連続達人事件
私は今まさに起こっている、連続達人事件を追っている。
最初は、なんだろう?と疑問に思ったが、この場合の“達人”とは、“人に達する”という意味を指し示す。
つまり、人ならざるものが、人に達する。人と成るということだ。
最初に達人したのは、ニュースで話題になったことがある、左手のないサルだった。
長距離移動している中で、いつの間にか人間になったらしい。
サルを筆頭にほとんどの動物が達人した。
動物の達人が落ち着いたと思い、家に帰ると、知らない男がいた。
「どなたですか?」と尋ねると「僕は元ソファです。」と返ってきた。
言われてみればソファが無くなってる。
ソファを筆頭に、テーブル、椅子、テレビ、洗濯機も次々と達人していった。
まあ、ずっと私の家に住んでいたんだから家族みたいなものかと思い、みんなでご飯を食べた。
そしてあらゆる物という物が達人していった。
もはや人口爆発である。
ようやく落ち着いたと思ったところで、「おやすみ」と言ったら、その「おやすみ」という言葉が達人した。
そこからはもう発する言葉も次々と達人していき、世界は人だらけになった。
人が多すぎて圧死するかと思ったが、やがて『死』という概念も達人した。
これにより人はこれから生きるしかなくなり、そして、無限に増え続けた。