第49話 主観でいいと言ったじゃない
「そもそも子供を身ごもったというのも本当か怪しいものです」
「そういう、事実かどうかはいいから、殺したいほどのことがあったのかどうかだ」
子どものことは芙蓉様もご存知のことだったので、本当ではなかったのだろうか。妃の懐妊となると、お偉い医者が確認をとるだろうしね。
「何を言っているのです。それを話したではないですか。皇子たちと妃を殺したのは高耀に決まっているではないですか。なのに何も知らないと美人の地位に居続けたのです」
普通は簡単にはボロは出さないよね。でも、呪で皇子たちを殺したのであれば、何処かに痕跡が残っていそうなのだけど。
上手く隠していたということなのだろうか。
「証拠が無いからと美人の地位に居続けるなど、いつ私が殺されるのかビクビクしながら過ごすなど……」
ああ、そこであの殺意ってことか。殺される前に殺せという話だね。
なかなか、後宮というところは怖いね。
「ああ、だいたいわかった。それと高美人は宴の時に術を披露したそうだが、他にも術を使っていたとかあるのか?」
「それは白い蝶のことですか? ですから人を呪い殺していたと話しているのです。なぜ、何度も同じことを……」
「貴重な時間をもらって、すまなかった。これは今回の礼だ」
突然話を切り上げた霍良は後ろを振り返った。するとお付の男性が円卓の上に布地やら装飾された綺麗な箱やらを並べている。
恐らく価値のあるものなのだろう。
許夫人とお付の老夫人の目が輝いて見える。
「見送りはいい。おい、行くぞ」
霍良は私の腕を掴んで、さくさくと許夫人の屋敷を出ていった。
なんだか、イライラしている感が隣からビシバシと感じる。
「ちっ!」
舌打ち! え? 私は何も悪いことはしていないよ。
お腹が空いたと思っているけど、口にはまだ出していないよ。
お腹の虫は再び声を上げ始めたけどね。
「だから、俺は他に怪しいことはなかったのかと聞いたんだよ! なのに不確かなことばかり言って」
「いや、それは霍良が主観でいいと言ったからだよね」
「予想で物事をいうのは違うだろう」
主観だから別にいいのではないのかなぁ。
それよりもお腹が空いた。
太陽が中天から傾き始めたので、お昼は過ぎていると思われる。
「それにおかしいだろう。黎明を見ていたらわかるじゃないか。どうでもいいことに術を使っているから、他にどんな術を使っていたのか、普通は聞くだろうが!」
いや、私に当たらないでよ。それに私はそんなに術は多様していないよ。
「え? 霍良の前でそんなに術を使ったかなぁ?」
そもそも霍良に会うのは霍将軍が屋敷に遊びに来るようにと、兵を引き連れてやってくるときぐらいだ。
だから、滅多にない。
「あ? 暑いから部屋を涼しくするとか言って術をつかっていたよな。普通は氷柱でも用意してくれというところだろう?」
確かに夏は暑い。夏に氷柱だなんて、誰が頼むのか。
冬に作った氷を夏まで置いておかないといけないのに、そんな贅沢できる家なんて限られてくる。
「庭がさみしいからと真冬に花を咲かせるとか意味がわからん」
え? 年がら年中、花が咲いていて普通だよね?
「俺はそういう無駄に術を使うことが無かったのかと聞いたんだよ!」
なんだか、私が術を多用する馬鹿みたいに言われている?
「これだと、白い蝶を出すしかできないみたいじゃないか」
「でもそれが、高美人がいたという噂の元になったんだよね」
そもそもが、高美人が死んだあとにこの近くの町で見かけたというのが、幽霊騒ぎの発端だったんだよね。
あれ? 皇子たちの死の話は霍将軍からでてこなかったな。
いや皇太子の妃が倒れたというところに入っていたのか。
うーん。一度きちんとまとめないとわからない。
「霍良。お腹減ったから、ご飯が食べたい」
「お前、腹が減ったしか言わないな」
「いや、それ以外にも言っているよ。あと、ちょっとまとめたい。話がバラバラで全く繋がっていないからね」
そう、全てが点なのだ。そこに繋がりが見いだせない。
肝心なことが欠けている感じがする。
「確かに、結局石棺の中身はなく、墓荒らしに荒らされていたという感じだったからな」
石棺の中身はいつ無くなったのかという問題もあるけど、逆に描かれた八卦も、あったという龍脈もわからないことだらけだ。
「はぁ、昼飯を食って戻るか」
やっとお昼ご飯にありつけるらしい。飴だけで、私のお腹の虫を黙らせられると思わないで欲しい。
しかし、乗り心地の悪い馬車で王都から半日でこれるのは近いものだ。
夜には王都の貸し家に戻れるのだからね。
ん? 近い。……近い……近い血族……高家はなぜ三人も妃を後宮に送ったのだろう?




