第48話 幽霊騒ぎが過去にも起こっている!
「最初は私と同じく高八子の小間使いとして、高耀は後宮に入ってきました」
……高家……後宮に妃を送り込み過ぎじゃない?
いや、芙蓉様と同じ年ぐらいの妃を後宮に送ったというべきか。それに使用人として歳若い高……耀だっけ?が後宮に入ったということ。
皇帝がもし高八子に見切りをつけても、次のコマを用意していたと。なかなかの策士だね。
「それなりに交流があり、良く話すようになりましたね。その中で時々おかしなことを言い出すことがありました」
ああ、確か許夫人も誰かの妃の使用人として、後宮に入った者だと芙蓉様がおっしゃっていた。だから、話す機会も多かったということなんだね。
まぁ、私には後宮の事情はよくわからないけど。
「高家を皇帝の地位に戻すのが自分の役目だと。私はてっきり皇帝の子を生みたいという意味だと思っていたのです」
普通はそう捉えられるよね。
皇子を産んで皇帝の地位につけたい。それなら道理が通っている。が、その時点では琅宋の父親が皇太子としていたと思うのだけど。
これは先代の皇帝の死に関わってくる話か。
「あるとき高八子が病に倒れてあっけなく亡くなったのです。私はきっと後宮を去ることになるであろう高耀に、気を落とさないようにと言うつもりで声をかけたのです」
仕える妃がいなくなれば、その妃に仕えてきた使用人たちは後宮を去ることになるのは当たり前だよね。
そう言えば、後宮で仕えていたというのが、嫁の行き先への売りだと退魔師協会のババァが言っていたことがある。
私には関係ないので右から左に聞き流したけどね。
「あの女。何を言ったと思います?」
あの女呼ばわりしている!
「やっと死んでくれたと言ったのですよ。それから高家が動いたのか高五官の地位についてから、後宮内で奇妙なことが起き出したのです。幽霊騒ぎです」
高五官の地位がどれぐらいなのかは知らないけど、霍将軍の話の六妃の中になかったから下のほうなのだろう。
それで、幽霊騒ぎとは今起こっているようなことなのかなぁ。
「最初は昇紘皇子でした。知らない女官の幽霊を見たと言った次の日に高熱を出して一ヶ月後に亡くなったのです」
……今と同じじゃない?
「そして母親である妃も体調を崩してなくなったのです。最初は病がうつったのかと思われていたのですが、それが続くと流石に怪しいとやっと皇帝が動いてくださったのです。その時には皇子が三人しか残っていませんでした」
皇帝! 動くのが遅すぎ!
いや、感染病だと思いこんでいて、そちらの対策をしていて後手に回ってしまったのか。
「ですが、結局なにもわからず、高耀が美人の地位につくまでになったのです。その頃には恐らく皇帝はおかしくなっていたのだと思います。霍皇妃が政治を取り仕切り、皇帝が後宮内に引きこもるようになっていたのですから」
「皇帝がおかしいとは?」
「あ……こういう話をするといけないのでしたね。忘れてください」
「いや、ここには俺達しかいない。話してくれ」
もしかして、芙蓉様が言えない話の中に、先々代の皇帝の話も入っていたからなのだろうか。
確かに、皇帝は絶対的な存在であるので、そこに不穏分子を抱かせる要因は排除すべきだろう。
「これは私の個人的な意見ですが、操られていたのではないのでしょうか。だから、霍皇妃が私を婕妤の地位につけたのだと思っています。私は霍家の遠縁にあたりますので」
「何を根拠に操られていたと?」
「そうですね。ご自身の意志がないようにお見受けできました。それにあんな見た目だけの高耀に手を出すなんてありえません」
あ、うん。たぶん、最後の部分は完全に私怨が入っているような気がする。
しかし、今の話だとただ単に皇帝の子を生みたい妃の暴走と、捉えられなくもない。
「そのあとですね。霍家が動いたのは」
ああ、霍将軍が後宮内に人を送り込んだという話だね。
「なにやら落書きのような札が後宮内に貼られていったのです。その御蔭か幽霊の噂がピタリと止みました。そして謎の奇病を発症する者もいなくなったのです。いつの間にかその札は消えていましたが」
ん? そういえば、母からこの文字を写すようにと大量に紙を渡された記憶がある。
あれか!
流石に十歳の私は途中で父に泣きついたよ。
腕がプルプルすると。
あれ、時間が経つと貼ったところに同化して解除できなくなる恐ろしい札だったはず。
そうか……あ? 二十年も経つと効力が切れた可能性がある。
それで今更なことが起こっていると!
いや、この判断はまだ早い。最後まで話を聞いてから判断しよう。




