第77話 Escape and search on nurse
「英知!病院の廊下を走るんじゃないわよ!」
「麗華姉さんだって走ってるじゃないか!」
「ちがっ、これは、は、早歩きよ!」
「じゃあ僕も早歩きだもんね!!お先!」
「あっ、待てコラーーー!」
ごちゃごちゃ言いながら、2人は病院の廊下を走る!
時はお昼。朝一で病院にやって来て、その後面会時間を待っている間に2人とも眠ってしまったのだ。2人とも朝早く起きて、その上全力で自転車を漕いだから、疲れてしまったのだろう。目が覚めるとお察しの通り、正午ごろになってしまっていた。
まぁ、なにはともあれ昼になってしまったが、急いで松山のいる病室へ向かう。皮肉にも廊下を走ったおかげで、あっという間に病室に辿り着いた。
「「松山先生!!」」
病室に入るやいなや、疲労困憊の麗華と英知両者が叫ぶ。しかし、
「「・・・あれ?」」
昨日いたはずの松山が病室にいないことに気づいた。ベッドも綺麗に整っていてどこかに外出していると考えるのも難しい。それはまるで、もうその患者がいなくなってしまったような様子に見えた。2人は青ざめた。
「「あぁぁぁぁぁぁぁ!!???」」
「ど、どうされましたか?」
病院内とは思えない悲鳴を耳にして、ナースの朝倉 姫紀が何事かと心配そうに病室にやって来た。
「先生は!松山先生はどこですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「誰だ!誰が松や・・・ゼウスを隠伏したんだ!?答えろ!!」
「え、いや、あの、何を・・・」
泣きながらすがりつく2人に、姫紀は困惑する。
「医療ミスですか!?事実隠蔽ですか!?返してっ、松山先生を返してよ!!」
「誰が殺した?魔界断罪委員会か、残光の十字軍か!?答えろ!!」
「いや、あの、死んでない、ちょっと、やめ・・・」
死んだと思い込んでいる2人は怒りと悲しみの混じる感情を、姫紀にぶつける。
「最高裁いきますか!?出るとこ出ましょうか!?法廷!法廷で会いましょうか!?」
「裁きを下すッ!悔!無!怨!魅!死!克!散滅の黒咆!!」
「うるせぇ!!!!」
支離滅裂な怒りを一方的にぶつけられ続ける姫紀に、怒りの限界が来るのは遅くはなかった。キレた姫紀はシンプルに怒鳴った。
「うるせぇな、うるせぇよ!!!」
言い聞かせるように姫紀は怒鳴る。流石は元ヤンと言ったところであろうか。先ほどまで虎のように感情をむき出しにオラオラと文句を叫んでいた2人が、悪さした子どものように縮こまってしまった。
「ていうかお前らさっきも廊下走ってただろコラァ!他の病人どもに迷惑だろうがボケが!!あァん!?どういうつもりじゃボケコラカス!!!」
「ボケコラカスはお前だ。」
キレる姫紀に一喝が入る。その正体は上司の那須野だった。
「な、那須野さん!?」
那須野の表情は笑っているが、姫紀には安易に分かった。那須野が心の奥底でとんでもないほど怒っていると。
「し、し、失礼をばいたしましたぁぁぁぁぁ!!!」
姫紀は見舞い人の2人(?)に土下座をし、早歩きで逃げていった。
「失礼しました。彼女は私の後輩で、ああいう面もあるけど、内面はとってもいい子なんですよ?」
那須野が2人にフォローするが、2人は信用ならない。あれはナースではない、修羅だ。それに一喝加えるアンタもまた修羅なり。
「松山さんはね、退院したの。」
突如発せられた事実に、2人は驚いた。
「え、た、退院?退院って言いました?」
「死んでない?死んでない?」
「えぇ、死んでません。元気でしたよ。」
死んでない、という情報を知った2人は安堵した。先ほどまで不穏に満ちていた2人の表情はニッコリ笑顔になった。
「あと、退院するなり海に行くとか言ってたわね。蒼島海岸・・・って」
「海・・・」
「蒼島海岸・・・」
突如、那須野の発言から情報を得た2人は目の色を変えて走って去って行った。




