余命30誤字脱字
誤字脱字の指摘に感謝して
「あなたの寿命はきっかり30誤字脱字です」
なろう作家の間に蔓延しはじめている奇病、文字数寿命症候群に罹患したらしい。
かかりつけの病院「大クリニック」の松戸医院長は、意図的なのだろうか?カルテに高級そうな万年筆で何事か書き込みながら俺に告げた。
「先生!それは、「あの」「文字数寿命症候群」なのでしょうか?」
「そうですね。それも、「なろう」作家のみが罹患する特殊なヤツです。貴方は「なろう」作家ですね?それもかなり長く続けておられる。最近は血液検査だけで簡単に判明するんですよ」
血液検査で「なろう」作家が判明する世の中になったのか…。医学の発展は恐ろしいものがある。
「で、私の残りの文字数をもう一度……」
陰鬱な表情で、でも何か楽しそうな目で松戸医院長は俺に告げた。
「きっかり30誤字脱字です」
「30文字!辞世の一首にすら足りない!宅配便の伝票すら書けない!」
「落ち着いて下さい。30「誤字脱字」です」
「はぁ?」
「貴方が「なろう」に投稿した作品に誤字脱字が30以上出た時点で寿命が尽きます」
「いや、普通に(なろう作家としての)寿命尽きますよ!そんだけ誤字脱字が多ければ!」
「一作品じゃないですよ?「全ての投稿」で30誤字脱字です。この瞬間にも貴方の投稿した作品の誤字脱字がチェックされているかも知れません。指摘が30超えたら即死ですよ?即死!悪いことは言いません。即時作品を削除。他サイトに移って下さい」
「そんな!「なろう」は俺の数少ない楽しみの1つなのに」
「命には替えられないでしょう?それに小説投稿サイトは「なろう」だけじゃないんじゃないですか?」
「はい…考えてみます」
このとき、俺は、まだ楽観していた。縁の下を這いずり回るようなランクの小説なんぞ、読む連中なんぞいないと思っていたからだ。
大クリニックからの帰り道、空を見上げた。抜けるような青色が網膜に焼き付いた瞬間。急激に意識が遠のいてゆくのを感じた。
皆様、誤字脱字の指摘。ありがとうございます…
もしかしたらコメディー?
「誤字脱字」入れるべきか、真剣に悩みました。
ええ、十二分に推敲してます。(たぶん)