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第7話 天帝って誰のことを指しているのだろう?

 武官のなんとかという人の屋敷の前に連行された。白にだ。

 取り敢えず、今日は下見だけにきた。


 ヤバすぎて何がどうなっているのか知るためでもあった。


「退魔師協会の情報によると、政頼(せいらい)という武官は無骨なほど真面目な人物だったらしい」


 私の肩に乗っかった白い猫が説明してくれる。

 ここは上級官僚が居を構える地区になるので、みすぼらしい袍をまとった小娘がウロウロしていると、そのへんにいる兵に捕まってしまう。そして、怪しい武人の姿をした者なんて尋問されてしまうかもしれない。


 だから私はババァの古着である、その辺の下働きの下女風の服を着ていた。こんなものまで貸し与えてるなんて、よっぽどこの変死事件を解決したいのだろう。

 まぁ、退魔師協会にも被害が出ているようだしね。


「しかしある時から、花街の妓女に入れ込むようになったらしい」

「真面目な人物ほど気をつけないとね」

「それ、天行(てんこう)様が黎明(れいめい)に教えて玉瑛(ぎょくえい)様からこっぴどく怒られた言葉じゃないか」


 うん。私が下界にいかないといけなくなったときに、父から下界で気をつけることを教えてもらっていたのだ。


「え? ハニートラップに引っかかると痛い目に遭うって教えてもらったけど?」

「それは例えで、男の誘惑に簡単にのるなということだ」


 ……私が男性に引っかかる?


「甘々ですごく見た目のいい父以上の人がいるなら引っかかるかも?」

「あ……うん。そうだな、天行(てんこう)様以上に黎明(れいめい)を甘やかす人はいないだろうな」


 すごく納得されてしまった。

 父は私に激甘だ。

 仙桃は食べ放題。昼寝し放題。一日中ゴロゴロしていても怒らない。


 しかしその分、母が厳しかった。仙薬が作れないと仙桃を食べれないとか、術が上手くできないと昼寝ができないとか、呼吸術をおろそかにすると扇が飛んできたりとかだ。


「まぁ俺から言わせれば、玉瑛(ぎょくえい)様も甘いのだが」


 猫が何か言っているけど、母は怒ると怖い。私が下界に行きたくないと父にすがりついていると、引き剥がして仙界から叩き落としたのだから。


「しかし、周りをぐるっと回ってみたが、普通だな」


 私はくだらないことを話しながらも高い塀に囲まれた屋敷の周りを一周してみたのだ。

 屋敷の大きさと言えば武官にしては大きい。恐らく功績をあげた者だったのかもしれない。


 そして門のところまで戻ってきたものの、なんだか中に入るのは躊躇してしまう。

 だって退魔師が五人も帰ってきていないんだよ。

 普通じゃないよね。


「白。帰ろうか」

「あ? 中に入らないと何もわからないだろうが!」


 そうですよね。


 仕方がないので門の二本の柱に札を貼っておく。いざというときの帰るための目印だ。


「あー帰って寝たい」

「三ヶ月分の生活費を前借りしたんだからな。引き返せないぞ。帰りに饅頭を買ってやるからやる気出せ」

「饅頭!」


 あ……なんだか、饅頭の口になってきた! 頑張れそう。


 私はやる気をだして一歩門の中に足を踏み入れたのだった。


「ちょろいという自覚をもった方がいいと思うぞ」


 口うるさい猫を肩に乗せて。




「別に普通だ」


 門をくぐった先には石畳の道が建物までつづいており、建物の周りには放置された庭が広がっていた。


 取り敢えず、庭を回ってみる。


 時々こういう庭に呪物が埋められていることがあるからだ。


「特になにもない」


 井戸の中も見てみる。

 一家の者だけでなく、使用人までということは毎日使用する井戸に何か仕掛けられている可能性があるからだ。


「ない。葉っぱが浮いているけど、変な感じはしない」


 私は首を傾げながら建物を見る。そうなると建物の中に何かがあることになってしまう。


「うん。なんだか嫌な予感がするから帰ろう」

「おい! どこの小娘だ!」


 あ……ヤバい門を入るところを人に見られていたの? 周りには人がいないことを確認していたはずなのに。


 声をする方に視線を向ければ、最近会ったような気配をまとった人物が立っていた。

 厳つい体つきのいかにも武人という人物だ。


「ん? 天仙とあろう方がこのような場所に如何用か」


 私を天仙と呼んで、すごく敵視してくるこの感じは……


「ああ、王離(おうり)っていう人」


 少し前にあった偉そうな武人。

 その武人が大股で私の方に近づいていきた。


「我は如何用かと聞いている」

「あれ? 一週間であの距離を戻ってきたの? 早くない?」

「いや、黎明(れいめい)が霊芝が欲しいとか松脂や松膏とかが欲しいと山に入ったから遅かったんだ」


 いや、また退魔師として暮らしていくなら、仙薬に必要な物を自力で集めないといけないじゃない?

 それは山に分け入るよね。


「む! 猫がしゃべるなど面妖な」

「いや、王離(おうり)は普通に白と話していたじゃない」

「むむ! もしや白虎は仮の姿でもとは猫!」

「窮奇だから、翼があったよね」

「む! これは失敬」

「あと私がここにいるのは、変死事件を解決するように言われたからだね」

「まさか天帝様が!」

「いや、退魔師協会のババァからだね」


 天帝って誰のことを指しているのだろう? そんなの仙界にいたかな?



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