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第5部:光と闇の最終決戦

第17章:蝕の日、地下迷宮へ


運命の蝕の日。空は禍々しい暗赤色に染まり、大地は不気味な静寂と、時折響く地鳴りに包まれていた。王都の民が固唾を飲んで見守る中、俺、レオン・フォン・アルクスは、愛する婚約者であり最強のパートナーであるイザベラと共に、王宮地下の古い礼拝堂に立っていた。俺たちの背後には、選りすぐりの王宮騎士団、聖なる力を纏った聖騎士団、そして大司教が、固い決意を秘めた表情で整列している。総勢およそ百名。王国の、いや、世界の命運を賭けた主力部隊だ。


俺の腰には、決戦を予感するかのように淡い光を放ち続ける「光の剣」。イザベラの手には、対闇魔術用の秘術が記された古文書の写しと、魔力を増幅させる杖。大司教は聖印を握りしめ、静かに祈りを捧げている。皆の貢献度は高く、士気も最高潮に達しているが、同時に未知の脅威への緊張感も漂っていた。


「準備はいいか?」

俺の問いかけに、全員が力強く頷き返す。


「開門!」

俺の号令一下、礼拝堂の祭壇奥に隠されていた重厚な石の扉が、ゴゴゴ…という音と共にゆっくりと開かれた。その先には、奈落へと続くかのような漆黒の闇が広がっている。ひんやりとしたカビ臭い空気が、まるで死者の吐息のように流れ出し、闇の奥からは、これまで感じたことのないほど濃密で邪悪な気配…負のオーラが渦巻いているのが、スキルを使わずとも感じられた。


「怯むな! 光は必ず闇を打ち破る! 我々の貢献が未来を切り開く!」

俺は、自分自身に、そして仲間たちに言い聞かせるように叫び、光の剣を抜き放った。剣は、俺の決意に応えるかのように白銀の輝きを増し、闇の中へと続く道を照らし出した。


「行くぞ! 遅れるな!」


俺とイザベラを先頭に、主力部隊は固い決意を胸に、古代遺跡へと続く暗闇の中へと足を踏み入れた。ここから先は、神話の時代の遺物であり、禁忌の領域。どんな罠が、どんなおぞましい存在が待ち受けているのか、全く予想がつかない。だが、俺たちには守るべき未来がある。そして、隣には誰よりも信頼できる愛する人がいる。それだけで、前に進む勇気が湧いてきた。


第18章:闇の罠とアンデッドの軍勢


地下遺跡への通路は、予想以上に深く、そして複雑に入り組んでいた。まるで迷宮だ。壁には、理解不能な古代文字や、人を贄とする儀式を描いたような禍々しいレリーフがびっしりと刻まれており、見る者の精神を蝕もうとしてくる。空気は重く淀み、邪悪な気配が常に肌にまとわりついてくるようだ。


【貢献度可視化】スキルは、敵意の直接的な感知にはあまり役立たなかった。強い闇のオーラが、スキルの精度を乱しているのかもしれない。しかし、俺は諦めずにスキルに意識を集中し続けた。敵意ではなく、微かに残る「善意の残留思念」…つまり、かつてこの遺跡を封印した者たちの「想い」を示すプラスの貢献度を探ることで、進むべき正しい道を見つけ出そうとしたのだ。


「こっちだ! この通路から、微かだが温かい気配を感じる!」

俺は、スキルが示す微かな光を頼りに、仲間たちを導いていく。


迷宮を進む途中、やはり『夜なる結社』が仕掛けたであろう、陰湿な罠が俺たちを襲った。物理的な落とし穴や毒矢だけでなく、精神に作用する幻影を見せる霧、味方同士を疑心暗鬼にさせる呪詛の声、そして突然現れる闇の魔力で動くガーゴイル像など…。


「幻影に惑わされるな! 集中しろ!」

「《ディスペル・マジック》! 呪いを打ち破れ!」

「聖騎士団、前方のガーゴイルを浄化せよ!」


俺のスキルによる危険察知(罠から放たれる微弱なマイナス貢献度を感知)、イザベラの的確な光魔法による浄化と防御、大司教の聖なる祈り、そして騎士たちの勇気ある連携によって、俺たちは多くの罠を切り抜け、大きな損害を出すことなく進んでいくことができた。皆の貢献度が、この困難な状況下でさらに高まっていくのが分かった。信頼と団結が、俺たちの力となっていた。


そして、ついに最初の広間へとたどり着いた。だが、そこで俺たちを待ち受けていたのは、おびただしい数のアンデッドの大軍だった! 錆びついた鎧を纏った骸骨兵士、腐敗臭を漂わせるゾンビ、そして空中を飛び交う亡霊レイス…。彼らは虚ろな赤い瞳で俺たちを睨みつけ、一斉に襲いかかってきた! その数、数百は下らないだろう。彼らの貢献度は、当然ながら強烈なマイナスを示している。


「聖騎士団、浄化の陣を形成! アンデッドの侵攻を食い止めよ!」

「騎士団、前衛を固め、数を減らせ! 密集するな、囲まれるぞ!」

大司教と騎士団長が、即座に指示を飛ばす。聖騎士たちが円陣を組み、聖なる光の結界を展開してアンデッドの突撃を防ぐ。騎士たちはその結界を盾に、槍や剣でアンデッドを打ち砕いていく。


俺も光の剣を振るい、最前線で戦った。光の剣は、アンデッドに対して絶大な効果を発揮した。剣の光に触れただけで、アンデッドは苦悶の叫びを上げて聖なる炎に焼かれ、塵と化していく。まるで、俺自身の内に宿る光の力が、剣を通して解放されているかのようだ。剣を振るうたびに、疲労よりもむしろ力が漲ってくる感覚があった。


しかし、敵の数はあまりにも多く、倒しても倒しても、広間の奥にある闇の裂け目のような場所から次々と湧き出してくる。キリがない。このままでは、いずれ結界が破られ、俺たちは消耗しきってしまうだろう。


「キリがない…! あの闇の裂け目を塞がなければ!」

騎士団長が焦りの声を上げる。


「私が道を切り開きます! 皆さん、援護を!」

イザベラが前に進み出て、杖を天に掲げた。彼女の体から眩い光が放たれ、その魔力はかつてないほどに高まっている。

「集え、聖なる光よ! 邪悪なる根源を打ち砕け! 《ホーリー・ブレイク》!!」

彼女の詠唱と共に、極太の光の奔流が放たれた! それは、アンデッドの群れを薙ぎ払い、一直線に奥の闇の裂け目へと突き進み、直撃した!

轟音と共に闇の裂け目が消滅し、アンデッドの出現が完全に止まった!


「今のうちに先を急ぐぞ!」

俺たちは、イザベラが切り開いた道を駆け抜け、アンデッドの広間を突破した。彼女の消耗も激しいはずだが、その瞳には強い決意が宿っていた。


第19章:結社の幹部と魔法戦


アンデッドの広間を抜けた先には、さらに複雑な通路と、より強力な罠、そして『夜なる結社』の魔術師たちが待ち構えていた。彼らは、闇の魔術を巧みに操り、俺たちの行く手を阻もうとする。


精神を蝕む呪詛、動きを封じ込める闇の鎖、そして強力な破壊力を持つ黒い炎や氷の魔法…。聖騎士たちの聖なる力とイザベラの光魔法がなければ、俺たちはとっくに全滅していただろう。


俺はスキルを使い、敵の魔術師たちの貢献度(敵意度)や、彼らが集中している詠唱のターゲットなどを把握し、仲間たちに的確な指示を出すことに専念した。

「右翼の魔術師【-85】が強力な呪詛を準備中! 聖騎士、詠唱阻止を!」

「イザベラ、後方の騎士たちが闇の鎖に捕らわれている! 光魔法で解放を!」

「騎士団、魔術師の詠唱の隙を突け! 接近戦に持ち込めば勝機はある!」


俺の指示と仲間たちの奮闘により、俺たちは結社の魔術師たちを一人、また一人と打ち倒していった。しかし、敵もさるもの。彼らは自らの命を犠牲にするような自爆魔法や、仲間を盾にするような非道な戦術も躊躇なく使ってくるため、こちらの犠牲も増えていった。多くの勇敢な騎士が倒れ、聖騎士たちも消耗しきっていた。


そして、ついに俺たちは、遺跡の最深部へと続くと思われる、巨大な黒曜石の扉の前にたどり着いた。扉からは、これまで以上に強大な闇の気と、複数の人物による禍々しい詠唱の声が漏れ聞こえてくる。儀式は、まさにクライマックスを迎えようとしているに違いない。


しかし、その扉の前には、五人の黒装束の人物が立ち塞がっていた。彼らは、これまでの魔術師たちとは明らかに格が違う。その身から放たれる闇のオーラは濃密で、その瞳には冷酷な知性と狂気が宿っている。彼らこそが、『夜なる結社』の最高幹部なのだろう。貢献度は、全員が【-90】以上を示している。


「よくぞここまで来た、光の末裔どもよ」

中央に立つ、リーダー格らしき男が、嘲るように言った。「だが、お前たちの旅はここで終わりだ。我らが王の復活を、その目で見ることなく、ここで朽ち果てるがいい」


五人の幹部は、一斉に闇の魔術の詠唱を開始した! 五つの異なる属性の闇の力が渦を巻き、融合し、巨大な複合魔術となって俺たちに襲いかかる!


「これは…! 防ぎきれない!」

大司教が叫ぶ。聖騎士たちの結界も、もはや限界に近い。


「やるしかない…!」

俺は光の剣を構え、イザベラと視線を交わした。

「レオン、信じています!」


俺とイザベラは、最後の力を振り絞り、同時に最大級の攻撃を放った! 俺は光の剣に仲間たちの想いを乗せ、イザベラは全ての魔力を込めた光魔法を!


光と闇の激突! 凄まじいエネルギーがぶつかり合い、地下神殿全体が激しく揺れる!


第20章:仮面の男、最後の執念


激しい光と闇の応酬の末、俺たちの攻撃は、かろうじて結社の幹部たちの複合魔術を打ち破った! しかし、その代償は大きく、俺もイザベラも、そして生き残った仲間たちも、ほぼ満身創痍の状態だった。幹部たちも深手を負ったようだが、まだ息はある。


「おのれ…光の小僧どもめ…!」

リーダー格の男が、憎悪に満ちた目で俺たちを睨みつける。


だが、彼らが追撃の魔法を放つ前に、黒曜石の扉が内側から開き、中から一体の存在が現れた。

黒いマントを羽織り、冷たい金属の仮面をつけた男…アルベルト叔父だ。しかし、その姿は以前とは異なっていた。全身から立ち上る闇のオーラはさらに濃密になり、その力は結社の幹部たちすら凌駕しているように見える。彼の貢献度は【-???】。もはや完全に人ならざる者へと変貌を遂げている。


「…役立たずどもめ。下がっていろ」

仮面の男は、結社の幹部たちを一瞥し、冷たく言い放った。幹部たちは、明らかに彼を恐れている様子で、黙って道を開けた。


「レオン、そしてヴァイスハルトの小娘よ」

仮面の男が、歪んだ声で言った。「貴様らの存在が、我が計画の最後の障害だ。ここで、完全に消え去ってもらう」

彼の背後では、祭壇上の水晶が禍々しい光を放ち、中の災厄の王の影が、今にも実体化しそうになっている!


「叔父上! あなたは利用されているだけだ! 目を覚ましてください!」俺は最後の説得を試みた。

「黙れ、小僧!」仮面の男は、俺の言葉を嘲笑うかのように一蹴した。「利用だと? 違うな! 我は、この力を自ら望み、手に入れたのだ! 災厄の王の力の一部を取り込み、我自身が神に等しい存在となる! 貴様ら偽りの光と秩序を破壊し、真の混沌と自由をこの世界にもたらすのだ! 我こそが、新たなる世界の支配者となる!」

彼は両手を広げ、狂気に満ちた高笑いを響かせた。その目的は、もはや単なる王位簒奪ではなく、世界そのものの破壊と再創造にあるようだ。


もはや対話は不可能だ。残された道は、戦いのみ。

「イザベラ、最後の戦いだ!」

「はい、レオン!」


俺とイザベラは、最後の力を振り絞り、仮面の男に立ち向かう。だが、闇の力を完全に取り込んだ(あるいは取り込まれた)彼の力は、想像を絶するものだった。光の剣の攻撃も、イザベラの光魔法も、彼の纏う闇のオーラによって威力を削がれ、決定的なダメージを与えられない。逆に、彼の放つ闇の斬撃や魔法は、俺たちを容赦なく打ち据える。


「無駄だ! 貴様らでは、我には勝てん!」

仮面の男が、俺にとどめを刺そうと、黒い剣を振り上げた!


(ここまでなのか…!? イザベラ…すまない…)


俺が死を覚悟した、その瞬間。

光の剣が、再び、これまで以上の強い輝きを放った! それは、俺自身の意志だけでなく、背後で傷つきながらも祈りを捧げる仲間たちの想い、そして、この状況を地上で見守るであろう国王陛下や宰相、民衆たちの「希望」に応えたかのように! スキルが示す【+??】の数値が、激しく脈動し、温かい力が俺の全身に流れ込んでくる!


「なっ…!? その光は…忌々しい!」

仮面の男が、その眩い光に怯んだ。


俺はその隙を見逃さなかった。

「イザベラ! 今だ!」

「はい!」

アイコンタクトだけで、互いの意図を理解する。


俺は強化された光の剣で、仮面の男の黒い剣を受け止め、弾き返す! 同時に、イザベラが彼の背後に回り込み、最後の魔力を込めた光魔法を放った!

「我が光よ、彼の者を縛めよ! 《ホーリー・バインド・イグニッション》!」

眩い光の鎖が男の動きを封じ、さらに鎖自体が聖なる炎となって彼の闇の鎧を焼き尽くす!


「ぐおおおおっ! 小娘がぁ!」

仮面の男は闇の力で炎を振り払おうとするが、光の剣の輝きとイザベラの捨て身の魔法は、彼の抵抗を許さない。


「今だ、レオン!」


俺は、光り輝く剣を構え、一直線に仮面の男に向かって突き進んだ。剣先には、仲間たちの想い、イザベラの愛、そして俺自身の、この国と未来を守りたいという強い願いが込められている。


「これで、終わりだ! 叔父上!」


俺の渾身の一突きは、仮面の男の胸…その闇のオーラの中心を貫いた!

「ぐ…あ…!?」


仮面の男の動きが止まる。貫かれた箇所から、闇のオーラが霧のように霧散していく。金属の仮面に亀裂が入り、その下から現れたのは、憎悪と狂気に歪んでいたはずの、しかし今はどこか穏やかさを取り戻したような、アルベルト叔父の素顔だった。


「…そうか…これが…光か…眩しいな…レオン…これで…ようやく…眠れる…」

彼は、まるで長い悪夢から覚めたかのように呟き、その体はゆっくりと崩れ落ち、光の粒子となって消えていった。最期の瞬間、彼の貢献度(敵意度)は【-???】から【±0】へと変化していた。憎しみの呪縛から、ようやく解放されたのかもしれない。俺は、複雑な想いを胸に、彼を見送った。


アルベルト叔父は倒した。儀式を行っていた結社の幹部たちも、主力を失い、聖騎士たちによって制圧されつつあった。


(やった…! これで、終わったんだ…!)


俺たちが安堵しかけた、その時だった。

ゴゴゴゴゴ…!

祭壇上の、砕け散ったはずの水晶の破片が、禍々しい紫黒の光を放ち始めた! そして、その光は遺跡全体の闇のエネルギーを吸収し、急速に一つの巨大な人型の影を形成し始めたのだ!


「まさか…封印が破られた…! アルベルト公は、生贄に過ぎなかったというのか!?」

背後から、大司教の絶望的な声が聞こえた。


渦巻く闇の中から、ゆっくりと姿を現したのは…二つの巨大な角、燃えるような赤い瞳、そして全身を黒い鎧で覆った、威圧的な人型の存在だった。その姿を見ただけで、魂が凍りつくような恐怖を感じる。


「ククク…ようやく、目覚めの時が来たか…」

その存在は、地鳴りのような低い声で言った。「贄は不完全だったが、まあ良かろう。長き眠りだったわ…さて、まずは手始めに、この矮小な世界を、我が闇で塗り潰してくれるとしよう…」


災厄の王。

アルベルト叔父は倒したが、それは災厄の王復活のための最後のプロセスに過ぎなかったのかもしれない。最悪の存在が、今、俺たちの目の前に完全な形で降臨してしまったのだ。


絶望的な状況。光の剣の輝きすら、その圧倒的な存在の前では風前の灯火のように見える。傷つき、消耗しきった俺たちに、もはや抗う術は残されているのだろうか…?

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