第84話 プライドは捨てるもの
「・・・え、その、えーと」
「退がれ。いつお前が代表者になったのだ。」
天羽天斬 刹那がきつい口調で松山に言う。状況整理のできないまま、松山は言われるがまま後ろに退がる。
「・・・ゴホン、ではSeReKaの代表は私英知でございます。ではいざ尋常に・・・」
仕切り直しのように咳き込み、英知がジャンケン体勢に入る。ていうかお前ルシファーじゃなかったのかよ。設定はちゃんと貫けよ。
「さーいしょーはグー、ジャーンケーン・・・」
英知のかけ声で、天羽天斬 刹那と英知の両者は手を出す。結果は英知の勝利だった。
「・・・。」
天羽天斬 刹那は負けを認め、無言で退がる。英知はふふん、と渾身のどや顔で立ち尽くしている。なんだこいつ、たかだかジャンケンに勝ったくらいで・・・
「ではシャッフルは君たちがやってくれ。」
そう言って英知は松山に4枚のカードを渡す。ていうかお前らさっきから教師に向かってタメ口ってどういうことだコラ。
松山は雑にシャッフルをしたあと、英知に裏を向けてカードを差し出す。英知は松山から見て1番左のカードを選び、確認した。
「・・・第1試合は『修羅の道!疾走六千六百寸』に決定!!」
「・・・よし!!」
英知の発表に、火之迦具土神もといカグツチがガッツポーズをする。あぁ、この競技はお前のリクエストか。
「・・・ちっ。」
天羽天斬 刹那が小さく露骨に舌打ちをする。不得意な競技なのだろうか。というか、そもそも疾走六千六百寸ってなんだ。
「それでは、各チーム1人ランナーを決め、ミーティングを行なったあと、グラウンドに集合してください!」
そう言った英知含むSeReKaの3人はミーティングのため松山たちから距離をとった。ようやく訪れたミーティングという休憩時間に、松山は安堵の表情を浮かべた。
―――――
というわけで松山たち3人は校舎の陰にあるベンチに座り、一息ついた。さて色々質問しなければならないことがあるのだが・・・まずは、
「なんだこの企画。」
冷静に、最も疑問に抱いていたことをつぶやいた。
「すみません、松山先生。私も昨日いきなり知らされて、急に参加することになりまして・・・」
麗華が謝罪をする。昨日知らされたということは、状況は自分と同じか。で、もう1人のこの子は一体・・・
「えーと、君も・・・」
松山は恐る恐る天羽天斬 刹那に声をかける。次の疑問はこの少女だ。
「・・・君じゃない、天羽天斬 刹那だ。」
君、と呼ばれたことが気に入らなかったのか、天羽天斬 刹那は再び名乗る。面倒くさい女子だな・・・
「・・・すみません。えーと、天羽天斬さん?」
「名字はやめろ。名前で呼べ。刹那、刹那と呼べ。」
分かった。この子、めちゃくちゃ面倒くさい。冷淡で口が悪く、態度も悪い。教師ぞ?こっち教師ぞ?
「刹那も・・・」
「刹那『さん』!!」
「・・・っ、刹那さんも急に参加させられたんですか!?」
プライドを捨て、松山は年下相手に従順になる。真の大人とは、非情な現実を受け入れること。松山はそう自分に言い聞かせた。
「・・・私だ。」
「・・・?」
質問の答えに合わない回答をしてきた刹那。しばし無言が続き、ため息のあと、刹那は言った。
「・・・この勝負の発端は私だ。」




