アカシアの記8:完全独裁政権
時はアルヴァニア政権後期。
エルデンテ・アル・アルヴァニアⅡ世による完全独裁政権の時代にあった。
エルデンテⅡ世はかつて自らに与えられた魔力を用いて戦争難民を救ってきていた。
難民は彼のことを「選ばれし者」と呼んでいた。
エルデンテⅡ世は難民を避難という形でアルヴァニア城に移住させていた。
アルヴァニア城に移住してきた難民たちは皆エルデンテⅡ世に忠誠を誓った。
やがてエルデンテⅡ世の養父にあたるエルデンテⅠ世が老衰したことによって、エルデンテⅡ世の暴走が始まる。
エルデンテⅡ世はまず、難民に戦闘部隊を担うよう命令した。
アルヴァニアには元々兵士は存在していたが、エルデンテⅠ世から続くマナーの伝統、堅く厳しい「アルヴァニアの掟」に忠実な者たちばかりであった。
その為、王の暴走を抑制するためにもアルヴァニアの掟は重要なものであった。
しかし、それに嫌気がさしたエルデンテⅡ世は新生の部隊を難民で編成することで力による世界の支配、征服を目論んでいた。
それにいち早く気づいたのが、かつてエルデンテⅠ世の執事をしていたミスターセビスことセビス・ヴェートであった。
だが、ある事がきっかけにセビスはエルデンテⅡ世に歯向かうことができなくってしまう。
それはセビスの娘ソフィア・ヴェートのことであった。
エルデンテⅡ世はセビスの動向に気づき、ソフィアを人質に取ったのだ。
エルデンテⅡ世はセビスに脅しにかかり、娘の命だけはとセビスは遂にエルデンテⅡ世に忠誠を誓ってしまったのであった。
エルデンテⅡ世はそこからほどなくして子供を授かることになった。
エルデンテⅡ世には4人の愛人がいた。
死にかけの鳥から人間として生き返させらせたクレア・フェニックス、セビスの娘ソフィア・ヴェート、死にかけていたところをエルデンテⅡ世に実験体として扱われた女メル・ソウテン・リドゥ、エルデンテⅡ世を昔からよく知る難民の女ラーサ・ハーンの4人だ。
最初にエルデンテⅡ世の子として生まれたのはクレア・フェニックスとの子供、ヴィヒ・フェニックスだった。
ヴィヒが生まれてから半年後、ソフィア・ヴェートとの子供、ライギ・ヴェートが誕生。
また1年後にメル・ソウテン・リドゥとの子供、リズ・リドゥ誕生。
そして1年後にラーサ・ハーンとの子供、ロイ・アル・ハーンが誕生した。
子供は4人とも男の子であった。
子供が4人生まれてからほどなくして、クレア・フェニックスが失踪をとげた。
エルデンテⅡ世はその事に特に関心を持つこともなく、また4人の子供についても関心を持つことがなかった。
彼が関心するものは世界征服ただそれだけであった。
全てを支配し、全てを手に入れたい。
究極の欲望に枯渇していた。
エルデンテⅡ世の4人の子供たちはやがて青年に成長した。
エルデンテⅡ世の独占力はさらに強くなっており、人々を苦しめ、さまざまな非人道的行為に及び合成種族を生み出していた。
エルデンテⅡ世は欲望のまま世界の創造と破壊を繰り返し、やがて愛人の一人メル・ソウテン・リドゥを殺してしまう。
その様子を見た4人の子供たちはある決意を固めた。
4人の子供たちは魔王エルデンテⅡ世を封印することに決めたのだ。
封印の発案者はソフィア・ヴェートとライギ・ヴェートであった。
その封印の儀式の名称は二人の名から引用され「ソフィアライギ」と名付けられた。
ソフィアライギには4人の魔女が必要であった。
4人それぞれがそれぞれの娘を魔女に育て上げ、ソフィアライギに挑めるようにした。
ヴィヒの娘レイリーン、ライギの娘フラー、リズの娘ヴェル、ロイの娘チャントレー、この4人が魔女として挑むことになった。
また儀式のために魔女たちはそれぞれ1人づつパートナーとタッグを組まなければならない。
ソフィアライギは魔女とパートナーで1組として、計4組のバトルロイヤル方式の儀式である。
ソフィアライギの場所は異空間に指定され、入り方は魔女たちそれぞれ異なる。
ソフィアライギの基本的なルールは殺し合いである。
組ごとの魔女かパートナーどちらかが死んだら、その組は脱落になる。
組の魔女かパートナーどちらかは敵であろうと必ず生かしておかなければならない。
最後に残った組が勝利となり、魔女とパートナー共に生きて地上に出ることができる。
優勝賞品はしいていえば自分の命である。それだけ。
ただこの儀式を行わなければ、エルデンテⅡ世を封印することはできない。
また魔女たちは本能的にソフィアライギを実行しようとするため、実行拒否することはできない。
ソフィアライギが一度終わると次のソフィアライギまでに20年の空白期間を要する。
その間は、封印は解かれることはない。
これがソフィアとライギが考え出した封印の儀式である。