第53話 最初の面倒臭いが本音だろう
「やはり、こっちから調べるのがいいのかなぁ。でも先代の皇帝も武官も亡くなっているから、正確なところがわからないのは変わらない」
でもその半年後には皇帝は亡くなっている。呪いを回避したにも関わらず。
ん? そう言えば、武官の政頼が死んだ時期を知らないな。
「曖昧な情報しか知らされていないのだけど、武官が死んだのはいつ?」
「年明けすぐだな。それで家人も亡くなって……いや、年末にお気に入りの妓女が自殺していたな」
あれ? 妓女の花梨って人の方が先に自殺をしているんだ。
この話もチグハグなんだよね。
「なんかその政頼っていう人の噂と、王離や霍良の話と食い違い過ぎるんだよね」
「あ? 外面がいいっていうのは、よくある話だろう?」
確かにそうなのだけど、噂の方では生真面目でそれが評価されて将軍になったと。羽振りが良くなったので、妓女通いが始まったと。
だけど、王離と霍良の話では、人を使って物事をなして己の手柄にするタイプだと。
そんな人物が皇帝の盾になろうとするだろうか。別の人を行かせてあたかも自分が命じたのだと言うようなタイプだと思える。
もしくは政頼が二人いたとか?
生真面目な政頼と不真面目な政頼と……おかしなことを考えてしまった。
「妓女の死因は?」
「あー確か……入水だったか?」
ふーん。溺死ね。
そう言えば高美人も冬に溺死だったね。
……いやいや、そこは関係ないでしょう。
「はぁ、ここもなんだか繋がらないよね。皇帝は事件があった半年後に死んで、その武官は二年後?でも武官は皇帝の代わりに何らかの呪を受けたと。時間差がありすぎる」
本当なら半年後に武官が死んでもおかしくなかったはず。
ということは、代わりに受けた呪が命を奪うものではなかったということになる。
「何の呪を受けたのか今ではわからないからなぁ……あーそう言えば父が調整してくれたけど、琅宋に力の制御阻害の呪がかけられているよね。なぜ炎駒は放置しているのだろう?」
色々考えすぎて、どうでもいいことが頭を巡ってきた。
「皇帝って大変だよね。色々やっかみを受けて、はぁ……だいたい話が昔過ぎるんだよ。せめて琅宋の呪をなんとかしろなら、できなくもないけど」
「ちょっと待て! なんて言った!」
「ん? 琅宋の呪なら現在起こっていることだから、対処できるけど?」
殭屍の件は封印という手なら使えるけど、芙蓉様が望むのがそういうことではないので、困っているのだ。
「違うその前だ! 力の制御ってなんのだ!」
え?私が琅宋に仙桃を食べさせたのを知っているじゃない。
「紫炎帝の血の力だよ」
一応、私は屋敷内では制御していたけど、他の呪が邪魔で上手く調整できないものだと思っていた。
だけど、水鏡越しで父が調整してくれたとき、一つの呪を強制解除したんだよ。
だから中途半端は駄目だと父に言われてしまったのだ。未熟者だと。
「紫炎帝の力の暴走が、敵の狙いならどうだ?」
「え?ただ単に自爆して終わりだよ?」
自分の身体が力に適応できなくて、死ぬだけだ。
「違うそうじゃない。紫炎帝の妖魔化だ」
「えー霍良。それ信じているの?人は妖魔にならないよ」
「馬鹿!俺達はそう教えられているし、この力に妖魔の要素がないのはわかっている」
馬鹿って言われた。
だって紫炎帝の妖魔化という馬鹿なことを言ったのは霍良だよ?
「だが、他の奴らは違う。その昔、紫炎帝が暴れたというところは、今では巨大な泉になっている。嘘でも本当でも、事実そのような場所が残っているのなら、霍家の血の排除を狙っていてもおかしくはない」
確かに琅宋は母親からそう教えられており、仙桃を絶対に口にしなかったのだからね。
無理やり私が食べさせたけど。
「取り敢えず、瑞曉に戻ったら高家に行って、そのあと皇帝の呪を全部解け」
「……面倒臭い。それに依頼には含まれていないし、ただの道士が皇帝に近づくなんておこがましいよね?」
「おい、後付で色々言っているが、最初の面倒臭いが本音だろう」
「てへ?」
私はへろりと笑う。
だって琅宋って絶対に影武者がいると思うんだよ。そっちもと言われたら面倒だよね。
霍良が堅物という皇帝と、暇人している琅宋とがだ。
ああ、そうか政頼も人によって態度を変えていたわけか。だからおかしな話になってくる。
先代皇帝を守った武官。
武官が通い詰めた妓女。
それから、永寿宮にいる謎の殭屍。
溺死した高美人は最後に助けを求めていた。
謎の幽霊事件で起こった皇子と妃たちの死。
全てがバラバラな事件だけど、術師が関わっていることは共通点だ。
恐らく何かが足りないのだろう。
それが私にはまだわからなかった。
読んでいただきましてありがとうございます。
月曜日お休みしまして、来週金曜日に投稿します。
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