。

落ち着いてはいるが、意識が朦朧としている様子だった。

目に光が無い。


ギラはよそよそしそうに目を地面に向けている。


「親を殺したのか。」


ルイはカップを口元に近づけ、クリームコーヒーを飲む。


「私は、自分の親がわからなくてね。家族の行方を探してたんだ。」


ルイはカップをテーブルに置いた。


「兄がいることを知ったのは、5、6歳の頃だった。兄に会えば、親のこともわかるって、そう思ったんだ。」


ルイは顔を俯かせた。


「そしたらさ。彼が、」


と言い、後ろに立っていたルミナスに目をやる。


「彼が全て教えてくれたんだ。俺の両親は火の魔族に殺されて、兄は水の魔族が殺したってな。」

「...」

「...兄さんは助けてやれたんだ本当は......でも...兄さんのこと認識できなくて...」


ルイは目を押さえながら言った。


「...要は...要は兄弟で殺し合いをさせられたんだよ...どうしようもなくてな」


ギラはルイを見つめた。


「俺もお前と同じさギラ...血のつながった兄さんを...目の前で見殺しに......殺したようなもんだ...」


ルイはギラの手を握る。


「俺たちと一緒に来ないか?」


ルイはギラにそう問いかけた。


「あなたたちは一体...」


ギラはキョトンとしていた。

そこへ、ルミナスが身を乗り出す。


「我々は、プロジェクト・アラベンダの創始者になる者たちだよ。君が我々の仲間になってくれるのなら、まず君の両親の死体の場所まで案内してくれないかい?いかがかな?」

「...まぁ、行く当てないし、僕が案内しなくてもどうにかしてアイツらの死体を探すだろうから、二度手間避ける分、協力するよ。」


ギラはゆっくり立ち上がった。

ルミナスはニッコリ笑顔を見せ、


「君のおかげでプロジェクトの段階を数歩飛ばすことができそうだ。」


と言い、宿の扉を開けた。

向かい風に吹雪の中、三人は歩き出した。

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