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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第89話 フォールダウン

 松山と天海(てんかい)はスタートラインに立つ。両者準備運動(ウォーミングアップ)を入念に行なっている間に英知が軽くルール説明をする。




「ルールは至って簡単。先にこの200mトラックを1周した者の勝ち!以上!!」




 普通だった。このバカ共のことだから変なルールでも用意されているのではなかろうかと予想していたのだが、考えすぎだったか。



 ところで、相手はなかなかの実力者と聞く。しかしそれは中学時代の話だ。奴はいまSeReKa(セレカ)に所属するただの陰キャ。恐るるに足らん。こいつになら勝てる。




「・・・アンタいま、俺になら勝てるって思っているだろう。」




 軽く笑みを浮かべる天海に心を読まれ、松山は戦慄した。隣で準備運動を行なう天海が鋭い目つきでこちらを見ている。




「・・・どうしてそう思う?」



「どうしてもこうしても、アンタ顔に出てるんだよ。」




 うーん、陰キャに心を読まれると無性に腹が立つ。生意気なガキだ。




「まぁ俺にもブランクがあるからな、少々不利かもしれん。だがな、1つだけ言っておく。勝敗を決するのは必ずしも()()()()()()()()()()のだよ・・・」



「・・・。」




 天海は、なにやら不敵な笑みで意味ありげなことを言ってきた。どうせ中二心に任せてカッコつけてるんだろと、この時はそう思っては油断していた。




「両者、準備はいいか!?」



「おうよ!!!」



「・・・大丈夫だ。」




 元気な返事の天海と、冷静な返事の松山。いよいよ勝負の火蓋(ひぶた)が切って落とされようとしていた。




「ではこれより、第1試合を始める!!互いの誇りを賭け戦ってほしい。」




 誇りなんてない。ただ、負けないために戦うのだ。刹那(せつな)の涙を無駄にしないために戦うのだ。それを胸に松山はクラウチングの構えをとる。ふと天海のほうに目をやると、彼は構えていなかった。棒立ち、圧倒的棒立ちであった。よほど余裕があるのだろうか、バカにされているような気がしてならない。




「ずいぶんと余裕なんだな。」



「そんなつもりはないのだが、不快な思いをさせてしまったのならば申し訳ない。」



「・・・ちっ」




 つくづくイライラさせてくる野郎だ、絶対に負かしてやる。




「位置について・・・よ~~~い・・・」




 気持ちの良い陽光がグラウンドを照らす。いたずらな雲が太陽を遮ったその瞬間、英知が放つ空砲の音が響いた。




「どん!!!」




 両者地面を思い切り蹴り上げ、勢いよく走り出す。クラウチングスタートをした松山が若干のリードを奪った。



 50m地点を通過する頃には、天海に5mほどリードして走っていた。




「いける、頑張れ松山殿!!」




 活気ある表情で刹那が応援する。その応援を走りながら耳にした松山は、心で思った。安心しろ、俺は必ず勝利する、と。



 その直後、その思いを伏線(フラグ)にさせんとばかりに、松山は姿を消した。正確に言えば、()()()()()()()()()()に落ちたのだ。いわゆる落とし穴である。




「えっ・・・」



「なに、どうしたの?」




 刹那と麗華は状況を読み込めずにいる。困惑している2人をよそに、英知とヒミコは微笑を浮かべている。



 松山は落とし穴に落ちる瞬間、走り去りながら嘲笑(ちょうしょう)する天海の顔を見た。それを見て確信した。これは奴らの罠なのだと。だが、奴らが穴を掘っているところを確認したわけではないので、確固たる証拠はない。



 それゆえ松山は理解した。これは真剣勝負なんかじゃあない。これは相手を(おとし)める、イカサマの勝負であると。


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