第53話 Beginning of the Darkness
「・・・なるほど。不良軍団を壊滅させ、壊滅させた不良軍団に報復されたと。」
大まかなミツルの話を聞いた松山は、自分なりに話を冷静に要約した。そして大きく吹き出した。
「はっはっは!それはクレイジーな経験をしましたね!まさか就任早々そんなトラブルに巻き込まれるとは!」
腹を抱えて大笑いしている松山を、ミツルは複雑な表情で見ている。全然笑い事ではないからだ。笑い話で片付けられるような内容ではないからだ。それなのに松山は信じられないくらい笑っている。しかし、本心をあらわにすることなく、ミツルも軽く笑い返す。
「すみません、取り乱してしまって。・・・それにしても結構目立ったことをしましたね。」
「そうですね。どうしたらいいでしょうか。」
ミツルの問いかけに松山は「う~ん」と唸りながら考える。それからすぐに、松山は言った。
「別に今まで通りでいいんじゃないですかね。何も気にすること無く、普通に過ごせばいいと思います。」
全く解決策になっていない松山の回答に、ミツルは眉をひそめる。
「・・・それで大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。いつも通りで。」
松山の謎の自信に満ちあふれた声色に、ミツルは少し不安に思いながらも納得することにした。
「まぁ、話はそれくらいです。すみませんね呼び出してしまって。」
終わりの雰囲気を無理矢理作り出した松山は、ミツルをさりげなく帰路に導く。ミツルは拍子抜けしながら玄関に向かう。
しかし、ミツルが玄関で靴を履いている最中、松山が思い出したかのように言った。
「あぁそれと、くれぐれも警察には気をつけて下さいね。尾行されたりなんて論外ですよ?」
少し笑いを含んだ松山の言葉に、ミツルはまたもや不安になる。なぜ笑いを含んでいるのだろうか、と。
「分かってます。厳重に警戒してるので大丈夫です。」
ミツルは昼休みのことを思い出しながら、松山にそう告げ、松山の家を去った。
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ミツルが家から離れていくのを、リビングの窓から眺めながら、松山は笑いながら呟いた。
「尾行されてんだよ。バーカ。」
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松山の住む「ヴィクトリア村雨」からの帰り道、ミツルは解せぬ思いでいた。真剣な話の所々で笑っていたのもそうだし、そもそも自分の名前を利用してなりすまされているにも関わらず、ここまで協力的であることもおかしいと思ったからだ。
なんだか嫌な予感がする。早く帰宅しよう、そう思っていたミツルは、突然後ろから鈍器のようなもので殴られた。




