第71話 あの霊廟はどこにある?
私は一通り霍将軍に説明をした。
高家は供物を与え、それ以外に上から贄を落とす者がいるという。
「永楽という名は偽名であろう。よくあるような名じゃ」
饕餮に上から贄を落としていた者のことだ。それは渾敦の偽名だろう。
渾敦。その姿は諸説ある。
赤い毛むくじゃらで足が六本、翼が四枚あり頭がない獣らしい。
善悪の区別がつかず、まさに世に混沌をもたらす存在だと言われている。
そんな者がこの地にいるというのだ。
それも悪食の饕餮に贄を与えているという。
「しかし、地下に廟とは……これ。瑞曉の地図を持てい」
霍将軍は使用人に首都の地図を持ってくるように言った。そして、食事が終わったぐらいに筒状に丸めた紙を持って入って来る人がいる。
綺麗に片付けられた卓の上に一枚の紙が広げられた。
これが首都の地図なのだろう。初めてみた。
四角く囲まれた線の中に更に多くの四角があり、その間を伸びる道がある。上部にはその伸びる道を遮るように四角く囲まれた部分があり、そこはいろいろな建物の名が記されていた。
ここが琅宋がいる皇城なのだろう。
恐らく私が見ていいような地図じゃない。
だって、皇城の内部の建物の名前とか後宮の建物の名前が書かれているもの。
「高家の屋敷だったところはここである」
霍将軍は北側にある一角を指し示した。
先ほど居たけど、私は普段行かない場所だったので、詳しい位置はわからない。
だけど、霍将軍が言うのだからそうなのだろう。
「それで地下の道はどうなっておった?」
「まっすぐ北に伸びていた。それも時間としては半刻弱歩いたところ。でも五日も移動していたとなると、もうわからない」
「慎重に進んでいたから、五里ほどだろうな。ただ俺は西に進んでいたと思っていた」
私と霍良の感覚はズレていた。暗闇の中進んでいたのでそういう違いも出てくるだろう。
しかし、私も霍良も時間としてはそこまで経っていないという感覚だ。
「ふむ。北だと外れてしまうのぅ。西だと皇城か後宮か微妙なところであるのぅ」
「お祖父様。皇城に霊廟があるとしたらおかしいことじゃないですね」
あれは豪華な造りだった。だから、皇帝だった者の霊廟で間違いはないと思う。
それが誰かは白の証言しかなく、物的証拠はない。
「そうであるのぅ。だが、地下というと、元の場所を特定するのは難しい。上から繋がる穴があるというぐらいであるのぅ」
贄を落とす穴という意味だよね。
でも普通に穴があると人目について、おかしいと思われてしまう。
「なにか建物の地下から更に下りる場所があるのでしょうか?建物が上にある方が人の目を遮ることができると思いますが」
「それはそれで問題である。建物を作り上げられるほどの地位に、何者かがいるということになるぞ。良」
霍将軍の言う通りだ。地下に建物があるというのは恐らく渾敦しか知らないと思われる。
その上に地下と繋がるような建物を建てられる立場にあると言っているようなもの。
だけどそれは無意識にそうであって欲しいという願望が現れているだけ。
人の名を騙っていたのだ。人としての姿を持っていたと認識できる。それがどういう立場か。それが、許夫人が首都から逃げた理由に繋がるのだ。
そう贄。多くの者達が働く後宮。そこで一人二人と行方不明者が出たからと言って、どこまで調査がされるだろうか。
隔離された空間で、外部の者が入れない空間で、詳細に調べられるだろうか。
あと二日か。迎えが来て後宮に出入りが可能になったときにそのことを踏まえて調べればいい。
でも、目的がわからない。今までの……過去の事件と何が繋がっているのだろうか。
「饕餮の封印を解いたからと言って何をどうしたいのだろう? 力をつけて封印を解いた饕餮はただ貪欲に食べるものを求めるだけだと思う」
「混乱をもたらせられればいいのじゃないのか? 若しくはこの国を壊したいかだ」
国を壊したいか。
妖魔の考えはやはり私は理解できそうにない。
私がうーんと唸っていると、視界に黄色いものが映った。
「小明や。アメが好きだと言っておったであろう? たくさん用意したので食べるとよいぞ」
霍将軍がそう言って、黄色みがかった棒付きのアメを差し出してくれた。平らに伸ばした丸いアメだ。
疲れた時には甘いもが欲しくなるよね。
そう思った私はアメが先についた棒を手にとったのでした。
いつも読んでいただきありがとうございます。
えっと諸事情により、3月いっぱいは週一投稿にさせていただきます。
申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。




