ドクター山岡との確執
「なんだか、へんな感じですね」
ミツオは差し出された封筒を見ずにドクター山岡を見た。
「アップデートという表現を用いるという事は、ドクター、あなたの専門はメカ置換の分野ですね」
出した封筒の行方が落ち着かないドクター山岡はミツオの世間話に仕方なく付き合う。
「そうです。香川氏は近年、大病をなされて、体の大部分をメカに置き換えられました」
「そうですか。いずれにしても依頼された本人にもう一度お会いしてから、今後のお話を考えさせていただきます。今日はいったん帰ります」
ミツオはきびすを返す。
山岡はミツオのエリーの背中を憎々しげににらみつけるしかなかったが、何かの決断をしたように、ポケットから小さな端末を出し、指示を出した。
「どうするんですか?」
エリーはミツオの顔をのぞき込む。「ここの連中は俺を排除しようとしている。気に食わない」
「でも、依頼内容が分からないのでしょう」
「そうなんだ。でも、三毛猫のホログラム映像を見た記憶はある。その三毛猫は片目だけグリーンだったような……猫との結婚を真剣に考えているみたいな事を言っていた。まさかそれが依頼なのか」
そのとき、ミツオは前方に二つの影が待ち構えていることに気がついた。