第一章 四話 世界とスキル
僕達、と言う表現に違和感を覚えたのか、少し反応に間が空くサンブコとマジョーレ。
だが、その意味を理解すると嬉しそうに、
「そうか!本当に良かった、」
と安堵した様子だ。
「おかえり、長達と話して何かわかった?」
心配で待っていてくれたのだろうか。
ナーヴェの家の前で友人狐が聞いてくる。
空の色はすでに赤みがかっており、日没が近い。
妖狐の一族を救ってくれ、と頼まれた後、しばらくナーヴェ自身のこと、友人狐のことや世界について詳しい話を聞いた。
そこで、やはりこの狐はナーヴェの一番の友人であったと言う。
名はカミコというのだそうだ。
長達と話している間に、ナーヴェがナーヴェではなくなってしまったこと、ナーヴェの意思、伝説の事をカミコに伝えたらしい。
誰が伝えたのかまでは言われなかったが、偉い役職の者だろう。
もうナーヴェではない事を知りながら、対応を変えずにいてくれるカミコに感謝しかない。
「うん、サンブコさんとマジョーレさんが色々教えてくれたよ」
「良かった。易者に見てもらう時に家まで行くね」
じゃあまたね、と言い家に帰っていく。
カミコは隣の家に住んでいる。
ここに立っていても仕方ない、と自分のもといナーヴェの家のドアを開けた。
転生、というよりもナーヴェから肉体を託されてから、初めて1人になったような気がする。
今日1日だけでどっと疲れたな、、、
一休みする前に集落の長、サンブコとその息子マジョーレから聞いた情報を整理しよう。
ナーヴェの事から。
狐といえども当然家族がいるわけだが、今ナーヴェの家にいる自分以外にこの家には誰もいない。
ナーヴェの家族は随分前に亡くなってしまったらしい。
それもあって、隣に住むカミコの家が家族がわりのようなものになっていたようだ。
家族がいなくなり、自分の命も長くないと知ったナーヴェは何を思ったのだろう。
考えても仕方がない。
前に進むことが、ナーヴェへの感謝になると思う。
続いてこの世界のこと。
妖狐族の他にもアニメやゲームでお馴染みの種族がいるようだ。
国を持つほどの大きな種族は6ついて、人間族、妖精族、獣人族、機械族、海人族、魔人族がいるらしい。
妖狐族のように、国として認められていない種族は幾つあるのか不明だそうだ。
世界の中心に人間族の国、ヒューパエゼがあると考えて、東に妖精族、西に獣人族、南に機械族、北に魔人族がおり、海と陸は7:3で、地球と同じ割合で分かれている。
ヒューパエゼのすぐ下に隣接するのが妖狐族の集落であり、国としては認められていない。
ヒューパエゼに保護してもらっている理由もそこにある。
もし、ヒューパエゼの保護から外れれば、大して栄えていない妖狐族はたちまち攻め込まれてしまう。
ここで一つおかしいと思う点があるだろう。
なぜ、大して栄えていない種族がすぐにでも標的とされ滅ぼされる恐れがあるのか。
それは、妖狐族の能力に関連している。
この世界にはゲームでお馴染みのステータスのようなものは存在するが、所謂レベルというものはないらしい。
種族や個体によってステータス、力や魔力などは最初から決まっており、レベルがないことで生まれてからいくら努力をしても大して変化することはない。
そこで、他人との強さの差はスキルの存在によってできているようだ。
生まれ持ったスキルを源スキルと呼び、源スキルのレベルが上がると、レベルの上がった源スキルに関連する効果を持つ派生スキルが追加で1つ生まれるらしい。
源スキルは言わばスキルの系統を示すだけのもので、派生スキルのように実際の効果はない。、
源スキルレベルには上限があり、レベル0から5回レベルが上がったところでそれ以上上がることはなくなる。
派生スキルの上限も0から5レベルだが、派生スキルからは派生スキルは生まれない。
つまり、一つ源スキルを生まれ持ってくると生涯で使えるスキルの最大数は5つとなるということであり、一つも源スキルを持たず生まれたものは生涯スキルを使うことができないということになる。
一つも源スキルを持たず生まれてきたものは、生涯いくら努力をしても強くなることができない。
だが、妖狐族は絶対に二つ以上の源スキルを持って生まれてくるようだ。
他の種族では、源スキルが一つもない状態で生まれてくる可能性があるのに対して。
この唯一性により、大して数が多くなく栄えていない妖狐族が脅威と見られている。
ヒューパエゼとの保護条約がなくなれば、たちまち他種族と交戦状態になる恐れが高い。
ヒューパエゼからの保護条約は保護と名を冠しているが、その実、内容は少し異なっている。
簡単に言えば、共闘関係にあるようだ。
一方が侵攻される場合、もう一方も侵攻されたとみなし共闘する。
今までの国王は、数は少ないが強力な妖狐族の力で国防できるので保護条約を結んだまま継続させていた。
今回起こる王位継承候補には、激しい排魔派がおり、人間族以外を排すべきだという考えを持った者がいるという情報を得たようで、その者が選ばれれば最後、保護条約は一方的に破棄される可能性が高いという。
王位継承者選抜、略して王位選抜はいまから3年の間行われ、元の世界でいう選挙のような形で結果が決まる。
つまり、タイムリミットは3年。
3年の間で強くなり、王位選抜で排魔派の候補者ではなく親魔派の候補者が選ばれるよう王位選抜の結果をコントロールしなければならない。
一週間後に易者に占ってもらう。
そこで、ここからの生涯がほとんど決まるのだ。
易者に占ってもらってから、ステータスを閲覧できるようになるという。
つまり、今できることは何もない。
この一週間は妖狐族や王位継承者選抜、この世界についての情報を集める事に専念するとしよう。
ベッド、と言っても植物でできた柔らかい寝床だが、そこに丸まるようにして寝そべる。
明日から、忙しくなる。
ナーヴェのため、自分の夢のために、必死に成長しなければ。
そう考えているうちに、いつのまにか眠りについていた。
稚拙な文章ですが、読んでいただきありがとうございます。
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