第74話 忙朝
ミツルが入院してから1日が経過した。先日と同様、見事な晴天を迎えていた。
本日は土曜日、つまり高校はお休み。全国の高校生諸君は大人達が定めた“ゆとり教育”の影響を受け、それによる皮肉めいた恩恵に心を躍らせているであろうと安易に想像ができるのだが、それに該当しない者がいた。
その者の名は清波 麗華。村雨学院高校の生徒会長を務める少女だ。彼女は一抹の不安を抱えながら、病院に向けて自転車を漕いでいる。その理由は…
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急がなければ、「奴ら」がまた記憶改変をしてしまう前に・・・
昨日の夜、英知の部屋からこっそり聞いてしまった、「今日は失敗してしまったが、明日は朝一で病院に行って作戦を決行するぞ。」と。そして朝一で家を出た。私は知っている。恐らくまた部活動申請のために松山先生を利用しようとしているのだろうと。
本当にどうしようもない弟。吐き気をもよおす邪悪とは、何も知らない無知なる者を利用すること、と英知に借りた本で読んだことがある。まさにその通り、あなたたちがやろうとしていることは正にそれよ。
怪しげな活動を正式な部にすることを許可できないという考えは生徒会長である私も同じ。ゆえに私はあなたたちの幻想を打ち砕く。穏便にね。
べ、別に松山先生に早く会いに行きたいとかじゃないし・・・
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急がなければ、「姉さん」に邪魔をされてしまう前に・・・
昨日の夜、部屋で“2人”と明日の作戦の計画を立てている時、僕は感じた。麗華姉さんに、この情報が漏れているのでないかと。昨日だって麗華姉さんは我々の作戦の最中にやって来て妨害してきた。それはまるで、情報がどこから漏れたか、あらかじめ分かっていたかのように。
そこから僕は1つの仮定を立てた。麗華姉さんは「能力者」なのではないかと。他人の心を読む能力、つまり「心読」を使うことができる「心読者」だとすれば、麗華姉さんが今回も作戦の情報を既に得ていて、我々を妨げる壁となることも安易に想像出来る。
ゆえに、僕は今日は朝6時に家を出た。僕が朝に弱いことを麗華姉さんは知っていて、僕がそんな早く家を出るなんて考えてなくて油断しているはずだからだ。
案の定、家を出る時点では麗華姉さんはまだ寝ていた。先手必勝とはこのことよ。麗華姉さんが寝ている間に、僕は病院へと辿り着く・・・!
SeReKaの悲願成就のために・・・!
穏やかな土曜の朝に、清波姉弟は互いに思考を巡らせ、各々病院に向けて自転車を漕いでいた。現状、麗華は英知に20分の遅れをとっている。これは英知の予想外の早起きに油断した麗華の凡ミスだった。
英知の病院までの距離残り3km。果たして麗華は、英知の謀略を阻止することが出来るのか!?




