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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第93話 慈悲なき妹原理主義政権

 色々あって、麗華(れいか)たちの姉・芽奈(めいな)が新たな審判に採用された。




「とりあえず、私が審判をすればいいのね?がんばってレイちゃん!」




 就任早々公平(フェア)とは思えない発言をする新審判。更迭(こうてつ)しようにも代わりの審判がいないので、渋々従うしかないといった表情で、SeReKa(セレカ)の3人は立ちすくむ。




「・・・で、今から何の試合をするの?」




 何も知らされていない芽奈は困ったように周囲を見渡す。英知(えいち)は芽奈に「第2試合候補競技カード」を差し出す。




「えーと、『熱血熱湯バケツリレー』、『地匍(ちば)いの交響曲(シンフォニア)』、『ハートブレイク戦争』、『頭脳戦!計算対決』・・・」




 カードに書かれた競技名を口にしながら、優しさを欠くことはせず、だが不満を表した表情で、英知に提案をする。




「なんだか、ほとんど野蛮な競技だから、この『計算対決』のやつにしましょう?」



「ふぁっ!?」




 競技をランダムで決定することすら放棄した新審判に、麗華はニヤリと微笑む。それもそのはず、この『計算対決』の競技を考えたのは麗華である。麗華と同じく野蛮な行為が嫌いな芽奈ならば、羅列される野蛮競技を見せられて、消去法で『計算対決』を選ぶだろうと考察したのだ。そしてそれが見事的中した。



 麗華は自分の行いを賞賛した。この4番勝負の前、英知に「何か競技を考えてくれ」と釈然としない課題を課せられた際に考えたこの競技が、今自分たちに有利に働く形で役に立ったのだ。純粋な考えは時として強力な光として闇を討つのだと麗華はこの時実感した。


 そして芽奈に対して、こんなくだらないことに付き合わせてしまって申し訳ないという謝罪と、力になってくれてありがとうという感謝の気持ちが交差した。この()()()不安定な理想を現実のものとして実現させたのは何物でもない、この姉妹の固い信頼関係である。




「いや待ってくれ芽奈姉さん、それは公平性の観点から見て正常な判断ではない。計算対決の競技を考えたのは麗華姉さんだ。一方の提案する競技を独断で決定するのは審判として良い行いではないんじゃないのか?」




 英知にしてはわりとまともな発言をした方だが、相手が悪かった。『麗華が考えた競技』というワードを聞いた時点で、その後の発言内容はとっくに聞こえていなかった。




「レイちゃんの考えた競技だったの!?さすがレイちゃん、優しい競技を思いつくわね。じゃあこの競技に決定!」




 もはやヒットラーの独裁政治である。自分が悪だと自覚していないという邪知暴虐(じゃちぼうぎゃく)さ、天使のような優しい外見からは想像も出来ない不可侵領域であった。誰も芽奈のシスコン判定に異議を唱えることはできなかった。




「じゃあセカンドピリオド、計算ゲームのルールを説明するわね。」




 第2試合でもなければ計算対決でもない。色々と芽奈の言葉に相違があったが、もうこの審判に対して細かいことを気にしていてはやっていられないような空気が漂っていた。




「ルールは簡単、相手よりも先に与えられた計算問題を解くだけ!・・・で、いいのよね?」




 ルール説明はこんな感じでいいのか、と訴えかけるような眼差しに、英知は反応して、補足説明をする。




「えーと、使用する教材はこちらの『中学2年のための計算ワーク』というやつで・・・」



「待った。」




 芽奈の鋭い割り込みに、英知の補足説明は遮られる。




「・・・なにか?」



「それは誰が用意した教材なの?」



「え、まぁ僕だけど。」



「それは公平じゃないわね。(あらかじ)め答えを全暗記している可能性があるわ。私が新しく買ってくるわ。」



「・・・。」




 一切の拒否を許さないといわんばかりの暗黒大天使の横暴に、もうどうにでもなれという諦めムードがSeReKaの中に生まれた。この横暴さには、さすがの麗華も若干引いた。


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