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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter6 愚者たちは聖戦に詠う
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第86話 なんでもなんて、したくない。

「・・・まぁ少々感情的になってしまって支離滅裂(しりめつれつ)な会話になってしまったと今でも公開している。その場の勢いで話を進めてしまった感は否めない。」




 2人が状況を把握しきれてないうちに、刹那(せつな)がひとり反省をする。表情は依然固いままだが。




「・・・私の勝手な都合で、君たち・・・あなた方をこのような面倒事に巻き込んでしまい・・・申し訳ない。」




 そんな刹那が少し申し訳なさそうな表情になり、その口から謝罪の言葉が紡がれた。口調は強気から丁寧へとシフトしてきている。松山はなんとなく察した。冷淡でプライドの高い人間のように思っていたが、実際はそうではないのかもしれない。本当は素直になれないだけの普通の女の子なのかもしれないと。




「・・・まぁ要するに、喧嘩して決着つけようと勝負することになって、勝者にはSeReKa(セレカ)が正式な同好会になるかどうかの権限が与えられるということでいいの?」




 麗華(れいか)が不安げに要約する。刹那は小さく頷いた。どうやら合っているらしい。




「その、本当はこんな無駄なことはしないほうがいいって分かってる。でも、張本人が今更そんなこと言ってやめようなんて都合が良すぎる。これは私の責任・・・」




 としばらく寡黙感をかもしだしていた刹那が長々と話し始める。それは、松山と麗華に巻き込んで申し訳ないという心からの謝罪の気持ちを遠回しに伝えつつ、普段から(本人曰く)プライドの高いクール系キャラを装っているが故にこの勝負に対して後には退けないといったような様々な葛藤と戦っていることを何気なく主張し、自分に非がないようにしようとしているように見えなくもない言い訳まがいの釈明のようなものを伸ばしに伸ばしたものだった。




「・・・本当にごめんなさい。」




 謝罪に一通り区切りが付いた。謝罪も素直なものとなり、いつの間にか優しい口調になってきている気がする。




「・・・私は全然構わないわ。」




 麗華が刹那の肩に手を置いて優しく言った。




「私たちが勝てば、SeReKaは正式な同好会になるのを諦めるんでしょう?なら、私は戦う。」




 麗華はクールな眼差しで刹那に言う。それは麗華なりの刹那に対するフォローであった。刹那は小さく「ありがとう」とつぶやいた。



 麗華がしたように、刹那を慰めては励ましたほうがいいだろうと思った。だが、松山は1つだけおぼえた違和感が腑に落ちないでいた。それを本人に直接告げる。




「刹那さん、1つ聞いていいかな。」



「・・・はい。」



「今君はとても不安そうな表情をしている。しかしその不安は、とてもじゃないが先ほどの君の話の中に含まれているとは思えない。俺たちをこの勝負に巻き込んだこと、SeReKaが正式な同好会になってしまうこと、そんな程度の不安なんかじゃあない。一体君は、いま何に怯えているんだい。」




 そう、無表情で冷静そうだった刹那が、話していく内にだんだん不安そうな表情になってきていたのだ。それを察した松山が優しく刹那に尋ねた。




「別に、そんなこと・・・」



「そんなことある。何に怯えているのかを教えてくれなければ、俺は帰るよ。」




 否定する刹那に対し、松山は少し冷たく言い放つ。




「どうして・・・」



「君の怯えてる理由が、俺の戦う動機になるかもしれないからだ。」



「・・・!」




 松山がまっすぐな目で刹那を見つめると、彼女は咄嗟に目線を下に向けた。なにか隠し事をする刹那には、その誠実な視線を正面から受けることができなかったのだ。少しして、顔を上げた刹那は松山にスマホを手渡した。スマホの画面には先ほどの会話の続きが記されていた。






*ルシ@堕天*:あと一応確認だけどさ、4番勝負ってことは勝負を仕掛けてきた方はもう1つ条件あるのは知ってるよね。負けたら何でも1つ言うことを聞く、ってな。



刹那☆椿推し:あ?知っとるわ。そんなん言うとる暇あったら自分の心配しとけ。覚悟しとけよお前。



*ルシ@堕天*:ならええけど。






「・・・そういうことか。」




 松山は理解した。刹那は『負けたら何でも1つ言うことを聞く』という条件に怯えていたのだと。合点がいき、スマホの画面から目を離すと、松山は眼前の異変に気がついた。刹那が泣いていたのだ。




「・・・ぅ、わ、私、何でもなんて・・・したく、ないよぉ・・・」




 目の前に、年上だろうが関係なく口を利くクールでプライドの高い刹那の姿はなかった。自分の感情に素直で、これから起こりうる恐怖に怯える、いたって普通の女の子の姿がそこにはあった。



 松山は思った。この子のためにも、勝たなければならないと。松山は刹那に誓う。




「安心しろ、絶対に君を負けさせはしない。」




 その涙を、無駄にさせないためにも。


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