第一章 六話 散策と展望
易者にステータスを占ってもらうまで、あと3日。
書庫に訪れてからの2日間の間は、妖狐の集落の中をひたすら散策していた。
妖狐の集落には元の世界のRPGと同じような武器屋、道具屋などの店もあれば、見たこともないような店もあった。
妖狐の集落を歩き回ってわかったこと。
集落はいくつかのエリアで分かれており、
演説のあった中心区、ナーヴェやカミコの住む居住区、色々な店のある商業区、学校のようなものがある学区、人間族の街に模した城下町のような造りの城下区の5つに分かれている。
中心区には、集落の長やその血縁なども含めた集落のお偉いさん達が住んでいる。例えるならば、王族や貴族のようなものか。
居住区には、例えるならば平民、特別高い身分ではない者たちが住んでいる。
商業区には、様々な店や市場などがあり食材など生活に必要なものも売っている。
学区には、文字通り学校がある。学問ではなく戦闘面について学ぶらしい。
城下区は、人間族の国家に似せて造られている。
保護条約を結んでいる人間族の国ヒューパエゼからの国賓をもてなす役割の面が大きい。
妖狐の集落からも使節団を向かわせる事があるので、失礼のないように訓練させるという面もある。
城下区というのは名ばかりで、城はなく城下町だけが再現されている。
中心区、居住区以外では基本的に皆人型であった。
耳と尻尾が付いているものもいれば、付いていないものもいた。
技量の差なのだろうか?
城下区、商業区、学区、中心区、居住区の順に栄えていて、城下区と商業区は同じくらいの規模であり、他の3つの区に比べ活気があった。
全ての区を回ったが、どうやらナーヴェを知る者はあまりいないらしい。
気になってカミコにも交友関係を聞いてみたが、両親が亡くなってからは塞ぎ込んでいた時期があり、その後カミコの一家やリーブロさんとの関わりしかなかったらしい。
長は、両親を亡くしたナーヴェのことを気にしていたらしい。
何故、長であるサンブコはナーヴェに直接的な関わりを持たなかったのか。
長なら縛りはなさそうなものだが、妖狐の集落の中では形式上では長が一番上の立場だが、実際のところは違う。
集落の長を一番上に据えて、その補佐官、副集落長と続き、集落の重要決定事項を決める会議、裁判においては、議長、副議長、議会議員が存在する。
実際に問題が起きた時に判決を下すのは議長らであり、集落の長の座も狙っているという。
集落長ともあろう者が1匹の狐に肩入れしたとあれば、すぐに議長らが話に尾鰭を付けて騒ぎ立てるだろうという事がわかっていた。
もし、議長らの誰かが集落長の座につけば、元の世界で例えると国会と裁判所、行政全ての権力が一つの勢力に集まってしまう恐れがある。
なので、下手に動けなかったそう。
元の世界のように権力云々のいざこざは、こちらでも変わらないらしい。
少し意外だったが、集落長のサンブコさんは面倒見がいいのかもしれない。
集落長のサンブコさんとも、改めてこれからの話をした。
易者に占ってもらった後。
スキルがどんなものであっても、万が一の時のために戦闘訓練をしておくために学区にある修練学園で2年間通うことになった。
王位継承者選抜まで三年ある。
残りの一年で妖狐族だと気付かれぬようにしながら、王位継承者選抜の排魔派を妨害し、親魔派が選ばれるよう援助する。
どんなスキルかによって、人間族の国での立ち回り方が変わってくるだろう。
サンブコさんは、僕の他にも精鋭として名乗りを上げてくれた者が一緒に動いてくれるので気負うことはない、と言ってくれた。
やっぱり優しい人なんだな。
そんなサンブコさんのためにも、ナーヴェの為にもこの王位継承者選抜は絶対にどうにかしなければならないだろう。
この二日間でリーブロさんの書庫にも行った。
どうやら、僕が易者に占って貰えば人型になる事ができるようになるので、方法を教えるためにまだ妖狐の集落に滞在していてくれるそうだ。
ありがたい。
それまでは書庫の掃除をするそうなので、手伝いに行った。
最初に書庫に訪れた時埃っぽかったのは、あの状態で《状態保存》をかけてしまったからだそうだ。
少しの間暇ができたので、一度《状態保存》を解いて掃除をして綺麗にしてからまた《状態保存》をかけるそう。
リーブロさんは本好きな上に世界中を旅しているので、知識が豊富だ。
掃除をしながら世界についていろいろ聞いた。
主に種族について聞いたが、機械族には会った事がないらしい。
どうやら、機械族は自分と同じ種族のものしか信用せず進んで姿を見せないそうだ。
他にもたくさんの話を聞いたが、ぶっちゃけ、情報が知りたい時は本を読むよりリーブロさんに聞いた方が早そうだ。
そんなこんなで過ごしていると、とうとう易者に占ってもらう日の当日となった。






