第50話 先代皇帝の死の矛盾
「まずは琅宋の母親を、何故呪い殺そうとしたのかだね。同じ高家出身であれば、味方のはず」
なんだか高級そうな店に連れてこられて個室でご飯を食べている。この包子うま!
ふかふかの饅頭も好きだけど、お肉を包んだ包子も好きだ。
「あー、たぶんそれは霍家が絡んでいるかもしれん」
え? ここでも霍家が?
怖いよ。霍家。
「霍家としては、そのまま琅景様に皇帝の座について欲しかったからな。対策はしていたはずだ」
ああ、後宮の中心にいた芙蓉様は、ご自分の息子を守るために対策をしていたということ。
……え? もしかして術の身代わりを妃の高皇妃、当時は皇子妃か、にしていたと。
それって本人の了承を得ていた?
芙蓉様の嫌いようからいけば、琅宋にいらないことを吹き込んだ高皇太子妃を排除したかったのかもしれない。
後宮って怖いところだ。
あ、ここではっきりさせておきたいことがある。
「その高皇妃はその呪いで死んだの?」
「ん? いや5年前に文州に向かっている途中で、事故に遭って亡くなっている」
普通に生きていたじゃない。
じゃ、あの琅宋への子供に言い聞かせるような話は何だったわけ? 子供へ刷り込み?
てっきり幼い頃に死んでいると思っていたよ。
いや、よく考えれば高皇妃と呼ばれていたのなら、その地位についていたということだ。だから先代の皇帝がその地位についた時に皇妃だったと考えるべきだった。
しかも事故死。皇妃って外に行くことがあるんだ。
ふーん。でもまぁ、それで3年前に政頼という武人が、先代皇帝を助けて褒美をもらってウハウハになると。
確か、私が首都の瑞曉に来てその後に皇帝が崩御したと、喪に服すようにという御触れが出回った。
ということは、その武人が皇帝も守っても数ヶ月しか延命できなかったという結果になるのだけど。
「先代の皇帝の死因はなに?」
「ああ、風邪をこじらて早々に儚くなられたとお祖父様から聞いている」
「ふーん……ん? その二十年前に起こったのも熱を出して1ヶ月後に死んだと言っていたよね?」
私の言葉に、霍良は一瞬ハッとした表情を浮かべるも、直ぐに渋い表情になる。
「いや、考え過ぎだろう。そこを繋げる意味があるのか?」
「え? 霍良が知らないわけないよね? 政頼という武人の屋敷が呪われていたという話」
「知っているが……まさか、そんなことが? しかし、我々は多少なりとも呪術に対抗できる力がある。それは先代皇帝も同じだったはず」
紫炎帝の血の話だよね。
でも個人差があるから一概に大丈夫とは言えない。
でも琅宋は炎駒が守っているから、気に入られれば加護という力を得ることができる。
そう思うと、おかしな話だ。
風邪ぐらいであれば、皇帝の侍医がつきっきりで治すだろう。
芙蓉様の感じからすれば、御子息に仙桃を与えているだろう。だから、紫炎帝の血の力を受け入れる身体が作られているはず。呪術で呪われても普通の人より抵抗できる。
なんだろう? この矛盾は?
「考えられるのは血の封印かな?」
二段階方式で術をかけられれば、この矛盾は解消される。
「それに琅宋も呪われているんだよね」
「おい、何故それを知っていて放置している」
「関わると面倒くさいし、炎駒が琅宋を気に入っているから、私が手を出さなくてもいいかなって」
しかし、先代の皇帝の死に関しては流れとしては問題なくなった。
その後にウハウハになった政頼が、地獄の底に叩き落とされることになると。
あの、蠱毒の仕込みようからいけば、相当恨まれている感じがする。
それほど先代皇帝を守ったことが腹立たしかったということだ。
そこで何かを仕込んでいたものの、失敗してしまったと。
ただの皇帝の死に関しての報復にしては、あの蠱毒の仕込みは異常だったと思える。
何を目論んでいたのか。
1年2年の仕込みが無駄になったというより、数年かけて仕込んだものを失ってしまったというぐらいの恨みようだった。
「面倒という一言で片付けるなよ。これはお祖父様に報告しておくからな」
「いいよ。次は幽霊騒ぎの件にいこう」
これは高美人を中心に起こった出来事と考えていいだろう。本人は関与を否定していたらしいけど、術を宴で披露しては否定は難しい。
ここで自分を術師だと宣言してしまったのだから。
「最初は女官の幽霊を見たという皇子から始まった。そう言えば、場所は言われなかったけど、皇子から母親に術が移行するものなのか。ひと通り術式を習った私としては、あり得ないのだけど白はどう思う」
私は話に混じらず、無言で包子を食べている白い猫に聞いてみる。
私が使う術と白が使う術は微妙に違う。
だから、人に伝染する術があると私が知らないだけなのかもしれなかった。




