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第一章 七話 ナファチレの占い小屋

易者に占ってもらう当日。


元々朝起きるのは得意な方だったので、カミコが迎えに来る前に朝食を済ませておこうといつもより早起きした。

病院での寝たきりの生活は、必然的に規則正しいものになるので朝に強いのは当然かもしれない。


朝食は簡単に済ませる。

リーブロさんが教えてくれたが、一度人型になる事ができれば人間と同じ食生活になるそうだ。

それまでの辛抱だと、今までは魚などを食べてきた。


今日も変わらず生魚。

妖狐の一族でも、生魚を好んで食べる者も少数ではあるがいるそうだ。

病院食として魚が出た日は少し憂鬱だった。

思えば、隣のベッドの少年は魚が出た日は喜んでいた覚えがある。


少し苦しかったが一気に魚を食べて、一息つく。

やっぱり魚は苦手だ。


今日、ステータスが見れるようになる。一度ステータスを占ってもらうと頭の中で思い浮かべようとすれば、ステータスを見る事ができるようになるそう。

ナーヴェのことや妖狐族の存亡がかかった大事なことを任されている事はわかっているが、ファンタジー要素を前にワクワクしてしまう。

商業区に訪れたときも、異国情緒な雰囲気に少し興奮した。


元の世界でもゲームは好きで、RPGからアクションゲームまで幅広くやっていた。

そんなにやり込むことはなく、ストーリーの途中でやらなくなってしまったゲームは少なくないが。


「ナーヴェ、起きてるー?」


家のドアの向こうからカミコの呼ぶ声がする。

もう占いに行く時間か。


「起きてるよー、今出るね」


ただ魚を丸呑みしたような者なので片付ける食器などはない。

あらかじめ汲んでおいた水で口を濯いでから、外に出る。


「カミコ、おはよう」

「おはよう、ナーヴェ。とうとう今日だと思うと緊張してきたな…」


挨拶をして、易者のいる占い小屋へ歩き始める。

易者の占い小屋は中心区にあるので、歩きでも意外とすぐ着く。

もっとも、妖狐の集落には歩き以外の移動手段はないのだが。


スキルとステータスの話をしながら歩く。


「僕は身体能力に関するスキルがいいなー」


カミコが言う。


「瞬間移動とか飛行とかよりも?」


僕はそっちの方が気になる。


「うーん、瞬間移動とかは難しそうで、僕じゃ上手く扱えなさそうだから…」


苦笑しながら言うカミコ。


たしかに。

突然、普段と全く違うことができるようになっても、上手く扱えるまでには時間がかかる。

それと比べたら身体能力を強化したりするスキルは楽に運用できそう。


カミコとはしばらく気まずい雰囲気があったが、ここ最近はそう言った気まずさが少なくなってきた。

まだ探り探り話している感はあるものの、カミコも笑顔を多く見せてくれるようになった気がする。


話している間に占い小屋に着いた。

植物でできているのは他の建物と変わらないが、塗料を使っているのかもともとそういう色の植物を使っているのか黒を基調としていて、どんよりとした雰囲気を感じる。


「入ろっか…」


カミコも同じようなことを思っているのか、少し顔に不安そうな色が見える。

暖簾のような入り口の仕切りを押して、2人で中に入る。


中もやはり暗い色を基調としたもので溢れている。

向かってまっすぐのところにぽつんと光の点が見える。


光に近づいていく。どうやら光源は蝋燭らしい。


「こんにちは。待ってたよ。」


「えっ」

突然声がして驚いた。

よく目を凝らして見れば、光の奥には人型の狐がいるようだ。


「こ、こんにちは、占いをしてもらいに来ました…」

変に緊張してしまう。


「僕はナファチレ。サンブコさんから。聞いてるよ。

では、そちらの君からかざそうか。手を。ここに。」


そう言って、易者であろう人が手元の紙に指を指す。

独特な話し方をする人だ。


指示された通り、カミコが手をかざす。


「ごめんね。少し痛いよ。手が。気をつけて」

なんだろう、と思っているとカミコの手から一本毛を引き抜いた。


「いてっ」

カミコが声を上げる。


それに構わず易者は、カミコの毛を紙の上に置いたかと思えば自分の手をおもむろに前に出す。

カミコの毛が置かれた紙の上にはカミコの手がかざされていて、紙とカミコの手の間に滑り込ませるように手を入れ込んだ。

すると、突然針を取り出したかと思えば、自分の手を貫いた。


「え!?」

「気にせずに。いいんだ。大丈夫」


易者の手から少量の血が滴ると、カミコの毛に血が集まる。


カミコの毛が紙のちょうど中央にひとりでに移動した。

すると、カミコの毛に集まった血がじわっと紙に広がる。

どう言うわけかカミコの毛がなくなり、紙に文字が浮かび上がる。


〈妖狐〉カミコ

   力D

 防御力D

  魔力C

  敏捷C

  知力B

 :源スキル《機能上昇(サリタ)》lv1

 :源スキル《技巧(テクニカ)》lv1

 

敏捷が一番高く、源スキルが2つ。

前衛職向きのステータスだ。

源スキルはどちらも能力を上昇させるものなので、カミコの希望は叶ったと言える。


「やった!ナーヴェ、身体能力上昇系の源スキルだよ!!」


紙をこちらに見せてるカミコは満面の笑みだ。

しかし、占い小屋の中は真っ暗で蝋燭の周りから話してしまうと文字は全く見えない。

苦笑しながら、おめでとう、と言いカミコと位置を変わる。


「お願いします」

「わかった。かざそう。手を。ここに」


新しく紙を出してきて、蝋燭の近くに置く。

カミコの時と全く同じ手順を踏んで、ステータスを占ってもらう。

毛を抜かれるのは結構痛かった。ほんとに。


〈白狐〉ナーヴェ

   力F

 防御力E

  魔力A

  敏捷E

  知力B

 :源スキル《黄泉(パラディソ)》lv1

 :源スキル《神通(セイデイ)》lv1


魔力と知力が高く、他のステータスはかなり低い。

明らかな後衛職だ…とはいえ身体能力の値が低すぎない…?


源スキルは2つ。

黄泉(パラディソ)》と、《神通(セイデイ)》。


二つとも名前では全く効力がわからない。神に関係する力なのだろうか?


「これって、どんなスキルか分かったりしますか?」

易者ならわかるかもしれない。


「わからない。人によって違う。全てのスキルは」


使ってみるまでわからないということか。


「ありがとうございます、占いの方も、ありがとうございました」

「大丈夫。気をつけて。何か違う。他のスキルと」


どういう意味だろう?

言葉の真意は測りかねるが、少なくとも心配してくれているのだろう。

感謝を伝えて、占い小屋を後にする。



こうして、無事易者に占ってもらう事ができた。

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