第70話 そこが繋がるの?
「5日も経っているのですか? お祖父様」
霍良は信じられないと言わんばかりに、霍将軍に尋ねている。
「ふむ。その感じじゃと、時間に惑わされたのかのぅ?」
「時間に惑わされたという感じはありませんでしたが……」
霍良が言うように、時間がズレていたという感覚は全くなかった。
いや、そもそも地下にいたので、どれだけ時間が経ったかは、自分の感覚を信じるしかない。
でも、凄く空腹に襲われたとかはないし、喉が乾いたというのもなかった。
だから、私からすれば、数時間という感覚しかない。
「その高家の屋敷の地下の一番突き当りに霊廟があり、その中に饕餮が封じられていました」
「とうてつ? 饕餮とは……」
霍将軍は饕餮と呼ばれる存在を確認するように、その名を繰り返して口にする。
「人を食らう妖魔です。ただそのモノがおかしなことを言っていました」
「良。お前は口を閉じよ。お前が話すより小明が適任じゃ」
霍将軍は、霍良が説明しようとしたのを止めた。
霍良は一瞬不服そうな表情を出したものの、ため息を吐き出して、私のほうを見てくる。
私に説明しろと?
別に私が説明をしても、霍良が説明をしても変わらないと思うのだけど?
しかし、霍将軍は私が説明しなければ納得できないらしい。
これは、ただのシスコンの延長なだけのような気がするのだけど……。
「小明や。じいじに教えてくれんかのぅ?」
先程の霍良に対する厳しい雰囲気とは一転し、好々爺といっていい霍将軍が聞いてきた。
これ絶対に、孫たちから差別だと言われてもおかしくない態度なのだけど?
「そうだね。饕餮は、瞬が堯帝の重臣になると流罪になって辺境に追放したと歴史にはある。でも実際はこの地に封じられていた。これはどういうことなのかという疑問を解決しないと進めないと……」
「黎明。事実だけを言え」
霍良に怒られた。でも、それは大事なことだよね?
誰がこの地に封じたのか。そしてあの廟は何なのか。
これがわからないと、全てが予想で物事を口にするしかない。
「瞬帝か。確かにそのような記述があるが古すぎて曖昧な部分が多いのも事実」
確かに曖昧な部分が多い。だけど、ここにその時代を生きたモノがいる。
「縉雲氏の息子に饕餮と呼ばれる息子がいた。小皥氏の不肖の息子は知ってると思うのだけど?」
私は我関せずという感じで魚料理を黙々と食べている白猫を見る。
私の視線を感じたのか、横目でちらりと私のことを見た。
答えてくれるよね? というか情報提供ぐらいしてくれてもいいじゃない。
昔の知り合いという感じで、話していたのを見なかったことにはできないよ。
「では帝鴻氏に渾敦という不肖の息子がいたのを、付け加えておけ」
ん? 帝鴻氏?
鴻帝? ……え? それって高家の祖とか言っていた?
「え? ちょっと待って? 高家って四凶の一角の血筋?」
「天界から追放されたヤツが堯帝に拾われていたよな?」
……そこ繋がっているの?
あれ? 堯帝がいるのに他に皇帝がいることになっている?
あ、太古の時代に五帝がいるとかなんとかあったから、それが引き継がれていたということかな?
「それじゃあ、何故この地に饕餮がいるの?」
「食い過ぎたんだよ。自分の身体まで食ってしまったほどだ」
くっさい毛むくじゃらの身体があったけど? それじゃ、あれは何だったというわけ?
妖魔だから、食べたら生えてきたとか?
「それで辺境で食うものが無くなったらどうしたと思う?」
「まさか、食べるものを求めて移動してきたってこと?」
「そのとおりだ。その時代は既に天界から落ちてきたものは死んでいたから、血を受け継ぐものが封じたのだろう?」
たしか、不老不死を天帝に取り上げられたというやつだね。だから、その力を受け継ぐ者が対応したと。
……それは先祖ってことになるよね?
霍家になにか書物が残っていないわけ?
いや、たぶん残っていない。
紫炎帝せいで、一族の者は忌避される対象になったので、書物などは残していない可能性がある。
「饕餮を封じたのが霍家の祖となると、あの廟はなに? なぜ、埋められているの?」
「あ? 埋めたのは渾敦じゃないのか? 俺は詳しくは知らん。ここまで言えばだいたいわかるだろう。あまり手伝うなと言われているんだからな」
そう言って白は毛繕いを始めた。
これはもう話さないぞという態度だ。
「うーん。その古代の皇帝の廟が本来あった場所はわからないけど、高家の崩れた屋敷が既に妖魔のテリトリーで、突き当りには皇帝の姿をした饕餮が餌を求めて待ち構えていたということだね」
私は簡単にまとめて霍将軍に言ったのだった。




