第55話 喪失尋問 下
御子柴の拳を食らったミツルは、床に思い切り倒れ込む。御子柴は地に手をついているミツルの胸ぐらを乱暴に掴んで言った。
「いい加減にしろよお前。俺がいつまでも優しい御子柴さんのままでいると思ったら大間違いなんだよ。さっさと答えろよ星野。『はい』か『いいえ』だよ。こんな話の序盤で手こずらせんじゃねぇよクズが。」
吐き捨てた御子柴は、ミツルを壁に叩きつける。それでもミツルは何も答えない。
「あのさぁ、もう言っちゃうけどここで黙ってても意味ないんだよ。だってもう分かってるからさ。お前がクレイジーデッドという不良軍団にボコられたのも、なんでそんな事態になったのかも。」
黙ってても意味がないというワードに少し反応したが、ミツルは沈黙を続ける。それを見て御子柴も続ける。
「お前がその前日に、クレイジーデッドの何人かをボコって重傷を負わせて病院送りにしたからだ。報復を受けたんだよな。さっき偶然クレイジーデッドの連中に会ってさぁ、色々聞いちゃったわけよ。だからお前が何と答えようと、結局は無意味なんだよ。答えは確定しちゃってるからな。」
御子柴はミツルから手を離して息を整える。そしてミツルを睨みながら叫ぶ。
「さぁここでお前に1つ質問をする!お前はどういう理由かは知らんが『松山』と名を騙り、クレイジーデッドに暴行を加えたのちに、彼らから暴行を受けた!これらになにか間違っている点はあるか!!?」
なにも間違っていない。ミツルは全てを諦めたかのように、御子柴の質問に「ありません」と答えた。しかし、御子柴の質問はこれで終わらなかった。
「そうか。じゃあなんでお前は名前を偽ってまで教師をやっているんだ?クレイジーデッドの話によれば、お前は最近赴任してきたそうじゃないか。赴任してきてから名前を変えたのか、それとも赴任前から名前を変えていたのか。あるいは、松山という名前の実在する教師になりすましていて、本当はお前は教師ではないとか?まぁどちらにせよ、名前を変えるなんておかしいよな?何か後ろめたいことでもあるのか?」
鋭すぎる御子柴の問答に、ミツルは再び口を閉ざす。
「・・・岡田太一郎を殺したのもお前だったりするのか?」
さりげなく口にした「何を今更」と思えるような御子柴のこの台詞が、ミツルの精神にトドメを刺した。しかし御子柴は喋ることを止めない。
「よしわかった。もし、いま正直に本当のことを言えば俺の特権でお前の罪を軽くしてやるよ。しかし、これ以降も沈黙を貫いたり、真実と異なることを発言してみろ。お前は一発で地獄行きだ。」
御子柴はようやく口を閉ざした。とある一室に長い沈黙が続く。やがてミツルは、その沈黙を破るかのように小さく口を開き言った。
「俺が・・・殺しました・・・」
ミツルは1人の警察官の前で、自らの罪を認めた。




