第59話 SHOCK OF NURSE
ミツルは、昼食を口にしながら胸のモヤモヤに悩んでいた。そのモヤモヤを解消するために最寄りのナースに質問をする。
「す、すみません。これって何ですか?」
ミツルは人差し指を「これ」に向ける。それを見たナースは優しく答える。
「それはララクラッシュですよ。」
「らら・・・くら?」
「ララクラッシュ。」
「らな・・・ふら?」
「・・・ララクラッシュ。」
「ふぁっ、はにゃ・・・まっしゅぬ?」
その数秒後、わずかな沈黙が続き、やがてそのナースの顔から優しさが、消えた。
「てめぇいい加減にしろや!!なんで最初は惜しかったのにだんだんララクラッシュとは程遠い何かに変貌していってんだよ!!わざとか?わざとなのか!?そうやって世間の荒波に飲まれたせいで生じる鬱憤を発散しようとしてんのかアァァ!??ぶっ殺すぞ!!!!」
ナースは昭和のヤンキーみたいな形相で、ミツルに対してナースが患者に言ってはいけないであろうワード1位に入るくらいの台詞をぶつけた。それもそのはず、そのナース「朝倉 姫紀」は高校時代バリバリのヤンキーだったのだ。
「強者こそが正義」という座右の銘のもと、気に入らない相手を叩きのめしていた。生徒や教員からは「女を着たジェイソン」と呼ばれ、ご近所や町内会の皆さんからは、「新種の人類」と呼ばれるくらいに恐れられていた女ヤンキーであった。
そんな彼女のヤンキースタイルは、世間一般にイメージされるスタイルとはかけ離れていた。まず服装。制服のボタンを外す、袖をギザギザに切るなど、制服を自分なりに改造して着こなしたりするのが世間一般のヤンキーだ。だが、彼女の場合は「ゴスロリ服」を着てくる。これが姫紀のスタイルだった。理由は彼女曰く「強さが滲み出ているから」らしい。
次に髪型。金髪に染めたりリーゼントにしたり、はたまた角刈りの上にEXILEのTAKAHIROじゃない方のヴォーカルみたいな感じに剃り込みを入れたりするのが世間一般のヤンキーだ。だが、彼女の場合は毎日違ったウィッグを付けてくる。ツインテとかセミロングとか。理由は彼女曰く「毎日進化してるようで格好いいから」らしい。
次に武器。金属バット、竹刀、ヨーヨー、鉄アレイなど凶暴なものを常に携帯しているのが世間一般のヤンキーだ。だが、彼女の場合は常に日本刀を携帯している。理由は彼女曰く「最近パパが買ってくれたから」らしい。周りの教員に「銃刀法違反で捕まるからやめなさい。」と恐る恐る注意されたが「ここは日本じゃねぇ、戦場だ!」とガチギレすることによって難を逃れていた。
そんな彼女が何故ナースとして働くようになったのかというと・・・
「あ~~さ~~く~~ら~~~!!!!!」
・・・と突如、ミツルと姫紀の下に、怒りに満ちた表情の那須野が叫びながらやってきた。
「ひぇっ那須野先輩・・・!」
先ほどまで強靱なオーラを放っていた姫紀が、那須野の登場により小さくなった。
「おぉい朝倉ァ、言ったよなぁ、患者に対してキレるなって・・・」
那須野が小さく呟く。
「あの、その、こ、こいつがふざけてたから・・・」
「ふざけてたからって患者にキレていい理由にはならねぇだろうがボケコラカスゥ!!」
「ひいっ、すいません!」
さっきまで強気だった姫紀が恐怖のあまり震えている。それもそのはず、そのナース「那須野 神奈」は高校時代バリバリの暴走族だったのd・・・
「・・・ゴホン!」
元ヤンと元暴走族が揉めてる中、医師の榊原が咳き込みながら2人の前に立っていた。
「2人とも、ちょっと来ようか・・・」
榊原は笑みを浮かべながら静かに言う。2人はその笑みの裏側に隠れている恐怖に気づくと、親に怒られた幼稚園児のように静かになった。
一方その頃、ミツルは失神していた。
―――――
「・・・こちらネプチューン。ターゲットが捕らわれている医療施設に侵入成功。」
「ご苦労ネプチューン。セレス、周囲に不審な敵影はないか?」
「・・・こちらセレス。敵影なし、実行するなら今かと思われます。どうしますか、ハーデス?」
「・・・承知した。それでは現時刻より、『オペレーションM』を開始する。オーバー、アウト。」
姫紀がナースになった理由は、また別の機会に・・・




