表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

第一章 九話 学園と派生スキル


「じゃ、変化のイメージしやすいように、早速お手本を見せましょう!」


そう言って、リーブロさんは一旦狐の姿に戻る。

人に変化している時に着ている服は、変身の都度魔力で作り出しているそう。

人体は作り出しているわけではなく、あくまでガワを再現しているに過ぎない。完全な人間の魔力での生成は、莫大な魔力を持つものでも不可能らしい。


「いくよーっ!」

元気の良い掛け声と共に、元の世界で見たような変化を期待する。


すると…

ぽんっ、と。

なんの前触れもなく、狐の姿だったリーブロさんが突然人の姿になった。

よくある謎の白煙だとかは一切ない。


「すご〜い!」

とカミコは目を輝かせ、


「ふふん!」

リーブロさんは自慢げに胸を張る。


えぇ…と勝手に裏切られたような気持ちになる。

仕方ない、仕方ないのはわかるけど変化でそんなぽんって…


文句を言っても仕方ない。

服が魔力で作り出せるならば、あの謎の白煙だってできるはず!

そんな希望を持ち精神を安定させ、早速変化に挑戦する。


さっき見た人のイメージ…

さすがに元人間の僕がカミコに遅れを取るわけにはいかない。


小一時間後。

人の姿になったカミコとリーブロさんのアドバイスを受けながら、やっと変化に成功した。


例の如く、ぽんっとなんの前触れもなく変化した。

カミコよりも変化の会得に時間が掛かった事、白煙はやはり出なかった事…

なんだかやるせなくなった。


ちなみに、変化の時に白煙をイメージしたら、なぜか周りに真っ黄色の塗料のようなものをぶちまけてしまった。

リーブロさん曰く魔力が軽く暴走した結果らしい。

書庫の中や本達はリーブロさんの《状態保存》のおかげで無事だった。

内心かなり焦ったのはここだけの話だ。


リーブロさんにお礼を言ってから書庫をでて、サンブコさんの元へと戻った。


「うまく変化できるようになったようだ」

サンブコさんが、人の姿になった僕たちを見て言う。


僕が人に変化した姿は、平凡な、と表すとしっくりくる。

元の世界での容姿とはあまり似ていない。面影を感じる気もするが、あまり鏡を見る事が好きじゃなかったので、それも似ていないと感じる要因なのかもしれない。

カミコが人に変化した姿は、もし元の世界にカミコがいたら、犬系男子にカテゴライズされる、とでも言えようか。可愛い系男子とも言うだろう。

庇護欲をそそられるような感じが確かにある。


「はい、リーブロさんのおかげです!」

関係ないことを考えていた僕の代わりをするようにカミコが返事をする。

本当に、リーブロさんの教え方はとてもわかりやすかった。

お世話になってばっかりだな、と思う。


さて、そろそろ本題の学園入学についての話がされるだろう。


「そうかそうか。では、明後日の学園入学資質試験について話そう」


きた!学園についての話


って、明後日?

今、サンブコさんは確かに明後日と言った。


「え!?明後日に試験があるってことですか!?」

念のため聞いてみる。カミコも驚いた顔をしている。


「実はな。もっと早く伝えようかとも考えたのだが、占いによるステータスの開示前だと何もできる事は無く、焦らせてしまうだけだと考えたのだ…」

サンブコさんが申し訳なさそうに言う。

次に学園入学資質試験があるのは来年なんだそう。

来年に入学するのでは、王位選抜に到底間に合わないだろう。


サンブコさんの言った事から察するに筆記試験のようなものは無いってことか。


「試験はどんな内容なんですか?やっぱり実技試験ですか?」


聞くと、

「ああ、そうだ。筆記試験はほぼ無いと言って良い。常識を問う物なのでな。実技の試験は毎回全く毛色の違う内容で、どんな内容かはすまないがわからない。過去には一対一で戦わせたりなんて事もあったそうだ」


なるほど。実技の内容は毎回違うのか…


「実技がもしそのような内容なら、スキルに慣れておかないといけませんよね…」


「そうだ。無理を言っているのはわかっている。どうか、今日と明日で派生スキルを発現させ、スキルに慣れるように励んでほしい」

きっとサンブコさんには悪気はないはずだ。


筆記試験はほぼないと聞いた時点で現実逃避し考えないようにした。

カミコもきっと同じだろう。

常識を確認するだけという言葉を信じよう。


しかし絶対に受かる為に、スキルの運用をできるようにならなければ…


次の日。

実技試験がなんであれ、筆記試験はほぼ捨てたも同然なのもあってスキルに慣れなくて入学資質試験に受かる事ができない。


今日は一日中、スキルの特訓に時間を割くつもりだ。

念の為、居住区にある野原で特訓する事にした。

魔力暴走は怖いからね。


まず、《黄泉》の方から。

魔感石の時と同じ感覚で、魔力が暴走しないように気をつけてイメージをしよう。


だが、《黄泉》といっても具体的なイメージが湧かない。

元の世界では、「地下にある泉」だとか、「よもつくに」だとか言われていた覚えがある。


具体的な話…

イザナギとイザナミの伝説に黄泉が登場していたはず。

黄泉国からイザナギが逃げ帰る時、出雲国の伊賦夜坂を通ったと示されていて、黄泉国は地上世界と繋がった場所にある…みたいな話をネットで見た気がする。


地上世界で最も黄泉国に近い場所は…

山?


そのぐらいしか思い浮かばなかい。

山と天をイメージし、山から天に向かって道を伸ばす。

光の道のようなそれが天に届いた。


っ!?


すごい頭痛を感じ、イメージを中断してしまう。

なんだ?


なんとなくステータスを見てみると、

〈白狐〉ナーヴェ

   力F

 防御力E

  魔力A

  敏捷E

  知力B

 :源スキル《黄泉(パラディソ)》lv1

 :派生スキル《光導(レジェロ)》lv0

 :源スキル《神通(セイデイ)》lv0


派生スキルが増えてる!

まだものの数分しか特訓していないが、こんな簡単に増えるものなのだろうか。


試しに《光導(レジェロ)》を使ってみよう。

光の道のイメージで増えた派生スキルなので、光の道を生成するのだろうか。


さっきと同じ光の道をイメージする。

先程は山から天に伸ばすイメージだったが、今回は足元から前に真っ直ぐ傾斜をつけて伸ばす。


すると、光が徐々に足元に集まり、段々と光の道が形成されていく。

半透明で、色は黄色。

魔力の色が反映されているのだろう。


道はできたが、歩いたりできるよね?

もしも道の上を歩く事ができないとなると、本当に光の道標の役割しか果たさないハズレスキルという事になる。


ドキドキしながらそっと片足を光の道の上に載せると…


よかった、ちゃんと歩ける!


緩い傾斜のついた光の道を進んで行くと、自分の背丈の倍ほどの高さまで上がってこれた。

なんだか少し達成感がある。


自分の初めてのスキルに、これからどうしようかという想像が膨らんでいく。


想像が膨らむ?

つまりイメージすると言う事で…


もしや、と思い後ろを振り返ると、段々と光の道が消えていっているではないか。

変化(へんげ)と違ってイメージし続けないといけないのか!


僕は慌てて光の道を駆け降りたのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ