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アカシアの記11:ギラの逆鱗

僕は目を開けた。

僕は眠い目をこすりながら、横たわっていた体を起こした。

何でここで眠っていたのか思い出せない。

僕はあたりを見回した。


「!!!」


僕は唖然としてしまった。

周りにはアマゾネスたちの血だらけの死体がゴロゴロと転がっていたからだ。

僕は状況を把握することができず吐きそうになって口をおさえた。

意識がだんだん戻ってきて、ここがどこなのかがわかってきた。


「・・・ソル・コロシアムか。」


僕は警戒しながら観客席の方を向いた。

暗がりになっていたが目を凝らした。

いた。

あの悪魔のような二人を発見した。

二人とも笑ってる。


「父さん!母さん!」


僕は二人に向かって叫んだ。


「ギラ、お前は素晴らしい。」

「誇らしいわ我が子よ。」


二人は僕に向かってそう言ったあと、二人でキスをしあった。


「な、なにを・・・」


僕は周りの状況をもう一度確認した。


「・・・キャハ、ハハハ・・・」


誰かの笑い声が聞こえた。

僕はその声の方に振り向き、目をこらした。

そこには、四肢を切断されたアマゾネスが倒れていた。

切断面からは血があふれており、見ていられなかった。

こんな悲惨な状態なのに、なぜかアマゾネスは笑っていた。

まるで赤ん坊のような笑顔を見せ笑っていたのだ。


「キャハハハハハハハハッ、アハハハハッ」


四肢を切断されてもなお、四肢を動かそうともがいていた。

まさに赤ん坊のようだった。

その笑顔は純粋に見えた。


「・・・一体・・・一体何をしたんだぁぁぁ!!!!」


僕は観客席にいるトーマスとリリアに向かって叫んだ。

リリアはキスをやめ、僕に向かって言う。


「その子に魔法をかけてあげたのよ。痛みを無くす魔法をね。それと笑顔を絶やさない魔法もかけてあげたわ。ほら、見て。あのかわいらしい笑顔。美しいわ。」

「うぅ・・・狂ってる」


僕は思わず嘔吐した。

アマゾネスは今もなお笑ってる。

僕は膝をおとし、地面に座った。


「こんなの間違ってる。なんでこんなひどいことを・・・」


僕は落ち込んだ。

その時、背後から誰かの声が聞こえた。


「・・・うぅぅう・・・」

「誰!?」


僕は立ち上がって振り向いた。

そこには血だらけの老婆がうつぶせで倒れていた。

まだ動けそうな様子だった。


「・・・ジャオウ?」


僕はかすかな記憶の中から老婆が誰なのかを認識した。


「大丈夫ですか!?」


僕はジャオウに近づこうとした。


「来るなああああああ!!!!!!!!!」


ジャオウは僕に向かって叫んだ。

僕は立ち止まってただジャオウを見てた。

ジャオウは振り返り、観客席にいるトーマスとリリアに向かって叫んだ。


「もう!!終わりだ!!!」


その言葉に反応したトーマスとリリアは観客席を降り、僕とジャオウの近くまで歩いてきた。

ジャオウは少し冷静になり、トーマスとリリアと対話しようとしはじめた。


「・・・これはやりすぎだよ・・・これはやりすぎだ・・・お前のことを愛しているが、これはやりすぎだ。」


ジャオウの視線はトーマスを見ていた。


「誰かと勘違いしてるんじゃないですか?私とあなたは愛しあってなどいない。私トーマスが愛しているのはリリアとギラだけだ。」


リリアは嬉しそうな表情を浮かべながらトーマスの肩に手をまわした。


「・・・トーマス・・・お前を一目見たときにわかった・・・お前は我が息子ヴィヒ・フェニックスだと・・・」


僕はジャオウの言ってることがよくわからなかった。

父さんも同じようにきょとんとしている様子だった。

だが、母さんは違った。

何かを知ってる様子だった。


「・・・私の本当の名はクレア・フェニックス・・・私にはわかる・・・赤ん坊の頃のお前を知ってる・・・家族だから・・・成長してもわかるんだよ・・・」

「何をでたらめなことを。・・・トーマス大丈夫?」


父さんの様子がおかしくなっていた。

動揺しているのか。

または何かを思い出したのか。

上の空の様子だった。


「・・・ヴィヒ・・・お前を城に残していったのは私の罪だ・・・私は奴から逃げ、居場所を作った・・・そしてもう一度お前と出会えた・・・お前を影ながら見守ることが私の罰だった・・・」


ジャオウは口に溜まった血をペッと吐いた。


「・・・だがもう黙認できない・・・お前は一線を越えてしまったのじゃ・・・お前の実験で人が死ぬのはもうコリゴリじゃ・・・今・・・ここで・・・おぬしらを殺す!」


ジャオウは目に涙を溜めながら僕らを睨みつけた。

リリアはすぐに反論した。


「あんたなんかただの赤の他人よ。でたらめを言うにもほどがある。さすがカルト宗教の長って感じだわ。」


リリアも動揺を隠せていないようだった。


「・・・貴様もカルト宗教の長のようなものじゃろ・・・こんな化け物を作りおって・・・」

「化け物?・・・ギラのことかしら・・・」


化け物?


「そうじゃ、化け物じゃ。このような化け物は存在すべきではない。今のうちに消さなければ後悔することになるぞ・・・」


俺が・・・化け物?


「・・・ええ、ギラは化け物よ。でも安心してちゃんと飼育してあるから。この子私たちの言うとおりにしか動かないの。」


飼育・・・?


「・・・化け物・・・化け物!!・・・化け物!!・・・化け物!!」

「そうよ!もっと言って!化け物!化け物!」


俺は・・・俺は・・・


「化け物!!化け物!!殺せ!!メル!!そいつを殺せえ!!」

「!!!貴様ぁ!!私はリリアだぁ!」


俺はぁ!!!!化け物じゃない!!!


「うがあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」




僕は記憶を取り戻した。

ギラとしての記憶を取り戻した。

僕はサンレオンでアマゾネスたちと平穏な関係で日常を過ごしていた。

僕の右手を見てもアマゾネス達は普通の人間のように接してくれた。

中でもよく話をしていたのはアリアだ。

アリア・ザイテ。

アマゾネスの一人で僕と同い歳だった。

黒い髪を一つ結びにしていて、肌は白く、目は青かった。

彼女は振り向くたびに僕に笑顔を見せてくれた。

アリアはよくジャオウのことを話してくれた。

アリアにとってジャオウは親のような存在で、アマゾネスの中で唯一孤児のアリアを引きっとって育ててくれたという。

彼女はジャオウに愛の感謝をしていた。

愛情深いアリアが僕は好きだった。

今では、アリアに思いを伝えていればと後悔している。

ある日、僕が家にいると両親が何やら話しているのが聞こえた。

要約するとアマゾネスを皆殺しにする計画を話していたのだ。

僕はあやまって両親のいる部屋の扉を開けてしまった。

両親はにこやかな表情を浮かべて僕を捕まえた。

黒い布を被せられた僕は椅子に縛られ身動きが取れなかった。

わかるのは、ただ両親の喋る声だけ。

僕を何かの実験に使おうとしていた。

僕は右手に力を込めて鎖をほどこうとしたが無駄だった。

そしてトーマスとリリアが僕に言った。


「お前にはこれからアマゾネスを殺しに行ってもらう。」

「頼んだよ我が子よ。」


そう言われ僕の体に何かが入ってくるような感覚に襲われたときには、もはや僕の記憶は飛んでしまっていた。


そして今もう一度、記憶が飛んだ。


ことが終わったのか。

トーマスとリリアは血だらの姿で血だらけの何かを持っていた。


「よしよし、これは何かに使えるかなリリア」

「ええもちろん、だってこれはクレ・・・ジャオウなのよ。魔女の血肉は素晴らしいはずよ。」

「そうだよね。よし早速帰って実験しよう!ハハハ」

「オホホホ」


イかれた両親が笑っていた。

僕は返り血をあびた体を動かそうとした。

ダメだ。

体が動かない。

僕は四肢を切断されたあのアマゾネスの方をそっと見た。

僕は哀れみの気持ちを視線にのせ、彼女の方を見た。

視線をおくっても、何も起こらない。

彼女はただ倒れ、もう動かない。

希望を願って見つめても、アリアはもう振り向かない。

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