第56話 制裁へのシナリオ
「俺が・・・殺しました・・・。」
力の籠もっていない弱々しい自白を受けた御子柴は、真剣な顔を崩して大きな笑みを浮かべた。
「・・・あーーーっはっはっは!!!本当にアンタはバカだな!!バカ丸出しすぎて何て言えばいいかわかんねぇよアハハハハハハハ!!!」
なぜ御子柴がこれほどまでに笑っているのか、ミツルには理解できなかった。理解しようとする意思すら湧かない。ミツルは馬耳東風の姿勢で、御子柴の話を聞く。
「分かってないようだから教えてやるよ。正直、俺はお前が殺人犯であると予想はしていた。しかし100%ではなかった。何%かはお前が犯人ではないという予想もしていた。だから、100%の確信を持たないままお前と対面した。しかし、追い詰められたお前は、まるで俺がお前を犯人だと断定した上で話をしていると思った。そして最後の最後に、お前は自白した。本当に犯人ではないのなら普通は『違います』とでも即答するだろう。しかし、逃げ道を消されたお前はこの場を凌ぐことすら無駄だと諦め、素直に自白した。Do you understand?」
御子柴は様々な情報を羅列したが、ミツルの目は濁ったままだ。御子柴は「あ~」とあきれ顔になって言った。
「要するにお前は、自分で俺の疑いを100%にしてしまったんだよ。自分で自分の首を絞めてしまったんだよ。お前が勝手になぁ!!たしかに、こうやって脅していくやり方は警察官として正しいものであると言えるかは分からない。もしお前が本当に無実の人間だったなら、俺は逆にお前に名誉毀損などで訴えられていたかもしれない。一応ほかの犯人候補も何人かいたんだが、お前に比べたらはるかに可能性は低い奴らでな。1番可能性の高いお前への問答が終わってから、そいつらにも同じように問答をしようかと思っていたんだ。もし順番や俺の推測が間違っていたら俺のクビは免れなかっただろう。しかし結果的に俺はお前という犯人を追い詰めた。結局は俺の推理が正しかったんだ。」
御子柴の渾身のドヤ顔にも、ミツルは反応を示さない。御子柴は興が冷めたかのような表情をあからさまに作る
「・・・なんかもういいや。全然反応ないし。面白くねぇ。撤退撤退。」
御子柴はそう言って、帰りの準備をする。荷物をまとめながら御子柴はミツルに言う。
「まぁ一応言っておくけど、別に俺はお前をこの場で逮捕しようとは思ってない。というかこの先も、俺はお前を逮捕しようとは思わない。かと言ってお前をお咎め無しにする気も無い。お前は俺が殺す。人を1人殺したお前に、この俺が正義の制裁を下すんだ。いずれ殺してやる。せいぜい怯えながら生きろ。今度はお前が殺される側になるんだ。」
何故警察官から「殺す」という言葉が出てきたのかは分からない。その補足をするかのように、御子柴は続ける。
「ちなみにお前を殺すまでのシナリオは全て出来ているんだが、聞きたいか?まぁどのみち言うんだけどな。
まず、近いうちにお前を指名手配する。そしてお前の悪事を世に知らしめた上で、俺はお前を殺す。お前は死体としてメディアに発見され、原因不明の事故死として取り扱われる。岡田太一郎殺人事件は、犯人事故死で幕をおろす。完璧なシナリオだとは思わないか?」
御子柴は、魂の抜けたかのようなミツルに長々と語りかける。独り言のように聞こえる御子柴の話に、ミツルは久しぶりに意識を取り戻し、消えてしまいそうな声で1つだけ問うた。
「・・・なんでお前は、俺を殺すことにこだわる・・・」
御子柴はミツルの久しぶりの反応に少し驚いた顔になったが、冷静な声でミツルに返した。
「人を殺してみたいから。」
そう言った御子柴は、静かに部屋を後にした。




