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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第97話 嵐の前 その①

 第2試合終了から10分後、ようやく麗華(れいか)の情緒が落ち着いて、松山たちのもとへと帰ってきた。




「麗華殿、ファインプレーだったぞ!」




 刹那(せつな)が麗華に思い切り抱きついた。麗華は思わず驚いた。刹那からの抱擁を受けるとは思わなかったのであろう。実際松山も、刹那がそんなことをする娘だとは思っていなかった。麗華の瞳が再び潤む。




「そうだな、よくやったよ麗華。」




 そう言って松山も麗華を労う。これが決定打となり、麗華は再び号泣してしまい、第3試合の開始時刻が遅れることとなった。



―――




「ごめんなさい、2人ともありがとう。」




 涙を拭い、麗華は再び落ち着きを取り戻した。介抱してくれた松山と刹那に礼を告げる。




「麗華殿は、本当に姉と仲がいいんだな。」



「そ、そうかな。」



「そうでなければ、あんな難しい問題に正解できるわけがない。」



「・・・。」




 麗華と刹那の会話から、麗華自身は姉・芽奈(めいな)との絆にピンときていないように見えた。その絆は無意識のものであったのだと松山は悟った。「大好き~!」とか言って芽奈に抱きついていたというのに、何とも恐ろしい妹だ。




「しかし、芽奈さんが審判である以上、俺たちは勝てるんじゃあないか?」



「・・・そうですね、私の計算通りです。」




 ふふんといったドヤ顔で麗華は言う。計算通り、なんともフラグにしか聞こえない発言だが、気にしないでおこうと松山は胸にしまった。



―――




「ごめんねレイちゃん。ちょっと急用が出来ちゃって急いで帰らないといけないの。」




 そう言って芽奈は、第3試合が始まる前に帰ってしまった。やはりフラグだった。こんなにも早いフラグが回収は初めてだった。さっさと第3試合を始めていれば間に合ったかもしれないと、遅延の原因である麗華は己が行いを深く悔やんだ。泣き続けていた自分を愚かとまで罵倒した。



 なんにせよ妹贔屓(びいき)の神審判・芽奈はいなくなった。チーム・ジュリアスにとって大きな痛手だ。




「あ、一応代理の審判を呼んでおいたから安心してね。頑張ってレイちゃん!」




 芽奈は去り際にそう言っていた。芽奈の紹介ということで知り合いの可愛い女性でも来るのではないかと、(かす)かな甘い期待をしていた。しかし、それらしき人物はなかなか現れない。




 ただ待っていても(らち)があかないので、審判不在のまま次の試合の競技の抽選が行なわれた。その結果、第3試合は「料理対決」となった。代表者はリトル・プリンセス=ヒミコと、我らが天羽天斬(あもうてんざん) 刹那。どちらも料理の実力は未知数。見た目だけで言えば両者料理などできなさそう。だが人を見た目だけで判断してはいけない、内面を見るべきだ。とはいえ内面的に考えても料理はできないだろうな、と心の中で言う。




清波(せば)さ~ん、調理器具はここに置いておけばいいんすよね~?」



「あ、はい、そこで大丈夫です。料理研究会の皆さんありがとうございます。」




 待機中、バカみたいに真面目な応対をする英知の姿が目に映った。料理研究会の数名が大小様々な器具を持ってきては、それをグラウンドに運んでいる。やがて組み上げられ、簡易的なキッチンが完成した。



 どうやら料理対決はグラウンドで行なうようだ。家庭科室でも使えばいいものを、どうしてもグラウンドを使おうとする謎のこだわりは、しばらくの熟考を経ても松山は理解することはできなかった。




「遅れてごめんなさいね。」




 すると突如、校舎の方から聞き覚えの無い声が聞こえてきた。




「清波さんトコの芽奈ちゃんから頼まれて来ました。村雨学院高校非常勤講師、家庭科担当・利根(とね)ヶ原 八千代(やちよ)と申します。よろしく。」




 長い待機を強いられた末に、芽奈の代わりに審判としてやって来たのは、可愛い若い娘ではなく、名前のクセがすごいただのババアだった。


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