第一章 十話 神通の力
源スキル《黄泉》がlv1になり、派生スキル《光導》が発現した。
《光導》の今のところわかっている性能は、半透明の光の道を作る、と言うものだ。
だがこの《光導》、どうやら道を作るものではなさそうである。
ひたすら《光導》を使っていた時に、イメージを壁として生成すると、成功したのだ。
仮説でしかないが、《光導》は光を操るスキルのようだ。
光が導いてくれるのかと思えば、光を導くスキルだといえる。
《光導》スキルが発現してから2時間ほどが経った。
ずっとスキルを使っていたからだろう、《光導》がlv2になった。
派生スキルはレベルが上がると、そのスキルの効力が強まる。
ここで一つ試してみよう。
目の前に一本の木がある。
距離は十メートル程だろう。
小指ほどの大きさの小さな光の球をイメージして、
それを、光の壁で思い切り撃ち出す。
ビュッ、と風を切る音がする。
目の前の木には、先ほどはなかった小指ほどの小さな穴ができていた。
「すごい!」
木に駆け寄って穴を詳しく見てみると、焼けたわけでも消滅したわけでもなく、ただものすごい威力により消し飛ばされているようだった。
それもそうだろう。もし焼けたり消滅したりするならば光の道を作って歩いたりなんてできるわけがない。
足をかければたちまちジュッ、と焼けてしまうだろう。
源スキル《黄泉》のレベルも《光導》のレベルも上がる様子がないので、もう一つの源スキル《神通》のレベルを上げてみよう。
源スキル《神通》は、サンブコさん曰く伝説の中に登場しているそうで、六神通の力のことなのだそう。
《光導》で攻守はある程度できるので、周りの情報を取る事に長けているスキルが欲しい。
六神通で言うと、天眼通、天耳通、他心通の3つだろう。
木の擦れる音や、鳥のさえずりをイメージする。
少し遠くで話している妖狐の話してる内容を想像する。
そうしていると、段々と何を話しているのかが聞こえてくるような…
またもや激しい頭痛。
ステータスを確認すると、
〈白狐〉ナーヴェ
力C
防御力C
魔力S
敏捷B
知力S
:源スキル《黄泉》lv1
派生スキル《光導》lv2
:源スキル《神通》lv1
派生スキル《天耳》lv0
源スキル《神通》の派生スキルとして《天耳》が発現している。
天耳通の力がスキルとして発現したのだろう。
試しに《天耳》を使ってみよう。
さっきと同じイメージで…
たちまち、たくさんの音が一気に聞こえてくる。
この状態だと音が多すぎて何が何だかわからないな。
集中を深めて、音を聞き分けていく。
少し練習すると、物音や声などを聞き分けられるようになった。
《天耳》lv0の状態なのでものすごい広範囲の音が聞けるというわけではないが、半径200mほどの音を聞くことができる。
そのまま一日中スキルの特訓をして、家路についた。
結果的に《黄泉》と《光導》のレベルは変わらないままだったが、《天耳》のレベルが0から1になった。
範囲は変わらなかったが、意識しなくとも音を聞き分けてくれるようになりものすごく便利になった。
家まであと少しのところでカミコとばったり会った。
隣同士なので、当然一緒に帰る。
「ナーヴェ!特訓、上手くいった?」
上目遣いで聞くカミコ。
「うん、派生スキルのレベルまで上がったよ!」
「そうなの?僕は派生スキルに慣れるので手一杯だったよー」
カミコが少しうなだれる。
そんなカミコに苦笑して言う。
「お互い、試験にはなんとか間に合ってよかったねー」
すると、カミコがぱっと顔を上げて。
「良かった!学園絶対入学しようね!ナーヴェの役に立ちたいから、僕も頑張るよ!」
ふんす、と聞こえてきそうな勢いで言う。
気づけばカミコの家の前まで来ていた。
じゃあ頑張ろうね、と言い家の中へ入っていくカミコにじゃあねと言い、すぐ隣にある家のドアを開けた。
それにしても、カミコがよくナーヴェの役に立ちたいと言っているが、何故なんだろう。
ナーヴェがナーヴェである時からなのかはわからないが、少なくとも僕に対しても協力したいと本気で言ってくれるカミコは強いな、と思った。
自分が同じ立場であったなら…と考え始めたが、すぐに辞める。
しみったれた考えなんてやめだやめだ。
今はなんとしても明日の試験に集中しなくては。




