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唯一の猫
ひとまず、香川邸からの退散を決め込んだ二人はダットサンまで戻ってきた。
「何か異常はないか?」
ミツオはエリーに聞いた。車に爆発物や、GPSが取り付けられていませんか?という意味だ。
「はい大丈夫です」
「そうか」
エリーの得意技は、危険物を発見することだ。絶対の信頼を置いているミツオは安心して運転席のドアを開けた。
ミツオの足と足の間を何かが駆け抜けた。ミツオの口から声にならない声がもれる。
「なんだ、なんか入ったぞ」
ミツオは身を乗り出して、後部座席を確認する。シートにちょこんと動物が座っていた。三毛猫だ。片目はエメラルドグリーンだった。
「目が緑ですね」
助手席から見ていたエリーが言った。
「あんた達、はやく車を出しなさいよ、あいつらが追ってくるわよ」
「しゃべった」
二人はひっくり返りそうになった。「猫だってしゃべるわよ。ただし、私は特別だけどね。話はあと、早く移動して」