第61話 順番が違う
雰囲気が悪いなか、私は出された料理に手をつけている。
湯気が立っているスープを匙ですくって口にする。とろみのあるスープだ。
中に白い粒が入っているので、お米が入っているようだ。
それを無言で飲む。
あとは鶏肉を蒸したものにソースがかかったもの、野菜を炒めたもの、何か味がついていそうな炊き込みご飯などなど、円卓の上にみっちりと料理が並べられている。
イライラしているので、味なんてわかりやしない。
さっさと食べてここを出ていこう。
そして琅宋は料理には手をつけずに、私の様子を伺いみている。
「霍道士。亀をもってきてもらったぞ」
おっさんが桶の中に入った亀を持ってきた。ちらりと横目でみると、三本足の『賁』が中に入っている。
「それじゃ帰る」
丁度、スープを飲み終わった。
出された料理に手をつけたから、非礼にはあたらないだろう。
「残りは、そこらにいる人達と食べるといい」
私はそう言って立ち上がる。
周りに琅宋の護衛がたくさんいるのだ。これぐらいすぐに食べてくれるだろう。
すると、おっさんがまた壁のように立ちふさがってきた。
それ、いい加減にして欲しい。要望を言った食事には手をつけた。それでいいじゃないか。
そのおっさんは私の右手をとって、何かを持たせてきた。みると口が縛られた小袋だ。
中身が硬いからお金と思われる。
「なにこれ?」
「命の対価にしたは安いが、今の持ち合わせはこれしかないのだ」
白が言っていたことか。これで礼を示したと。
別に私はそれに怒っているのではない。
「いらない」
私はその布袋を王離に押し返す。
王離からもらうのは違う。
王離は琅宋の護衛としてその場にいたにすぎない。
白の言い分はその通りだけど、首を突っ込んてきたのは琅宋自身だ。
そうじゃないのだよ。
「だったら、依頼を……」
「おっさん。アレの呪いの現状は炎駒が問題ないように抑えている。そこに手を出すほど、私はバカじゃない」
炎駒が放置しているのだ。そこに私がしゃしゃり出ることはない。
「しかし……」
「順番が違うのだよ。私じゃなくて、炎駒と話をつけろと言っている。それができないのなら、呪いの元となるものを探して排除しろと言ったじゃない」
私はそう言って、桶を手に取りおっさんの脇を通り抜ける。今度は邪魔をしてこなかった。
だけど、座ったままの琅宋に袖を引っ張られて引き止められてしまった。
何故引き留めたのかと睨みつけるも、琅宋は前を向いたまま私とは視線が合わない。
「俺が謝罪することは許されない。それがどんな状況であってもだ」
皇帝だからとわかっている。私は別に謝罪して欲しいわけじゃない。
私のやるべきことを邪魔しなければそれでいい。
「だから、代わりに黎明の望みを叶える。何か欲しいものはあるか?」
「必要ない」
私ははっきと口にする。私は別に物が欲しいわけじゃない。
あればいいと思うものはあるけど、絶対に必要なものではないからだ。
「だったら、どうすれば黎明に許してもらえる?」
視線を合わそうとしない琅宋から問いかけられた。
「はぁ……」
私は大きくため息を吐き出す。
たぶん、琅宋は私がなぜ機嫌が悪いのか理解していない。
そもそも琅宋がここにいることがおかしいとならないのかということだ。
おっさんは琅宋が是といえば、そう動くしかない武官だ。小言はいうだろうが、強く諌めることはできないのだろう。
だから、私に構うことをしなければいいのだ。
「琅宋が私に会う理由はなに?私は琅宋からみれば遠縁というだけだ。こう、引き留める理由はないよね?」
別に私に何が起ころうが皇帝である琅宋には関係のないこと。
皇帝地位を脅かすほどの存在にはなり得ない。
「黎明ともっと話がしたいからだ」
「……子どもか!」
私は思わず突っ込んでしまった。
なに?話がしたいからって?
取り敢えず、私は琅宋の手を振り払って、視線が合わない琅宋の頬を持ってこちらに強引に向る。
「いっ!」
「話すときは相手を見て欲しいものだね」
さっきから視線が合わない琅宋に苛ついて、首を強引に向かせたのだった。




