第一章 十二話 御札争奪戦
頭上に現れた巨大なタイマーには「9:57」と表示されている。
こうしている今も1秒、また1秒と示す数を減らしていっていく。
周囲の受験者達は皆、突然のことに驚いている様子だが、すでに動き始めている者もいる。
「カミコ、僕たちも行こう」
「う、うん…」
そういって、森林エリアに足を進める。
閑静な雰囲気の町を抜け、草木生い茂る森林の入り口が見えてくる。
周囲に受験者はちらほらと見えるが、大多数は既に森林エリアの奥へ行ってしまったのだろう。
森林エリアに向かう理由は明確だ。
僕の派生スキルである《光導》と《天耳》、カミコの身体能力向上のスキルは、どちらも入り組んだ地形や視界の悪い場所でこそ真価を発揮すると考えたからだ。
2人のスキルの合わせ技など、もともと寝たきりでゲームばかりだったのでこのワクワクは抑えきれない…
「ねえ、ナーヴェ…やっぱり別々に行動しない…?」
カミコが上目遣いで言う。
「ナーヴェの足を引っ張っちゃう気がして…怖いよ…」
今までもずっとカミコはナーヴェもとい僕の事を最優先に考えてきてくれた。
そのことに本当に感謝してるからこそ言わなければいけない。
「カミコ、僕はカミコが足を引っ張らないとは言い切れない」
言うと、カミコがびくっと顔を俯かせる。
「でもね、僕はカミコが僕を必ず助けてくれるとは思ってるよ。僕もカミコを助けるし、カミコは僕を助けるの!」
カミコは俯かせていた顔をあげてきょとんとしている。
「どういうこと…?」
「そのままの意味だよ!僕とカミコで一心同体!向かいくる敵をバッタバッタ!」
言ってて少し恥ずかしくなり後悔もしたが、真にカミコを見つめる。
カミコはぷっと吹き出すと、
「確かに!僕たちずっと一緒だったからね…」
ふんす、とさっきとは打って変わって元気そうだ。
「僕がナーヴェを助けるっ!」
良かった…と本気で思う。
カミコはどうやら自己犠牲の精神が強い気がする。悪いことではないのだが、行きすぎた自己犠牲は毒になりかねない…と思う。寝たきりだった自分に分かることではないかもしれないが。
どうやら、この試験会場は中心に円形の町エリアをおき、取り囲むように森林エリアが位置しているそう。
これだけ聞けば町エリアにいる必要は全く無いように思えるが、そうでは無い。
受験者1人1人に与えられた御札は実際の物体ではなく、魔力によって作られたものなのだそう。
魔力で作られた御札に受験者各々の魔力を込めさせて、受験者の合否の識別をする。
どこからでも見える巨大なタイマーには「3:24」と表示されている。
どういう仕組みかはわからないが、どこから見ても丁度正面を向いて時間を刻んでいる。この残り3分の準備時間で魔力を込めておかないと失格になってしまうそう。今のうちにカミコにも魔力を込めさせておかないと。
この円形の試験会場は魔力によって作られた御札が消えてしまう膜のような結界で囲まれていて、じわじわと町エリアに向かって収縮している。
目を凝らしてみれば、半透明なオレンジ色の結界が360度どの方向にも見える。
時間と共に狭まる範囲の中で、御札を守るも良し、奪うも良しのバトルロワイヤルゲームってことになる。
生前(?)と言っていいのかわからないが、元の世界で1番やってたゲームジャンルだ。
この試験で差をつけて合格を確実なものにして見せよう!
と意気込むのは程々に…
「ねえ、カミコのスキルについてもっと詳しく聞いてもいい?」
「もちろん、ナーヴェは知っておくべきだもん!」
仲間のできる事を知っておかなければ、勝てる物も勝てない。
カミコのステータスは以下の通り。
〈妖狐〉カミコ
力D
防御力D
魔力C
敏捷C
知力B
:源スキル《機能上昇》lv2
派生スキル《俊敏》lv2
:源スキル《技巧》lv2
派生スキル《握撃》lv1
《俊敏》による高機動、《握撃》による破壊力を併せ持ったアサシンのような前衛職が向いているだろう。
僕のスキルとの組み合わせでーー
ーー「「試験を開始します。これより、御札が他社の手に渡った場合失格となります。」」ーー
「えっ、もう!?」
巨大なタイマーを見やれば「0:00」を刺したと思えば、「59:58」と新たに時を刻み始める。
「ナーヴェ、はやくー!」
呼ぶカミコと共に森の奥へと足を進める。
スキルを使用してないので同じ速度のカミコと並走しながら、あたりの木よりも高めの木の前で足を止める。
「ナーヴェ、どうしたの?」
急いでいるので返事はせずに、スキルで示す。
《光導》で木の周りに螺旋階段のように道を作る。
「カミコ、登るよ!」
「わかった!」
一旦安全な所へ行って、《天耳》で情報収集がしたい。
何事もまずは良く調べてから行うのが僕の流儀だ。
なんて、少しカッコつけてみる。
木の中腹を越え、枝葉で周囲からの視界が無くなったところで。
ふう、と一息つく。
「ナーヴェのスキルは凄いなー、こんなの僕じゃ手も足も出ないや」
「一長一短だよ、カミコ。平地でカミコと御札を取り合ったら勝てっこないよ」
あはは、と苦笑する。
「カミコ、正面から行くと負けちゃうかもしれないから作戦があるんだ」
カミコに作戦を説明し終えたところで、《天耳》によって声が聞こえる。
「誰もいねーなー、みーんな隠れちまってしょうもねえ、」
「そ、そんな事ないよ。どっちかって言うとみんなの方が合理的でこんな堂々と出歩くなんて…」
「ああ!?文句あンなら1人で行けや、この懦夫が!」
めっちゃ喧嘩してる…
でも丁度いい、チームワークを見せるにはうってつけの相手だ。
「カミコ、60m前方に2人。気づかれないように近づいて」
「わかった!」
下への階段を《光導》で作ると、びゅっ、とカミコの姿が凄い勢いで駆けて行った。
名前のわからぬ2人の直上に光の道を繋げ、カミコがその上で虎視眈々と隙を窺う。
カミコにも会話が聞こえる距離だ。
相手が気付いてない事を確認し、急いでカミコのいる光の道へと合流、目配せする。
「あーあ、まじで誰もいねえ…」
そうって、気の強いほうがぐーっと伸びをする。
右手に御札を持ってる!
カミコもそれに気付いたようで、せーのの合図で…
下にいる2人の目の前に光の壁を展開。
「うっ!?」「ぐへっ!?」
作った隙を逃さず、カミコが2人の御札を奪取。
「なんだ!?」「あっ!?」
《光導》で道を作り、元いた光の道へ繋げ、カミコが登ってきたのを確認し即座に消す。
「ナーヴェ!できたよ、すごい!すごい!」
「カミコの方がすごいよ!1人しか御札の場所はわかってなかったのに!」
試験開始直後に御札が2枚ずつ!あと1枚ずつ獲得してしまえば後は守るだけで良い。
「あー、札取ったンはそこの相思相愛比翼連理のお二人さんか」
見やればこちらを睨め付ける気の強い受験者と目が合う。
「やられたぜ、今回はな。次にあったら覚えとけよ?」
言葉は強いが、瞳に宿る闘志とニヤリとした笑顔からは悪意は感じない。
実技試験はまだ始まったばかりだ。御札を取り返される可能性もある。
「だ、だから言ったじゃないですか!スキルすら使えずに負けるなんて!」
「ああ!?おめえも札取られてンだろ、さっさと行くぞ!」
「いたっ!?」
町の方へと片方の受験者を引きずりながら向かって行く。
その背中に。
「僕はナーヴェ、こっちはカミコ!君達はー!」
すると彼はふっと振り向き、引きずっていた方を立たせてニヤリと言う。
「俺はアロガンザ、こいつは懦夫だ、覚えとけ!」
「何が懦夫ですか!僕はフェニヌシアです!」
うるせえっ、とアロガンザはフェニヌシアの首根っこを掴むと引きずり出して、町の方へと消えていった。
ナーヴェとカミコは木の上へと光の道伝いに戻りながら、己の活躍をお互いに伝え合っていた。
しばらくぶりです。キャラの濃い2人が登場したかと思えばあっさり退場です。
学園に入ってからたくさん出番があるはず…
今回も稚拙な文章をお読みくださりありがとうございます!
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