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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter5 追憶の航路
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第60話 期待に免じて

「2人ともさぁ、あの人いま一時的とはいえ記憶を失っているって知ってるよね。」



 榊原(さかきばら)は例によって患者のいない診断室の椅子に座りながら、目の前に立っている朝倉 姫紀(あさくら ひめき)那須野 神奈(な す の  かんな)に説教をしている。



「で、もし変に衝撃を与えてしまったら、本当に記憶を失ったり、改変されてしまうって知ってるよね?とくに那須野さん、さっきアンタにも言ったよね。」


「私は朝倉に注意しただけです!」



 那須野は納得いかない表情で弁明する。しかし、榊原は笑みを絶やすことなく続ける。



「そもそも朝倉くんの不手際は君の管理不行き届きだよね。その上、アレ注意っていうかどちらかというと脅しだよね。声張ってたしね。松山さんをはじめ、周りの患者さんもびっくりしちゃったからね。」


「すみません榊原さん!アタシがついうっかりマジギレしちゃっただけなんです!前々から那須野さんに注意されてたのに、アタシが勝手に暴走しちゃって・・・那須野さんは悪くないんです!全部私の責任です。本当に申し訳ありません!」



 榊原の怒濤(どとう)叱咤(しった)に対し、姫紀が那須野をフォローをする。元ヤンとは思えないほどの謝罪スキルに、隣で聞いてた那須野は衝撃のあまり目頭を熱くしていた。しかしそれだけの謝罪で榊原が彼女のことを許してくれるとは思えないということを、那須野はよく理解していた。



「仕方ないなぁ。まぁ、朝倉くんの若さとこれからへの期待と()()()()()()()()()に免じて許してあげよう。」


「え・・・?」



 よく理解していたと自負していた那須野は、榊原の口から発せられた台詞に驚愕した。



「・・・榊原さん、いまゴスロリ服への期待って言いました?」


「・・・朝倉くん、君はもう仕事に戻りなさい。くれぐれも患者さんを怖がらせないようにね。」


「あ、はい!わかりました!」



 そう言って、姫紀は笑みを浮かべながら診断室を後にする。診断室には榊原と那須野の2人だけが残る。



「あの、私は・・・許していただけるんでしょうか?」



 那須野は恐る恐る尋ねる。榊原は少し間をあけ、ゆっくりと口を開く。



「さっきの言葉・・・忘れてくれると誓うかい?」



 恐ろしく低いトーンで放たれた榊原の言葉が、那須野にはいまいち理解できず聞き返す。



「え、“さっきの言葉”とはどの言葉のことでしょうか?」


「・・・リ・・・の・・・い。」


「え、あの、もう一回お願いしま・・・」


「ゴスロリ服への期待だよ!!!」



 榊原の怒号が診断室に響き、やがて静寂を迎える。しかしゴスロリ服への期待、というワードが那須野の脳内に響く。やはり聞き間違いではなかった。



「あー、はい“ゴスロリ服への期待”ですね。わ、わかりました。っ忘れます。ぬ、二度と口にしませんぅふっ。」



 那須野は誓った。彼女の胸の中に宿る、爆笑という名の悪魔を必死に抑えながら。



「・・・そうか。君のその覚悟に免じて許してあげよう。仕事に戻りなさい。」



 ゲッソリしている榊原はあっさり那須野を許した。那須野はその言葉に従い、仕事に戻ろうとする。しかし彼女が診断室を出ようとすると、再び榊原が声をかけてきた。



「ちなみに君は何歳だったかね。」



 謎の質問を受けた那須野は、少し戸惑ったがすぐに彼の質問に答えた。



「・・・28です。」


「あー・・・ダメだなぁ。」



 あからさまに残念そうな表情の榊原はそう言うと「あーじゃあ今度こそ戻っていいよ」と吐き捨てた。那須野は僅かな不快感を抱きながら、部屋を去った。



 診断室に1人残った榊原は、小さくつぶやく。



「・・・アラサーのゴスロリは見たくねぇな。」


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