第59話 逆ギレされた
「まぁ、結局のところ謎が深まったというところだね」
私は一通りの話を琅宋にした。
「まとまってなくて悪いね。私も本当に良くわかっていないんだよ」
説明したものの、わからないことだらけなのだ。
武官の政頼のこともそうだけど、先代の皇帝の死も、高美人のことも後宮の幽霊騒ぎもだ。
ああ、そうだ。琅宋にも聞いておきたい。
「琅宋は先代の皇帝の死をどう捉えている?」
「それはどういう意味だ?」
「ん? 風邪をこじらせたと聞いたけど、皇帝ならいい医者がついているよね?それに体力がない老人でもない。琅宋としては父親の死をどうとらえていたか聞いてみたい」
すると隣に座っている琅宋の表情がすっと消えた。
あれ? もしかして、私は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
芙蓉様のときもそうだったけど、血のつながった家族という雰囲気じゃない。
「侍医が言うには流行病だった。それだけだ」
「でもさぁ、それだとおかしいと霍良が言うんだよ。私たちは紫炎帝の末裔だ。そんな風邪ごときには命を奪われないと」
そもそも私は風邪を引いたことがないのでわからないのだけどね。
仙界で病気になることはなかったから。
「それは俺にはわからない」
琅宋は紫炎帝を否定している?
いや、幼い頃に母親から言われた言葉を信じている?
それにしても、頑なに否定している感じだ。
言葉の誘導……。
ん? 高美人が術師なら高皇妃も術師の可能性が出てくる。
すると、皇帝に接触できる術師としては、障害がなくなる。
しかし、今まで高皇妃が術師という情報は無かった。逆に倒れたという話があったほどだ。
「そう、それじゃ高皇妃はどんな人だった?」
「……それが何に関係する」
おや? 機嫌を損ねてしまったようだね。
すごくピリピリとした感じを琅宋から受ける。
家族のことを聞かれるのが嫌なのかな?
「私って、はっきり言って部外者なんだよ。その私に解決しろというのは、かなり無茶だと思うんだよね」
「だから、何に関係すると聞いている」
「関係あるかないかもわからないってこと。それはさぁ、あの殭屍をただの死体に戻せば、解決するかもしれない。でも、これだとまた同じことを繰り返すだけで、解決したとは言わないんだよ」
今の私は断片的にしか物事をみていないのだ。
20年前の事件と武官の政頼の屋敷の事件、そして後宮で再び起こった謎の奇病。
どこも繋がる要素がないのだ。
この20年で後宮に同じ人物がいるとしても皇帝が二代も変われば、ごく少数だろう。
術師として怪しいと思われる人物は既に他界している。たとえ、琅宋の母親が術師だったとしても、今後宮内で起こっていることには関わっていないことになる。
「武官の件と20年前の奇病件と、今起こっている後宮内の件は皇族が事件の中心だ。霍良にも姜昭儀のことを尋ねた。だから、私は琅宋に身近にいた人のことを聞いている。別に言いたくなければそれでいい」
私は琅宋の威圧に負けないように強い口調で言う。
ここで口論するつもりはない。だけど、言っておかないといけないことがある。
「だけど、私は芙蓉様に言われて動いている。そして解決できる方法を模索している。私の足を留めて、ただ戯言を言って、私の邪魔をするなら帰ればいい」
何故に皇帝がここで私とお茶をしているのか。それも戻ってくる私に合わせたようにだ。
琅宋が何を考えているのかさっぱり理解できない。その上に、質問したら逆ギレされた。
確かに皇族のことを知ろうとしたのが問題なのかもしれないけど、それは興味本位ではなく、どういう人物かを知りたかっただけだ。
私はこれ以上用はないと立ち上がる。
おっさんが亀を捕まえてくれるとか言っていたけど、どうでもいい。
「黎明。俺は……」
琅宋が手を掴んできたけど、それを私は振り払ったのだった。
いつもより少ないですが、体調が優れずここまでで…




