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爆誕! 令和の新妖怪「イセカイ」

作者: みかん

 ある時、書斎で蔵書の山を眺めていたB級オカルト研究家・水木ナナゲル氏(70歳・男性)は、温州みかん片手に金切り声を上げた。


「イセカイめは、確実に生きておる!」



 無論、彼がこんな言葉を吐いたのには、ちゃんとした理由が有る。

 昨今、水木氏の好む書店でもTVチャンネルでも、異世界モノのブームが長年続いていた。数年前までは、じきに終息するであろうと思っていたけれど、まだまだ異世界系作品の人気は終わりそうもない。


(ええい、ここまでこのジャンルの息が長いとは。異世界転生のポテンシャルは化け物か!?)


 水木には意外な風潮だった。ベテランのサブカルオタクでもある彼の予想を覆す、10年以上に渡るブーム定着。いまだに異世界系に代わる新ジャンルは現れていない。

 一方同じ頃、社会では一旦下火になったかと思えたコロナウイルス騒動が再燃していた。



 そして今、水木氏はふと奇妙な類似性に気付いたのである。


「異世界モノとウイルス。そっくりではないか?」


 フィクションも単独では自己繁殖できないが、なろう系作家(脳細胞)に依存することでウイルスのごとく、無限に増殖していく。そしてどちらも、人間社会で大流行パンデミックする傾向を持つ。

 また自らの内に異世界テンプレというプロット遺伝子があり、それは影響を受けた作家から作家へと伝染、変異しながら進化する。

 さらに、ウイルスは感染して人間の生命を害するが、異世界モノは活動エネルギーとして読者の持つ時間そのものを消費してしまう。

 だから老齢や体が弱い人がウイルスに酷くやられてしまうように、精神が弱っているとインプット不全に陥って、膨大な時間を取られる事例も多い。

 人間の脳と同期し、その時間を貰って彼らは活動する。まるでウイルスが細胞に寄生し、栄養を奪うように。


「似ておる・・・・・・実によく似ておるぞ」


 蒼白な顔でそう呟き、これは「イセカイ系」という新しい共同幻想が与えられた事で、人の脳に寄生する概念的生命が爆誕してしまったのかもしれない、という確信を抱く水木ナナゲル。

 そう考えると、WEBに大量に溢れる異世界漫画のバナー宣伝も、彼らの生存戦略の一環であろう。地球は狙われている!


「こうしてはおれん。早速この事を世に知らせねばっ」


 そう意気込んだ手の中で、みかんがグチャリと潰れた。机の上の蔵書に汁がかかって、慌ててティッシュで拭う水木。


「ひぎい、果汁は取れないんじゃ~~」



 令和の都市伝説・概念妖怪「イセカイ」。

 そう彼が名付け、翌日なろうに投稿したその画期的な伝奇エッセイはその後、ブクマ3・評価ポイント10という、夏柑のようにしょっぱい反応を獲得したのであった・・・・・・。


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