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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第96話 キズナの力


「秒速111.474m・・・」



「・・・え?」




 英知(えいち)は笑みを含んだ驚きを見せた。訳の分からない問題に対して自棄(ヤケ)になって苦し紛れの解答したのだろう。それが麗華(れいか)らしくもなく、何とも滑稽だったのだ。勝利に執着しすぎる姉を哀れとすら思った。



 だが1つ解せないことがあった。その解答の数値が何とも言えないほど具体的すぎたのだ。苦し紛れにしては割と事細かすぎる気がした。しかし、そんな違和感など大して気にならないくらいに、英知は()()()()という名の勝ちを確信していた。




「ファイナルアンサー?」




 芽奈(めいな)が某クイズ番組の某朝ズボ司会者みたいに、麗華の解答の確認をする。




「・・・ファイナルアンサー。」




 (ひね)り出すように回答を確定させた。夏を感じさせる熱風が、彼女らに触れる。


 しばらく間が空き、そして真剣そのものだった芽奈の表情が微笑ましいほどの笑顔に変わった。




「せーーーーいかーーーーーーい!!!」



「ええええええええええ!!??」




 芽奈の正解宣言に、芽奈と麗華以外の全てが驚き叫んだ。




「う、嘘だろ・・・。なぜ麗華姉さんにあんな難しい問題が解けるんだ・・・。少なくとも高校生が解けるレベルの問題なんかじゃあないはずだ。それに詳細な数値・・・偶然とも思えない・・・」




 英知がブツブツと独り言を漏らす。麗華が問題を解けたことに衝撃を受けるとともに、麗華を恐ろしいと感じ震えた。




「麗華姉さん、何故・・・」




 そう言って英知は麗華のほうを見る。麗華は嬉しさを噛みしめていたり、満面の笑みを浮かべているなどしていると思いきや違った。麗華は泣いていた。それは、幼い子どものように、小さく。なぜ問題に正解した、第2試合に勝利した麗華が泣いているのか、今の英知には理解できなかった。



 次の瞬間、麗華は芽奈のもとへ歩み寄り、抱擁した。




「・・・ぅう、ぅううう~~~」



「よ~しよし、よく頑張ったわね。」




 むせび泣く麗華を、芽奈は優しく包みこむ。それはまるで母と娘のように。




「わ、わたしぃ、怖かったのぉぉ・・・!芽奈姉さんが難しい物理の問題を出すって言うから、私を見放したって・・・私の味方をしてくれなくなったって・・・」




 麗華は落ち着かない情緒(じょうちょ)で芽奈に訴える。なかなか見られない光景であろう。




「でもぉ・・・本当はそうじゃなかった・・・。本当は見放していなかった、味方でいてくれた・・・。芽奈姉さんは、私に分かる問題を出してくれた・・・!」




 分かる問題を出してくれた、のカミングアウトに英知はすかさず口を挟んだ。




「なにぃ!?分かる問題だって?さてはアンタたち裏で打ち合わせでも・・・」



「・・・英知。」




 芽奈は口を挟む英知を鋭く睨みつける。まるで「いまレイちゃんが喋っているんだから口を挟むな、殺すぞ」と言われているような気がした。今にも心臓を抉り取られてしまいそうなほどのプレッシャーを放つ冷たい視線に、英知は口を閉ざした。




「芽奈姉さぁぁぁん!()()()()の劇中に出てきた問題を出題してくれてありがとおおおおお!!」



「よく覚えていたわね。そして、よく思い出したわね。偉いわ。」



「芽奈姉さんこそ、どうして私が見てるアニメに出てきた物理問題を・・・」



「レイちゃんがそのアニメ見てるってお姉ちゃん知ってるもの。あなたの見てるアニメは私も見てるわ。」



「そ、そうだったの・・・。それで、私に見覚えのある問題を・・・?」



「そうよ。私はあなたのことを一時だって見放したりなんてしないわ。ずっとあなたの味方よ。」



「・・・ぅうううう~~~!!あ~~~~ん芽奈姉さん大好き~~~~!!!!」



「・・・ぅ、私も大好きよ、レイちゃん!」




 しばらく姉妹だけの会話が続いた。終いには芽奈までつられて泣いてしまう始末。2人が何を言っているかはほとんど理解できない。だがただ1つ、この姉妹はちっぽけな価値観なんかでは推し量れないほどの絆で結ばれているのであるということは、誰からみても確かな事実であった。




 第2試合「計算対決」は、芽奈が『スターダスト・プリンス』という若き男性アイドルの成長と活躍を描く人気の深夜アニメの第6話「貶め竦め!頭脳破壊ブレイン・ブレイク作戦!」という回にて出題された物理問題と数値的に全く同じ問題を出題して、麗華がその答えを覚えていたため見事正解した結果、麗華すなわちチーム・ジュリアスの勝利で幕を閉じた。


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