第27話 年上ですから
「それに、その霍将軍の孫が姜昭儀だ。多少のことは握りつぶせるぞ」
……シスコンジジイの孫が後宮の妃に? 霍芙蓉様の孫が琅宋の?
「霍家のやりたい放題!」
「声が大きい。霍道士」
そうか。霍家としては権力を強めたいということね。もしかして、紫焔帝時代の栄光を再びとか考えているとか?
それ破滅の未来しか見えない。
「まぁ、おれ……余は姜昭儀から嫌われているがな」
……箱に虫ギュウギュウ事件。あの時は他にも子供はいた。小さな女の子たちが。
霍家の外縁の子だろうけど、あり得る。
「トラウマ共同体!」
「黎明。なんだそれ」
ヒーヒーと笑っている白に突っ込まれてしまった。そして、周りから怪しい雰囲気が漂い始めてしまう。
しまった! 皇帝と仲良く話していたら怪しすぎるじゃない!
私は取り繕うべく頭を下げて、両手を袖の中で合わせて上にあげる。
「全力で姜昭儀様を治してみせましょう」
シスコンジジイの孫というのであれば、手はある。紫焔帝の血筋なのだから。
「そのためには人払いを。麗香様以外の退室をお願いしたいのです」
麗香さんは私の案内人兼付き人なので、私の側から離れることはないよね。あとで芙蓉様に報告する役目もあると思うし。
「なりませぬ! どこの馬の骨とも知れぬ道士に、姜昭儀様の治療を任せるなど許しません!」
うぉ! ボンキュッボンの体をこれ見よがしに見せつけるように着こなしている汉服の女官が……あ、姜昭儀様の女官が私の方にやってきました。
そうだよね。突然現れた私を信用できるものなんてないよね。
すると麗香さんが私と女官の間に割って入ってきます。
「それは太皇太后様に意見を言う事と、同意義と捉えますが?」
女官がその言葉に一歩下がった。しかし、不服なのだろう麗香さんに向かって口を開きます。
「今までこのような若い娘の道士がいたなど、聞いたことはありません。これは姜昭儀様が用無しだと捉えられます。私たちは姜昭儀様をお守りする義務があるのです」
あ、これはそこの寝込んでいる霍家の外縁の娘を排除。
そして、芙蓉様の意が絡んだ娘を道士として潜入させ、皇帝の嫁にしようと画策しているように思われている!
ないわー。だから、権力にまみれたところに来たくなかったのだよ。
帰りたいよー。
「あ、私は皇帝陛下より年上なので」
「え?」
「は?」
「うそ!」
「年齢詐欺!」
仙界と外界は時間の流れが違うので、嘘といえる。
だけど、私が琅宋と出会ったときは、私の方が年上だったのは本当だからね。
「仙界に長い間いたので、見た目は年下に見えますが」
「天仙様!」
「天仙様が姜昭儀様の為に降りてこられたというの!」
え? 私は仙人ではないよ。
まぁ、嘘は言ってはいないけどね。
勝手に勘違いされたほうが、やりやすそうだから黙っておくけど。
「太皇太后が霍道士に依頼したことは、霍将軍の耳にも入っていることだろう」
「うぇ?」
「ならば、これは霍将軍の意でもあるということだ。お前たちが口を出すことではない。下がれ」
え? シスコンジジイの耳に入っているってどういうこと?
三年前シスコンジジイに言ったはずだ。
そう、私が借りているボロ長屋の前に私兵と共にやってきたシスコンジジイ。その護衛の多さに苛立ちながら私は言ったのだ。
私は仙人になるための修行に来たのだから関わるなと。
そういえば、王離が軍を引き連れてやってきたってことは、まさかシスコンジジイの息が掛かった軍だったりするとか?
いや、まさかねぇ。
私が何処に住んでいるかなんて、退魔師協会のババアに聞けばすぐわかること。
そして皇帝の命令に従って、麗香さん以外の人がこの部屋から出ていってしまった。が、何故に琅宋がまだいるんだよ。
麗香さん以外ということは、皇帝の琅宋も入っているってことだよ。
「皇帝陛下も護衛の方々と共に外へ、どうぞ」
私は琅宋も外に出るように言う。たぶん宦官と思われる男性が背後にいたから、護衛だと思うのだけど。
皇帝なら護衛と共に出ていってよね。
「余はここに残って見届けよう」
「見届人は、麗香様お一人で十分かと」
すると琅宋は、私に更に近づいてきて、右手を掴んできた。
え? 何?
「この前のように、やることを終えたらさっさと居なくなるつもりだろう」
あ、もしかして猫鬼の後始末を任せたことを怒っているのかな?
いや、あれは仕方がない。
何日皇帝を建物内に閉じ込めたのだと詰め寄られても、私じゃないよとしか答えられなかったもの。
そもそも、皇帝自身が首を突っ込んでくるのがおかしいのだ。
私、悪くない。




