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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第95話 鬼問の末に



「はい、じゃあ2人とも席について。」




 芽奈(めいな)は折りたたみテーブルとパイプ椅子だけの簡易な対決スペースに座るように指示した。




「・・・あぁ終わった。」




 英知(えいち)はわざとらしく言いながら席に着く。しかし終わってなどいないということは重々承知。彼の本心はこうだ。“残念だったな麗華(れいか)姉さん、この勝負は引き分けだ”。




「・・・。」




 一方の麗華はあくまで冷静に、何も発さず席に着く。本当は動揺に動揺しているのだが、それを必死に押し殺している。


 一見、麗華の方が有利に見えるが、実は本当に有利に立っているのは英知であることに、他のメンバー達は知らない。麗華も薄々とは感じていた、第2試合が引き分けで終わってしまうのでは無いかと。しかし気付いたところでどうしようもない。あくまで今の最善(ベスト)を尽くすべきだと、彼女は目の前の現実に向き合っていた。




「・・・それでは第2試合を始めるけど2人とも、今から私が読み上げる問題の答えを、机の上にある紙に解答してね。」




 芽奈の言葉に誰も反応はしなかった。本当は思っている、高校生に対し高みを目指すための物理問題を解かせる上に、その問題を口頭で伝えるなどマジモンの無理ゲーじゃねぇか、と。




「じゃあ読み上げるわね。」




 英知と麗華はこれから読み上げられる問題に対し、全神経を耳に集中させる。一応聞いておいてやろうという英知と、最後まで諦めない麗華。無情にもこの時点で精神的に勝利しているのは英知の方であった。


 芽奈がすーっとひといき入れると、やがて問題が読み上げられ始めた。




「問題、スカイツリーの頂上からミカンを落とすと、落下直前の速度はいくらになるか。スカイツリーの高さは634メートル、重力加速度は9.8と仮定する。」




 正気の沙汰ではなかった。口頭で伝えるような問題でもないし、そもそも高校生が挑むような問題でもなかった。もう何が分からないのかが分からないくらいに訳の分からない現実に、英知はもはや言葉を失った。と同時に、この第2試合はやはり()()()()()()()()という確信を持った。



 英知を含めこの場にいる誰もが、この問題の前に白旗を揚げていた。これは誰も理解できないと思った。だがその中にたった1人だけ、その問題に最後まで立ち向かおうとする者がいた。言うまでもなく、それは麗華であった。




 とりわけ、麗華に物理の問題を解くだけの知識があったわけではない。だがこの時彼女は、その物理の問題に対して「解けるかもしれない」という微々たる可能性を見いだしていたのだ。その自信がどこから生まれているのかは分からない。しかしこの難問を解くための要因が何かあるような気がしてならないのだ。



 麗華は考える。自分のこれまでの人生を振り返って、その何かを探し出す。するとそれは、意外にもあっさりと見つかった。




「秒速111.474m・・・」




 気がつくと麗華は小さく答えを呟いていた。方程式も途中式も何一つ分からないはずのに。


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