第三艦隊司令官である第二王子は第五師団司令官である公爵令嬢に婚約破棄を言い渡すようです
21作めです。
よろしくおねがいします。
「第三艦隊司令である小官は陸軍第五師団司令官である公爵令嬢との婚約を破棄し、新たに海軍陸戦隊を組織。司令官として男爵令嬢を抜擢し新たに婚約をすることとする!」
「ご紹介に預かりました海軍陸戦隊第801大隊、隊長を拝命致しました男爵令嬢であります。以後よろしくお願いします」
ここは御前会議の場である。いきなり根回しもなく一方的な通告を行う王国海軍第三艦隊司令官第二王子に総司令官を兼務する国王をはじめとした会議の参加者は眉をひそめる。
「陸軍としては海軍の提案に反対である。この婚約は秘匿作戦のため数年に渡り予算と人員の確保が行われ、王国の総意の元決死の覚悟で準備及び訓練が行われてきたものである。今更なんの根拠もなく貴官の一存で撤回できるような話では毛頭ないものと思われる!」
そう返答するのは名指しされた公爵令嬢。
「海軍としては陸軍の反対に反対である。きちんとした根拠はある。貴官こそ胸に手を当てて考えるべきではないのか?」
第二王子が再度発言する。
「小官としては全く心当たりが無いのであるが、提案があるのであれば事前の根回しがあるのが当然である。貴官は御前会議をなんと心得るのか?」
「陛下の御前にて王国将官同士で争うのは甚だ遺憾なれど、このままでは秘匿作戦の失敗は必定。公爵令嬢自身が己が失策を認識していないのであればこれを正すが臣の勤めでありましょう。どうか続けさせていただきたい」
そう言って第二王子が国王に対し許可を求める。
「続け給え」
国王からの許可が降りる。
「なれば指摘させていただこう。そもそも陸軍の主兵装は海軍が入手した情報によれば三年前と変わらず72cmである。これは海軍の要求を満足しないものである。よって独自に調達した80cmを擁する男爵令嬢にその任を引き継ぐことが妥当であると海軍としては判断するものである」
第二王子が強気に発言する。
「お待ちいただきたい。従前の海軍予算に新規の海軍陸戦隊の編成予算はなかったはず。これは国家に対する重大な越権行為でありましょう」
「作戦に対して緊急に必要な予算として機密費および寄付金を一時的に利用している。承認がおりれば返済すれば問題はない」
本来であれば問題しかないのだが、緊急性のあるということで事後承認がおりれば確かに不法行為として追求することは出来ない。
「では不承認の際には責任をとっていただく。次に主兵装の件であるがこれは海軍の積載量から45kg以下という厳しい重量制限の要求水準を満たすためのものである。よって陸軍としては要求水準の変更を求めたい」
公爵令嬢としては第二王子の度重なるスリム化要求に対しうんざりしていたのである。
「それこそが陸軍の怠慢である。海軍陸戦隊は80cmの男爵令嬢という逸材を得た以上、婚約は彼女とするのが当然である」
「でもそれ追加装備でしょ?」
そう言って公爵令嬢は男爵令嬢の方をむき指摘する。
「いいえ、違います」
男爵令嬢が反論する。
「貴官の情報は入手済みであるが?」
男爵令嬢はもともと陸軍に所属していたので元上官である公爵令嬢は彼女の情報は入手済みであった。
「それは半年前までの情報です。現在は固定砲塔に換装し重量増を抑えながら80cmを維持しております」
男爵令嬢が答えると第二王子が追従する。
「これで貴官の怠慢がよくわかったであろう」
これに対し公爵令嬢が答える。
「砲塔交換までしたのか?まさか10cm単装速射砲の殿下のためにそこまでするとは・・・・。何が貴官をそこまでさせたのか?貴官はそれで満足できるのか?」
「おい!なんでこっちの情報が漏れているんだ!」
第二王子が慌てているが他二名はスルーする。
「確かに早くて持久力もないし短小いえ単装ですが、高い仰角が取れます。ということは他にはない重要な要素を持ちます」
「重要な要素?」
男爵令嬢の発言は公爵令嬢に何かを暗示した。
「そうです。第二王子殿下の主兵装は両用砲なのです!」
その発言に衝撃を受ける公爵令嬢。
「・・・・まさか。そんな・・・・。両用砲だなんて・・・」
「次の戦場のために。次の次の810場を間近で見るために。801大隊の歩みが止まることはないのです!腐腐腐腐腐腐・・・・・」
そう宣言した男爵令嬢にスッキリした顔の公爵令嬢が答える。
「理由はよくわかりました。あなたには負けましたわ。婚約破棄は受け入れましょう。ですがこれまでの費用等を考えると無償というわけには行きません。そうですね第三艦隊の映像記録を融通していただくことにしましょうか?」
公爵令嬢は軍人から私人に戻ったように穏やかな表情で賠償を要求する。
「わかりました。小官は撮影班にいたこともありますから現地での興奮は得られないとは思いますが基本的なものはお引渡し致します。バックアップにも丁度いいですし!」
「おいお前ら!人の情報を勝手に取引に使うな!というかそんな物をなんに使うつもりだ!?そもそも今回の議題は俺の婚約に関する話だろ!」
第二王子が文句を言う。
「殿下はわかっていませんね。古人曰く・・・」
「「ホモは別腹!!」」
公爵令嬢と男爵令嬢の言葉が重なったところで会議終了の時刻となる。
「そんなバカな・・・」
うなだれる第二王子。
「陸軍の提案に対する海軍の要求は以上である。では時間になったようなので本日の会議は終了とする。最後に第二王子殿下」
公爵令嬢が第二王子に話しかける。
「何だ?」
「72cmは以前のもので欺瞞情報だ。小官は着痩せするタイプで重量制限の要求水準は若干満たさなくなったが、現在の主兵装は旋回砲塔の88cmである!」
そう言って公爵令嬢は「俺の理想形が」と愕然とする第二王子を尻目に微笑みながら会議場を退室するのであった。
「宰相。本日の議題は一体何だったのか?」
「小職としては陛下の記憶から抹消される事を進言致します」
「とりあえず海軍予算縮小と第三艦隊の所属艦艇の削減、第二王子の継承権を繰り下げておけよ」
「かしこまりました」
801大隊各位「男爵令嬢、止まるんじゃねえぞ!」