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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter5 追憶の航路
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第68話 反省するなら金をくれ

「あぁ、誰だとぉ?忘れたとは言わせねぇぞボケがぁ!!」



 刈上げ坊主の男が怒鳴りながらミツルに顔を近づける。



「ひぃっ、すみません!」


「おぁ、なんだこいつぅ、だっさ!」



 弱い声をあげるミツルを見て男たちは大声をあげて笑う。



「まぁまぁ、彼は記憶喪失らしいから勘弁してやろうぜ。よう、悪ぃな。俺は御手洗ってんだ。御手洗 竜騎(みたらし りゅうき)。まぁ言っても覚えてねぇんだろうけどさ。まぁみんなのリーダーって感じだな。」



 さわやかな男「御手洗 竜騎」がミツルに馴れ馴れしく絡む。その顔に恐ろしさはなく、むしろ少し優しさを感じるほどだ。



「は、はぁ御手洗さんですか。一体どのようなご用で?」


「ん、そうそう。きょう俺たちはアンタとお話をするために来たんだ。お~い入ってきてくれ~」



 御手洗はそう言って廊下にいる1人の仲間を呼ぶ。松葉杖(まつばづえ)をついてゆっくりと部屋に入ってきた仲間の男は全身を包帯で巻かれており、その顔をはっきり確認することはできない。



「見ての通り彼は大きな怪我を負っている。名前は木下ヤスユキ。少し前に全身を複雑骨折し最近やっと歩けるようになったんだ。と言っても松葉杖頼りだけど。」


「そんな・・・、それは大変ですね。事故かなにかに()われたんですか?」


「お前にやられたんだよ。」



 ミツルの純粋な問いに、御手洗の先ほどまで優しさを含んだ表情が一気に豹変(ひょうへん)し、ミツルに冷たく言い放つ。



「ぼ、僕が彼に怪我を・・・!?そ、そんなことするわけ・・・!」


「したんだよ。お前がヤスユキに金をよこせと(おど)して、嫌だと抵抗するヤスユキをボコって、その挙句(あげく)建物の2階から突き落としたんだよ。」



 御手洗がヤスユキの負傷原因をミツルに告げるが、これはまったくのデタラメである。



「う、嘘だ・・・。」


「お前が嘘だ何だ言おうと、事実は事実なんだよ。俺の仲間全員が証人だ。いいか、きょうはお前に損害賠償を払ってもらうために来た。」



 偽りの事実を受け止められずにいるミツルに、御手洗は話を本題に移す。金の話だ。



賠償額(ばいしょうがく)は5000万。来週までに払え。そしてヤスユキに謝罪しろ。頭を地面につけてなぁ。」


「ごっ、5000万!?」



 御手洗から告げられた5000万円という賠償額に、ミツルは思わず大声をあげる。とどのつまり、彼ら(クレイジーデッド)は記憶喪失のミツルを利用して金をむしり取ろうとしているのだ。



「ちょ、ちょっと待って下さい!そんな、5000万円なんてお金たぶん持ってないし・・・それにあなたの話が本当なのかも分からないし!第一そんな大事な話をそちらのペースで勝手に進めないで下さいよ!」



 非常に混乱しているものの、ミツルの思考能力は実に正常に働いていた。ぐうの音も出ない正論が御手洗に刺さる。



「ふざけんのも大概にしろよ!てめぇが忘れているからって事実は事実なんだよ!てめぇが怪我させたっていう事実があるから俺たちはわざわざここに来たんだよ!事実があるから金払えって言ってんだよ!悪いことしたヤツが裁かれんのは当然だろうが!たとえそいつが何も覚えて無くても、俺たちは覚えてんだからよ!!」



 御手洗が目の色を変えてミツルにたたみかける。何を言っているのかはイマイチ理解できなかったが、ミツルはその勢いに圧倒され、何も言い返せなくなってしまった。



「・・・。」


「おい、何黙ってんだよ。なんか言ってみろよオイ!!」


「・・・。」


「・・・一発殴らねぇと分からねーみたいだな。」



 御手洗はミツルの襟首(えりくび)を掴み、力を込めて殴ろうとする。



「この一発は、ヤスユキの恨みだァァァァァ!!!!」


「やめろ!!!!!」



 横から入ってきた「やめろ」の声に、御手洗は殴ろうとしていた手を止め、視線を横に向ける。

 そこには乱れた息を整えながら、病室と廊下の間で膝に手を置いて立っているナースの那須野(なすの)の姿があった。


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