中間 一話
「…う、ううん…。
ふわぁ…」
優奈が起き上がる。
「ん…ぅ。
ふ、あ、…おはよう。優奈。」
「おはよう。蓮。
私たち、一緒に寝ちゃったの?」
「そうかもなぁ…。
ここ、どこ…?」
二人が辺りを見渡すが、其処は真っ白の世界だった。
病院ではない。
「んー…?何処だろう。
あれ?蓮。着替えたの?」
蓮の服は真っ白のタンクトップとハーフパンツ。
「…?お前こそ。
真っ白だぞ。服。」
優奈の服も同じく、真っ白だった。
袖なしのワンピース。
「私たち…病院の…あれ?病院?
なんで病院になんて居たんだろう」
「病院…?俺も居た…けど…。
なんでだろうな…?」
二人が困惑していると、蓮の後ろから光が差し込んだ。
「れ、蓮…う、うしろ」
泣き出しそうな顔で、優奈が指を指す。
蓮が振り返ると、そこには優奈の顔とそっくりの17歳位の美人が居た。
彼女は白い服こそ着ていたが、その服には宝石やレースが付いていた。
髪は金色で宝石を纏い、高いヒールの靴を履いていた。
彼女はこの世界でただ一人、色彩があった。
《こんにちは。優奈。
貴女をずっと待っていたわ。
さぁ、一緒に行きましょう。立って。》
優奈そっくりの声で、彼女は手を差し伸べた。
「あなたは、だあれ…?」
優奈は立ち上がり、首を傾げながら言った。
《自己紹介がまだだったわね。
こんにちは。はじめまして。楪優奈としての貴方。
私は貴女の姉のルーナ。ルーナ・ミーティアよ。
貴方はトレーネ・ミーティア。》
「トレーネ…ミーティア。
それが、私の名前…?」
黒歴史ノートの主人公である優奈の名前もトレーネだったことを思い出した。
《そう。貴方は私の片割れ。
同じ創生神として一緒に生まれた、姉妹よ。
こんな所で説明するのも何だからね。ついて来なさい》
「は…はい。」
蓮も立ち上がり、一緒に行こうとした。
《所で、貴方は誰?
大方トレーネと一緒に死に、此方に来てしまったんでしょう?》
「お、俺は鈴原蓮です!
ゆ、優奈をどこに連れて行くんですか。俺も連れてってください!」
蓮は大声で話した。
今度はルーナが首を傾げ、手を叩いた。
その瞬間、ルーナと優奈の後ろに三人の女性が現れた。
揃いの白い服とカラフルな髪色。
それぞれ宝石が髪色に合わせて付いている。
赤髪の女性が蓮を樽抱きにし、ルーナに礼をした。
そして、優奈の前に来て、涙をこぼして言った。
《トレーネ様ぁ!お久しぶりです!
私、ずっと天界より反省しておりました!またお会いできて光栄ですわぁ!》
紅玉の瞳からは大量の滴が溢れ続ける。
「い、いえ…?
あの、私、トレーネとしての記憶が無いようで…」
《記憶が…!なんと、申し訳ありませんわ…。
私はルーナ様の次天使で、トレーネ様付きの天使でございましたわ。
ルーナ様に戻してもらって下さいね!》
(戻す…?)
「ねぇ、ルーナさま《ルーナお姉ちゃんと呼びなさい?トレーネの時はいつもそうだったわ》はい…る、ルーナ、お姉ちゃん…?その、記憶を戻すって…?」
《その話をする為に移動するのよ。
さぁ、ケルビム。その子は剣士にするわ。
鍛えてらっしゃい。決して魔法は教えては駄目よ》
《はい。心得ております我が主。
また後で!トレーネ様!》
ケムビムと呼ばれた赤髪の女性は姿を消した。
ケムビムと共に来た女性二人が前に歩み出て、ルーナとトレーネに礼をした。
《改めまして、初めまして優奈様。
私はルーナ様の首天使、セラフィムでございます。》
《初めましてぇ。私はルーナ様の三天使のソロネよぉ。よろしくねぇ》
青髪のしゃんとした女性と、緑髪のゆったりとした女性が挨拶をした。
《この子達は顎で使ってくれて大丈夫よ。
さぁ、行きましょう。》
瞬きをした瞬間、家具が置かれた色彩のある空間に転移した。
「ここは…ルーナお姉ちゃんのお部屋…?」
「そうよ。トレーネ。
ソロネ。飲み物を」
ルーナの発声法が変わった。
脳に響く様な声だった物が喉を使って話している。
「どうぞぉ。
トレーネ様。これは薔薇紅茶ですわぁ」
本物の宝石と、花を遇らう飾りの器を置き、ソロネは消えた。