表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第一章 八話 変化の特訓

ナファチレさんに占ってもらった後、その足でサンブコさんの元へ向かった。

サンブコさんに易者に占ってもらったら2人で尋ねてくるように言われていたのだ。


カミコも一緒なのが不思議で、道中聞いてみたがカミコは恥ずかしがるだけで何も答えてくれない。

どうしたんだろう。


サンブコさんに、2人のステータスとスキルを伝える。


「カミコのスキルは、似たような名前のスキルを持っている者を見た事がある。魔力消費量は少なく効力は大きい使い勝手のいいスキル系統だよ」


「ほんとですか!」


喜色でいっぱいのカミコ。

カミコは引っ込み思案のような雰囲気があるが、案外そうでもない。


「リーヴェのスキルについては、効力まではわからない。だが、《神通(セイデイ)》に関しては白狐の伝説の話の中で似た名前の力が存在する」


神通には、五神通と呼ばれている物にもう一つを加えた6つが存在するそう。

天眼通、天耳通、他心通、宿命通、神足通に漏尽通。


眼、耳、心、命、足など人間の頃から馴染みのある言葉が並ぶ。


「きっと、派生スキルとしてこの力が解放されていくのだろう。しかし、6つ…。全ての力がスキルとして発現するかは私にはわからない。だが、君を大きく助けてくれることには間違い無いだろう」


「ありがとうございます…」


あまりピンと来なかったが、使ってみるまでスキルの効力はわからないと言う事だろう。

それに、源スキルを含めずに5つまでしか派生スキルは発現しないはず。

案ずるより産むが易しとも言う。

心配していたほど難しいことにはならないと願って、今は行動するしかない。


「無事占いを終える事ができた。君達には成長の為学園で研鑽を積んでもらう」


君達?


「えへへ、リーヴェの力になりたくてサンブコさんに無理言ってお願いしたんだ…」

恥ずかしそうに俯くカミコ。


なんだかこそばゆい。


「どうしてもと言われてな…」


やっぱりサンブコさんは面倒見が良いのだろう。


「学園に入る為には、変化を会得しておく必要がある。リーブロに変化(へんげ)の方法を教えてもらってくると良い」


どうやらリーブロは妖狐の集落の中でも変化が上手いらしい。

耳と尻尾はわざと出しているそう。


そうと決まればリーブロさんの書庫に向かおう。




「リーヴェ、カミコいらっしゃーい!」

変わらず元気なリーブロさんが出迎えてくれる。


前とは随分雰囲気の変わった書庫で、今から変化の練習をする。

雰囲気が変わったと言っても掃除をして埃が無くなったくらいの違いなのだが、それだけでも大きく変わった気がする。


「リーヴェとカミコと私で揃うのなんて久々だなー」

リーブロは必要な道具を準備しているのか、こちらに背を向けてしゃがみ込みながら何やらゴソゴソと手元から何かを取り出そうとしている。


リーブロは長い間旅で妖狐の集落にいなかったからと言う意味合いだろうが、少し萎縮してしまう。

カミコもリーブロさんも僕を恨んだりしていないのはひしひしと伝わってくる。

だが、リーヴェを失ったのは事実なのだ。

そんなことを考えているとリーブロさんが手を止め、


「でも、こうして集まれて嬉しい!みんな変わるものだよ。気にしない!」


と言い、突然こっちに向き直って僕に指を指す。

びしっと言う効果音が勝手に脳内再生される素晴らしいキレだ。


そんなコミカルな動きと言葉で、心が軽くなる。

カミコの方を見ても笑顔でやりとりを見てくれている。


「リーブロさん、カミコも、ありがとう…」


「何言ってるの!早く変化(へんげ)の特訓始めるよー!」

そう言ってこっちに来て、と言うリーブロさん。


カミコもありがとうなんて言わないで、と気遣ってくれた。


「じゃ、辛気臭いのは無しで!特訓始めるよ!」


「はい!」


リーヴェとカミコは勢いよく返事をする。

かくして、変化の特訓が始まった。



「最初はイメージから!まずは人間族について知らないと、変化なんてできないからね!」


そう言って2人に一冊ずつ本を渡す。

表紙を見れば、いつぞやの「人間族について」ではないか。


後ろの方のページを開くと、人間の人体構造など細かい情報が文章付きのイラストで記されていた。


「まずはこれを読み込んで、イメージをつけよう!」


勉強みたいな事はあまりした事がなくて不慣れだが、ステータスが知力Sだからだろう、一度見るだけで覚える事ができる。カミコも知力のステータスが高いのですぐに覚えてしまったようだ。


「お、もう覚えたの?早いねー!」


言いながら、リーブロさんが次の道具を持ってくる。


手のひらくらいの大きさの、液体の入ったガラス玉のようなものを手渡してくれる。


「ガラス玉…?」


「そ!魔感石って言って、これに魔力を流すと…」


リーブロさんの手元のの魔感石の中ちょうど中心辺りから、中の液体の色が緑色にじわっと変わりはじめる。

少しすると、液体の色がどこも均等になった。


「こんな感じで、手元の魔感石の中の魔感水の色を均等にしてみて!魔力が多い人ほど難しいんだけど、これができないとスキルを使おうとしても暴走しちゃってケガしちゃうから!これが一番大事な特訓だから、ここを大切に頑張ろう!」


「はい!」


早速魔力を込めてみる。

手元の魔感石の中央にじわっと黄色っぽい色が浮かび上がってきた。人によって色が違うのだろう。

むうっ、と唸りながら魔力を込める。カミコの方からも似たような声がする。


段々と色が均等に…と思いきや、突然ばふっと黄色が爆発的に広がり、中の色が真っ黄色になってしまった。


「あれー、」


これ、どうしたら透明に戻るんだろう。


「あちゃー、やっぱ難しいよねー!魔力を込めた時と逆のイメージで、力を抜く感じで透明に戻せるよ!」


そう言うと、リーブロさんはカミコの様子も見に行った。


改めて、魔感石と向き直る。

力を抜くイメージで…


真っ黄色だった魔感石の中の魔感水から、すっ…と色が抜けていく。

こう言うイメージか…

コツを掴んだ気がする。


そこから少し時間が経った。

カミコはすぐに魔感石に均等に魔力を流せるようになったが、僕はコツを掴みきれずにかなり時間が掛かっていた。

だが、カミコは次の特訓に行かずにリーブロさんと一緒に横でアドバイスをくれ続けた。

2人に感謝しかない。


そして、小一時間の末、やっと魔力のコントロールに慣れ魔感石の中の魔感水の色を均等にする事ができた。


「よし!できたね!じゃあ次はお待ちかね、とうとう実際に変化(へんげ)してみよう!」


遂に、特訓の最終工程に入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ