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5話 局長

話の長さのばらつきが酷いです。

また、長々となってしまい申し訳ありません。

次話から学園が関わっていきます。

        ◆◆ジグ◆◆


 俺は今日も局長室で書類仕事をしていた。魔人管理局局長、ジグ・ウォール。それが俺だ。

 

 昔はオーガの魔人として戦闘員の中でもかなりの腕だったが四十の時に大きな怪我をしそれを機に引退しようとした。だがその時の局長と話し合い、俺が局長になったのだ。


 就任した頃は書類仕事はからっきしだったが、もう五年となり流石に慣れてきた。読み終わった書類に許可印を押し、次の書類をめくる。と、


 ーー王立魔法学園潜入書の書類だ。


「そういえば明日が入学試験だったな…」


 あいつはうまくやっていけるだろうか…。


 知らず知らずのうちにあいつの、ロディの心配をしている。どうやら俺は世間でいう「親バカ」とやららしい。隊員にこの前そう言われたが、他の隊員もあいつの心配をしているのをこの前聞いた。他人のことを言えないだろう。


 あいつと出会ったのは十年くらい前だろう。俺がベテラン戦闘員として名を馳せていた三十五の時だ。


       ◆◆◆十年前◆◆◆


「ふぅ…全員捕縛したか確認しろ!それと怪我人の手当てだ!」


 俺は部下にそう怒鳴ると幌馬車を奪った鍵で解錠した。


 今回の任務は違法奴隷を扱う奴隷商の捕縛だ。

魔人や魔法使いの奴隷は高く売れる。罪人などは奴隷行きにされ貴重な労働力となっている。


 だがなんの罪もない魔人を奴隷にする輩がいる。しかしこれは現行犯ではないと検挙しにくい。


 そこで事前に掴んだ情報を元に待ち伏せをして襲うことになった。結果は成功。ぱっと見だが隊員に大怪我を負った奴もいねぇ。


(あとは連中を尋問して…この馬車の中身だな)


 バッと布を開けるとそこには女子供が二十人ほど詰められていた。


「おい、俺らは魔人管理局の者だ。もう大丈夫だ」


 泣いている奴らもいるので軽く声をかける。そしてこれから怪我をしてる奴には簡単な治療を施し、全員に名前や住所を聞く。


 身分がはっきりとして近所のやつはすぐに返すことができる。遠いやつや身分がはっきりしねぇやつは一時的に局で預かる。


 まぁ今は奴隷の確認だ。順番にぞろぞろ出てきたやつを次々に確認していく。大人や親と一緒にいる子供は確認がすぐ済むが…。


 出てくる奴がいなくなった。案の定子供だけの奴らが残っている。


「おい…お前らも出ろ。大丈夫だ。家に帰れるさ」


 ガキどもはそろりそろりと降りてくる。ふと、あと一人だけまだ馬車の中にいるのが見えた。


 出てきているガキは他の奴に任せ、俺は馬車の中に入った。残ったガキは五歳くらいで馬車の隅に蹲ったままだった。


「おい…?」


 ガキに近づく、するとガキはようやく顔を上げた。黒い髪にオレンジの目。服は汚れてはいるが元はかなり良い物だったのだろう。どことなく気品がある黒の服だ。ガキは若干やつれた感じがする。おそらく孤児だろう。


 (まぁ孤児院の預かりになるだろう…)


 ガキはまた顔を下げた。俺がガキの顔を覗き込むと、異様なほど青い顔をしていた。よく見ると体も震えている。


「ヴァン、毛布か何かあるか?」


「一応持ってるっす」


 手渡された毛布をガキにかける。


「ボウズ、親はいるか?」


「…どっちも、死んでる」


 受け答えははっきりしておるがどこか喋り慣れていない感じがする。薄着ではないにも関わらずまだ秋なのに寒がっているのは何故だろうか。


「家はあるか?」


「…ない。道とか、使われてない家で、寝る」


「そうか…ボウズ、自分が何の魔人か分かるか?」


「…おじさんたちは、魔人でいい人、だよね?」


 そう言って再び顔を上げたガキの顔には黒い鱗が現れていた。


「おじさん、僕は、ドラゴンの魔人。それから、

僕は「ボウズ」、じゃなくて、ロディだよ」


 立ち上がって俺のことをまっすぐ見つめてきた。


 まずドラゴンの魔人であることに驚き、そしてなんだか心の底まで見透かされているような、もしかしたらこのガキは俺よりも遥かに強い何かである気がして何も言うことができなかった。


 しかしロディは「寒い…」とだけ言って再びうずくまる。俺は慌ててロディに毛布をかけなおしおぶって外に出た。他の隊員に「こいつは局に連れて帰る」とだけ言い、他には何も言わなかった。


 しばらくして局に引き返そうとすると、ロディは「おじさん、僕の荷物、馬車の前のところにある、欲しい」と言った。


 運転席には奴隷から没収した荷物があったが今はそれぞれが持ち主の元へと戻り、あとはロディの物だけだった。


 黒い背嚢は案外重く、中を覗くと立派な剣が入っていた。その他にも短刀?が幾つかにわずかな金、そして他にも細々としたものが入っていた。


「…いいでしょ、それ、お母さんから貰った」


 俺は「いい剣だな」とだけ応え背嚢をロディの邪魔にならない位置に下げ、そのままロディをおぶって帰った。背中が温かい。何故だかこのガキを愛おしく思った。



        ◆◆◆ ◆◆◆


 あれから十年経った。あいつは多くの局員に可愛がられた。あいつは炎系のドラゴンの魔人だったらしく、寒さに異様に弱かった。前に「子供なんだから外で雪遊びでもしてこい!」と言って放り出し、ロディが中庭でぶっ倒れた時には皆焦ったものだ。


 十二になり局員になることのできる年齢になり、俺たちはならなくてもいいと言ったが、ロディは結局局員になった。


 あいつは南の方で生まれた、ということしか分からず、正しい年齢も住んでいた場所も、親についても分からなかった。


 ロディは戸籍上、俺の義理の息子となり、活躍の日々を送っていた。つい先日まで。


 俺が学園に誰を潜入させるか悩んでいる時、教師として潜入しているケイゴ、という八年前に局に入った奴が、「ロディは学校に行ったことがないですよね?折角だし行かせてやったらどうですかね?」

と言ったこともあり、ロディに任務を与えた。


 ウルキアはロディに思うところがあるらしいがまぁそのうち大丈夫になるだろう。


 俺は書類を机に一旦置き、窓を開けた。


 

まだ冷たさのある、しかし春の温もりを感じる風が部屋を駆け回り書類を僅かに動かした。

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