第64話 身内でいがみ合い?
「ここだ」
私の前にはドドンと大きな門が立っていた。そしてその両端には門番と言っていい人物が二人立っている。
だが、そんなことよりも……
「どこの廃屋?」
そう言葉を漏らしてしまうほど、門が色褪せて朽ちていた。
「あ? 高家は霍家に負けたって話しただろう」
「そんな勝負ごとの話だった?」
いや、高家は権力争いに負けたのだ。そして都を追われたのか……って、ここに何があるっていうの?
「許夫人の意図が見えないのだけど、廃屋で家探しをしろってこと?」
「さぁ、俺にもわからん。が、門番がいるほど、ここが今重要な場所だということがわかるよな。許可を取るのは苦労したんだぞ」
門番。よく見ると武官が着る袍に見える。でも霍良とは少し違うことから、部署というものが違うのだろうか。
その許可を取ってきたことを自慢している霍良の後について、壊れかけた門をくぐる。
すると目の前には、その昔は多くの人が住んでいたのだろうという建物が連なっていた。
かなり広い。建物が一つや二つではない。
そんな高家が霍家に追い出された?
怖いよ霍家。
「あと、黎明……」
霍良がコソコソと耳打ちをしてきた。なに? 門番に聞かれてはいけないこと?
「お前、陛下に何を言ったんだ? 最終的に陛下の許可をもらいにいったんだが、普通の人が部屋に入れないほど、機嫌が悪かったぞ」
霍良は私が琅宋と会っていたことを知っているらしい。どこに目や耳があるかわかったものじゃないね。
「迎えは一人で、一週間後にしてねと言ったね」
「絶対に違うだろう! そんな雰囲気じゃなかったぞ」
「うるさいなぁ。皇帝っていうだけで、面倒くさいじゃない?」
「そんなことをいうのは黎明だけだ。はぁ、何があったのか知らないが謝っとけよ」
「謝る謝らないの話じゃないのだよ」
「そんな複雑な話をしていたのか?」
「別に……ねぇ、なにかこの屋敷、おかしいのだけど?」
今は建物には入らずに、敷地の中を歩いているだけだ。建物に入るにしても重要な物が残っていそうな場所に目星をつけないと、無駄足になるからね。
「あ? まだ気がついていないのか?これ黎明がやらかしたと聞いたぞ」
そう、異様に清められているのだ。
普通であればこのように朽ちた建物であれば、雑多な妖魔の住処になったりするのに、何もなくとても澄んだ空気に満ちていた。
あれか!
「大量の霊山の水で押し流したやつの出口!」
「声が大きいぞ」
そう言えば、父が水鏡で見せてくれたところも長年放置されたような建物だった。
ここだったのか。
「ということは、やはり高家が関わっている可能性が高い?」
「さぁ? それはわからん。長年放置されているから、利用したのかもしれない。ここに立ち入ろうとする者は、普通はいないだろうからな」
ああ、霍家に目をつけられないために、高家との関わりを絶とうとすると。
「あの、蠱毒に使われていたモノはどうしたの?」
この敷地の塀の中が蠱毒だと言っていい状態だったと思われる。かなり巨大な蠱毒だ。
普通の規模じゃない。
それをただの武官の……皇帝を守っていち将軍になった者に使うのかという話だ。
「全部処分したぞ。流石に放置するわけにもいかないだろう」
それはそうだね。国が動いたのであれば、それなりの術師に処分を依頼したのだろう。
「それで、どこを見て回ればいいと思う?」
「そんなものは知らん。俺はただの付き添いだ」
いや、私こそわからないのだけど。こういう裕福な家の作りってわからないし。
「この屋敷の主が暮らしていた場所とかは?」
「それはあっちだ」
霍良は建物が立ち並ぶ中央をさし示した。
私には建物が多すぎてよくわからないけど、流石霍家の跡取りというところだろうか。
こういう知識は私にはない。
「なにか決まりでもあるの?」
霍良が即答したので、造りとして決まりがあるのか聞いてみた。
「言い方はそれぞれだろうが、西の方と東の方で分かれるだろうな」
「何が?」
「奥方の話だ」
どこからそんな話になったわけ? 私は三人奥さんがいる霍良のことを聞いたわけじゃない。
「今いるところは東だから、東側に住むところを与えられた奥方が取り仕切っていたろころだろう。主は中央に居を構えることが多い」
あ、そうかお偉いさんは複数人の奥さんがいることが普通なのか。
内心、霍良最低と思っていたのはごめん。
「だいたい西の方と東の方は互いに張り合っていることが多いな」
「人の家庭事情は私にはわからないよ」
「いや、高家から妃、側仕え、皇太子妃を出してきただろう? ここの争いがあったそすれば、どうだ?」
「え? 霍家もそれがあるということ?」
これは内々の争いごとにつけ込まれた結果、都を追われてしまったと言いたいのだろうか。
そして、『だいたい』と言っていることは、自分の奥さんたちも入っていると……まぁ、雰囲気は良さそうな感じではなかったよね。
怖いよね。




