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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第94話 謎多き姉・清波 芽奈


「お待たせ~、買ってきたわ。」




 公平(フェア)を重んじるがあまり、芽奈(めいな)は問題集を新たに買ってきた。




「・・・で、各チーム代表者は決まった?」




 芽奈は問題集を買いに行く前に、(あらかじ)め代表者を決めておくように指示していたのだ。SeReKa(セレカ)からは英知、チーム・ジュリアスからは麗華(れいか)が代表者として選ばれた。2人はそれぞれ代表者であることを表明するために挙手する。それを確認した芽奈は早速と言わんばかりに買ってきた問題集を皆に見せる。




「はい、今回使用する問題集はこれよ。」



「・・・ん?」




 一同は目を疑った。そしてその表紙に書かれた文字を何度も脳内で暗唱する。しかし何度試みても「大学生のための高みを目指す物理学Ⅱ」としか読むことができなかった。




「いや、芽奈姉さん。僕ら高校生だよ。普通の高校生は大学生向けの物理学の参考書で高みを目指そうとは思わないよ。」




 英知が芽奈にもっともなツッコミを入れる。もはやそのツッコミに先ほどまでのキレはなく、なんともやる気の無い必要最低限のツッコミであった。




「何を言っているのよ、誰も分からない問題であれば公平じゃない。違う?」



「・・・。」




 言い返す言葉もなく、英知は地面に膝をついた。と同時に、ふと麗華の方を見た。全くの動揺を見せず、物理でもなんでも来いやと言わんばかりで、その表情に恐れがない。




「・・・待てよ。」




 英知は誰にも聞こえないくらいに小さな声でつぶやいた。それは、英知の中に爆発的な考察が生まれたがゆえのつぶやきであった。



 英知は違和感を覚えたのだ。なぜ文系の麗華姉さんが物理の問題を解くことに対してここまで冷静にいられるのか、と。そして英知は悟った。麗華の異様な冷静さの裏側に隠されている動揺の姿を。本当は普通の問題集で、弟との計算対決をしようとしていただろうに、あてが外れたのだろう。まさか物理の問題を解くことになろうとは思ってもいなかったのだろう。まぁそれが普通の考え方なのだろうが。



 これは逆にチャンスだ。両者とも不正解であればこの第2試合は引き分け。1試合のリードを保ったまま第3試合の進むことができる!英知は高揚していた。だがそれを表情に表さなかった。希望では無くあくまで絶望。物理計算を強いられるという現実に絶望しているスタンスの表情を維持していた。




 麗華は動揺しているという、英知のこの考察、実はドンピシャに的中していた。麗華は確かに動揺していたのだ。麗華自身にとっても、この展開は全くの予想外だった。


 

 この時麗華は、昔から感じているある事実を再実感した。




「芽奈姉さんはバカだ。」




 芽奈はバカ真面目なのだ。彼女の行いはいつだって正しい。それゆえ間違っているのだ。麗華や英知と比べて芽奈は少し軸がズレているのだ。何がおかしいのかというと困惑する。一体この姉は何がおかしいのかが分からないのだ。そういう気持ち悪い何かを日々絶妙にひしひしと感じていたが、それがいまこの瞬間に全身に襲いかかってきた。未だに謎多き姉、芽奈。麗華は非常に絶望していたが、それを表情に出さないように堪えていた。



 絶望の淵に立つ歓喜の英知。冷静を欠かさぬ動揺の麗華。現状弟が究極の形勢逆転を成し遂げたこの試合、果たして勝利するのはどちらなのか。


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