8 閑話 ある侯爵家の家臣の家の悲劇
「あなた~~~っ」
女性は泣きながら亡骸にしがみ付いていました
愛する夫が亡くなったからです
彼女の夫は侯爵家の兵士でした
とある辺境伯の令嬢を拉致するため、朝早くに出て行きました
そしてその日の夜に亡骸となって帰ってきました
全裸になって、です
彼女の夫は侯爵家の兵士だと判らないようにするために、ごろつきに扮していました
ですが腐っても侯爵家の兵士です
いい服を着ていました
そしていい剣も持っていました
それなりの馬に乗って出て行きました
それらはすべて奪われていました
そして全裸で街道の端に捨てられていました
本来ならば ~辺境伯と侯爵家との戦いならば~ 死んだ兵士には相応の敬意が払われていたことでしょう
ですがごろつきに扮していました
また辺境伯の応援に駆け付けたのは傭兵集団でした
傭兵は金に汚いです
たとえ血で汚れた服でも奪って金に換えます
金に換えられなくても雑巾にでもしたでしょう
それくらい貧乏症です
そんな傭兵の目の前にそこそこの服があったのです
死んだあと身体が固くなる前に全部奪っていきました
もちろん高く売れる剣や馬も同様です
なにせ死んでいるので文句を言われませんからね
・・・死んでなくて死んだふりして難を逃れようとした兵士はしっかり見つかって殺されていました
そんなことは知らないというか知らされていない女性はただ突然死体となった夫を見て嘆いていました
まだ幼い子供が居るのです
これからの暮らしだって心配です
それを思うとさらに泣けてきました
一瞬というかたった一日で幸せな生活が崩れ落ちていった家庭が幾つもありました
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襲わせた王妃様やその実家の侯爵家の人間は誰一人として傷一つついていません
貧乏くじを引くのはいつだって末端の人間でした




